2021年09月14日

怪獣8号 4 松本 直也 (ジャンプコミックス) [

怪獣8号 4 (ジャンプコミックス) [ 松本 直也 ] - 楽天ブックス
怪獣8号 4 (ジャンプコミックス) [ 松本 直也 ] - 楽天ブックス

4巻出たタイミングなので感想文書きます。
1話がネットでバズってから単行本はすぐに買ってますしけっこう読み返してます。

怪獣が現れる世界。主人公カフカは32歳。幼馴染の約束を守り防衛隊の隊員になろうとしたのだけど落とされて、怪獣を退治したあとの掃除係をしている。ところがある怪獣を飲み込んで怪獣8号になる。

そいでもって防衛隊をやりながら怪獣8号もやって、迫りくる怪獣をやっつけるという図式。

ベタな設定でしょ。実際、おっさんが怪獣だとバレないようにがんばって人知れず戦うって怪獣を正義の味方風の見かけにしたらもう山のようにあるじゃないですか。ウルトラマン仮面ライダーを筆頭として、まあ仮面ライダーにしても最初の設定はバッタ男で改造人間ではあったんだもんね。

そういう展開とわかってはいたけど、異様なスピードとテンポ。バトルや、見開きの止め絵でのアングルやタイミングのうまさなどで、ちょっと抜きん出たおもしろさはある。
実際、バトルモノマンガは集英社にヤマのようにあるし、その中にあって「普通」の世界観や設定ではある。ベタの度合い、絵のオーソドックスさ、その他、ざっくりと「普通」ではある。ただしおれは今はダントツで好き。なぜならいろいろ割り切ったうえの読みやすさ、ストレスフリー度が半端ないから。
3巻でのラスボス級のタチの悪い敵をもうちょっとで取り逃がしてからの「連戦」には正直ビビったし心が震えた。
なかなか敵が死なないとか、なかなか戦いが続くってのはあるし、その亜流ではあるんだけど、そのタイミングでそうくるか!ってのにしびれるんですよ。そして敵に逃げられ、自分は逃げたと。

で、その、「逃げる逃げない」をひっかけつつの4巻の展開。すばらしいよ。

まー主要キャラがかっこいい。そのキャラを最大限活かす絶妙な止め絵の1ページ2ページのぶち抜き。ONE PIECEの「ドン」部分ですね。そしてこの「ドン」が終わらない。まだくるか!こうくるか!ってドンドン畳み掛ける。読者の気を緩ませる安心させる余地をできるだけ削いでいる。出し惜しみしなさすぎてないか?って。作者の引き出しすべて机から引き出して引き出し逆さまにして中身を出し続けてるくらいの大盤振る舞いなんだよな。そこがすごく心配。それくらいの全力。
かつて、そして今は長いこと読んでませんが今もそうであろう、ONE PIECE。作者はずっと105%で突っ走っている。ただ、本作は120%くらい出してるんじゃないかと思う。

そして、たいそう酷なことをいわせてもらうと、このマンガは、120%じゃなくなったらすぐに死にます。そういうタイプの全力です。
スーパーマリオの星だけ撮りつつひたすらダッシュボタンを押し続けなければならないという地獄です。スターを取り損なってもBダッシュボタンを離しても死にます。「そういうマンガ」だからです。

作者すごくしんどそうに思います。これがどこまでつづくのか心配してます。このマラソン大会で100m走みたいなの、集英社のマンガには多いし、過去、これでつぶれてきたひと多いです。彼らを想起します。
それこそ、さっきから引き合いに出しまくりですが、アラバスタ編までのONE PIECEとかはもうそういう感じでしたよね。そこらへんは何度も読み返してました。だっておもしろかったから。作者はどうやってこれから逃げ出せたのだろうか。まあ、正直その次のからおもしろさは急速に抜けた気はしましたが。

今後どうなるんでしょうか。心配してます。が、おもしろくあっててくれとも思います(正直4巻後半のエピソード4はちょっと落ちてる)。

怪獣8号 1 (ジャンプコミックス) [ 松本 直也 ] - 楽天ブックス
怪獣8号 1 (ジャンプコミックス) [ 松本 直也 ] - 楽天ブックス
怪獣8号 2 (ジャンプコミックス) [ 松本 直也 ] - 楽天ブックス
怪獣8号 2 (ジャンプコミックス) [ 松本 直也 ] - 楽天ブックス
怪獣8号 3 (ジャンプコミックス) [ 松本 直也 ] - 楽天ブックス
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怪獣8号 4 (ジャンプコミックスDIGITAL) - 松本直也
怪獣8号 4 (ジャンプコミックスDIGITAL) - 松本直也
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2021年09月11日

東京ヒゴロ 1 松本大洋(小学館)

東京ヒゴロ(1) (ビッグ コミックス) [ 松本 大洋 ] - 楽天ブックス
東京ヒゴロ(1) (ビッグ コミックス) [ 松本 大洋 ] - 楽天ブックス

モーニングを創刊号から買っていたのです。それはたぶん、ヤングマガジンも、ヤングジャンプも、ビッグコミックスピリッツも、創刊号に間に合わなかったからで、中とじの雑誌をひとつ購読したい欲があったからです。どうせなら創刊号から読みたかったのです。そのタイミングに応えてくれたのがモーニングです。高校のときに出ました。
その間にモーニング(イブニング、アフタヌーン他)に描いたひとはだいたい覚えてますし、モーニングの賞などでモーニング生え抜きの作者はデビューから知っているという段取りです。
結局15年ほど買ってました。未読の雑誌が10冊たまって「もう無理だ」と辞めました。

そういうわけで松本大洋氏はデビューの野球マンガを描いていたころから存じております。そして小学館に舞台を移しての「ピンポン」。同じく創刊号から読んでいた「IKKI」での「ナンバーファイブ 吾」。あとは描き下ろしの単行本「GOGOモンスター」。
ここらへんが作者との接点のすべてです。

本作は書店で目にしました。昨今はとんと書店に行かなくなり反省することしきりのマンガライフですが、本作は目があった瞬間ビビビときて、かなり久しぶりに松本大洋氏を手にとったのです。

これが最高でしたよ。なんとなれば2021年でもベスト2くらいの衝撃。正直にいうと1位は「ルックバック」です。

主人公・塩澤は、30年勤めたマンガ編集の仕事を、自身が立ち上げた雑誌の廃刊に責任を感じ辞めた。
マンガから離れようといろいろと模索するも自分がマンガ好きであることに嘘はつけず、自腹で本をつくろうと、好きなマンガ家たちを訪ねる。

まずおもしろいこと。次いでわかりやすいこと。
おれの知ってる「松本大洋」とはちがい各キャラが饒舌に状況をなんとなれば説明口調でしゃべる。それが生き生きしておりおもしろくて、実にわかりやすい。すんなり入ってくる。
この明確さに驚く。あれ?松本大洋っていったらなんだけど、「お芸術」っぽいマンガを描いていたイメージあったよな。今年は小学館の日本短編漫画傑作集やちくま文庫の現代マンガ選集などを読んでるからちょっと「お芸術」なマンガには耐性があるし大丈夫やろと気構えて読んでいたので拍子抜けするくらいわかりやすくておもしろかった。

登場するキャラがいちいち魅力的。実直でありマンガに対するどろどろのマグマのようなパッションを持っている主人公。長年の友達でありいっしょにマンガを作り上げた売れっ子の長作。
彼に後釜をまかされたものの担当のマンガ家と上手くいってない美人編集。
主人公を慕っていたためにあてがわれた女編集に反目する描けないマンガ家。
そして主人公が本を自腹で作ろうと思ったときに毎回出てくるマンガ家たち。
このどれもがナイスキャラ。後半のゲストマンガ家がいちいち最高。

とくに主人公な。高倉健な。彼は実写映画化するなら同い年くらい(40代後半かしらね)の高倉健氏にする以外ないだろうってほどかっこいい。眼鏡のつるがおれてるのでテープを巻いてるがマンガには糸目をつけない。すべてのひとに対して礼儀正しい。そして率直。上記の友達マンガに「最近おもしろくない」と告げるときに涙を流している。ベタと思いつつも率直さや心情が伺え心を打たれる。
とてもかっこいい。そしてマンガに対してとても真摯で率直。見習いたい。かっこいい。しみじみかっこいい。

読んでいるうちに思い出すよ。おれもマンガ好きなんだなと。(さあ自分語りコーナーだ)
いろいろあったマイライフ、いろいろな目にあって、なんつか、ゲームってしみじみしなくなった2021年でさ。音楽はサブスクで聞いてるけど、前ほど情熱がなくなってる気はする。で、マンガばかり読んでいた。そして読んでも読んでも飽きない。おれの人生にはずっとマンガがあったなと思う。そして、あらためておれってマンガが好きなんだなあと感じる2021年であった。

と、本作のベタさとストレートさとパッションにほだされてついこういうことを語りたくなるわけですよ。

オススメしますよ。

そして2点。

本作、長作ってマンガ家がとくにそうなんだけど、東京の風景がいちいち古い。昭和からある喫茶店だったり古書店。主人公の家も古くてしぶい。スマホは出てくるけど、いちいちは昭和からあってもおかしくないオブジェクトが多い。長作は令和に似つかわしくない、四六時中タバコを吸ってたりするし。
これはおれの知ってる平成のはじめの東京だなと。

毎話最終ページは東京の遠景が映るななんて思ってたけど、これって、表紙の鳥の眼からみた風景なんだなと気がつく。主人公は飼ってる鳥と話している。イマジナリーフレンドみたいなものかと思っていたら、鳥とは全般的に話す能力があるみたいだ。これが今後どう関わってくる設定なのかはわからないけど、鳥の目でみた東京はとてもクールでホットだなと。

この物語は最後まで見届けたい。すぐにつづきを読みたい。こういう強い気持ちがあります。

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(このビシッと礼をしている感じ、高倉健さんって感じしないっすか?)



東京ヒゴロ(1) (ビッグコミックススペシャル) - 松本大洋
東京ヒゴロ(1) (ビッグコミックススペシャル) - 松本大洋























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2021年09月04日

ルックバック 藤本 タツキ (ジャンプコミックス)

ルックバック (ジャンプコミックス) [ 藤本 タツキ ] - 楽天ブックス
ルックバック (ジャンプコミックス) [ 藤本 タツキ ] - 楽天ブックス

ジャンプ+で史上最多閲覧を誇る読み切り作品です。紙の本で出ました。買いました。

途中までのだらだらとしたあらすじを書きます。最多閲覧なので「知ってるよ」という方も多いでしょうが。

藤野は小学校の学級新聞での4コママンガで英雄だった。勉強もできるし体育もできるしおもしろいマンガも描くことができる。
ある日、引きこもりで絵を描いてる同級生のマンガもその横に載せてくれ(学級新聞に2本の枠があった)と担任(実に担任は本作での藤野の人生に関わる唯一の大人だったりするよね)にたのまれて了承しつつも「引きこもりに絵が描けるの?」なんて態度。
ところが彼女・京本の絵が載った瞬間クラス中に衝撃。4コマというか4つの風景画が載ったもの。クラス中衝撃だったが藤野はとくにショック。彼女はそのクオリティを1番わかってるから。
よおし見返してやると絵の描き方の本とスケッチブックを買って絵を描き続ける。それで2年。
ところが描いても描いても京本に追いつけない。そのうちに友達も家族も「絵ばかり描いててつまらない」「絵は卒業しなよ」という。称賛を受けるためにはじめたのに否定されはじめる。そこで藤野もある日突然「やーめた」と絵を描くのを辞める。そして友達と帰り道に買い食いしたり空手教室に通ったり家族でテレビをみたりする。
小学校卒業の日、担任に引きこもりの京本の家に卒業証書を届けろといわれる。
藤野は気乗りしないままに彼女の家に証書を届けに行く。家にいて反応がないの中に入ると廊下に大量のスケッチブック。そこで京本への4コマを描いてみるのだが「なにやってるんだ?」と思った瞬間、4コマの紙が落ちて、ドアの下から京本の部屋に吸い込まれていく。「やべえ」と逃げるように藤野は外に出ていく。
家に出た藤野を追いかけるように京本が現れる。大ファンだという着ている半纏にサインまでしてもらう。京本は途中でなぜ描かなくなった?と尋ねる。「これからマンガの賞に応募するから」と藤野は答える。京本には「みせてみせて」と渇望される。
降り出した雨の中、藤野は踊りながら家路につく。濡れたままのランドセルと靴下を放置してマンガを描き始める。

https://shonenjumpplus.com/episode/3269754496401369355

ジャンプ+の「試し読み」にはそこまでの内容があります。50ページ弱。全体の1/3くらいですか。それで確信したよね。ここまでで短編として完成してるって。
藤野はマンガ家として最強最上の体験をしたんだよな。京本をライバル視してて追いついてやろうと2年弱の努力の結果、追いつけなかった存在に、ファンだと絶賛されて次回作をねだられる。こんな経験、マンガ家としてのみならずなかなか体験できないよな。そりゃあマンガ描くよな続けるよな。自分が報われた瞬間だよ。

雨の中のあぜ道のダンスシーンはすばらしく美しいし、本作品全体の最大のクライマックスです。最初の1/3でそこになるわけです。しかし、ライフゴーズオン。人生はつづく。物語もつづいていくわけです。

本作は、完成された短編のつづきがおもしろかったところがすごかったのです。蛇足にはならなかった。

雨のダンスシーン。このクライマックスによって「意味」が生まれた。以降、藤野の家周辺の田んぼのあぜ道はドラマを作りだす場になった。

本作、表紙でもそうだけど、背中を向けての部屋での執筆シーンが永遠にある。学習机っぽいのにパイプ椅子だったりする「リアル」。その後のバランスボールに座って仕事しているのもそうだ。どっちもめっちゃ腰をやりそうなんだけどさ。
背景にあるインプットとアウトプットの増減。
小4の「これから真剣に絵を描く」としてるときに、本棚に並ぶマンガ雑誌。それはあるとき消え、美術のための参考書(インプット)と、スケッチブック(アウトプット)に変わる。京本と描いてるときはまた雑誌が増えるのもいいよね。「**の**は最高」みたいな感じで揃って影響を受けてたんだろうなあとか。

タイトルのいくつか意味が内包された「ルックバック」。その意味のひとつである背中だけをみせる執筆シーンは、マンガを描くって「それだけ」ってことなんだよね。インプットからのアウトプットだけになる。この物語の大半マンガを描いてるだけなんだ。

物語が動くのは道なんだよね。

・藤野京本が出会った。
・完全にマンガを描くためのモードになり友達ともほとんどつきあわずひとりで下校しひとりで藤野の家に帰る。家には学校にも行かずにマンガを描いてる京本がいる。
・ふたりで描いて投稿したマンガの発表をみに雪道をかき分けコンビニに届いたジャンプをみにいく。
・入選したマンガの賞金で豪遊しようと町へふたりで繰り出す。
・連載マンガを手伝えないと京本が断る。

そして。

ネットで話題になった袂を分かった京本が通う学校で通り魔により京本が殺害される。そのあとに道がない。殺害をテレビで知った藤野は次の瞬間京本の家の中にいる。

藤野と京本が出会ったときに「道」が現れる。そして京本の死により道は消える。つまり、ふたりの「まんが道」だったわけです。

ネットで話題になった通り魔描写。あれってニュースをもとに「藤野が妄想で」作り出したキャラなんだよね。通り魔が登場する以前のシーン、藤野と京本が「会ってない」時間軸の物語はずっと藤野の妄想なんだよ。

だから、おれはこの通り魔描写は心底どうでもいいと思ったんだよね。だってそれはマンガ内においての「事実」ですらないんだから。どういう精神疾患があったとしてもそれは関係がない。藤野の妄想だから。藤野が精神病に詳しいかどうかはわからないしそれが正確かどうかはもちろんわからない。そこが重要とは思えない。それが証拠に、問題がネットで提起された瞬間にすばやく変更された。そして単行本化された際にまた変わった。おれは3種類のバージョンを目にはしてるがその「効果」の差は感じない。だから「どうでもいい」と思った。いまも思ってるし、それがどうであろうとこのすばらしい物語に一切の変化はない。

妄想による物語の書き換えで現れる道は、京本が家に帰るところ。それは京本の部屋の前のスケッチブックの廊下に座っている藤野の妄想です。妄想の「まんが道」です。


「じゃあ 藤野ちゃんはなんで描いてるの?」

その結果帰結するこのこの答えこそがすべてなのです。

本作と「バクマン」というアニメ化も実写映画化もした作品との対比がとてもおもしろい。


なんのためにマンガを描いているのか?


本作の答えは、40ページ、83ページ、119ページ、133ページにあります。


それがきっちりと上記50ページ弱の短編として完成しているの第1幕につながっている。しかも、言葉はない。

すばらしいです。なんどみてもぐっときます。最初からきちんと1本の線につながってます。ピュアで尊くて強い。それこそが本作の1番キモ。

神は細部に宿るなんていいます。ディティール。上記の通り魔描写もそうですが、いろいろと細かい仕掛けが施してあります。個人的には設定やディティールは物語を高めるためだけにあるもので、それを超えることはナンセンスだと思ってます。ゆで卵にかける塩が最上級だとどれくらいゆで卵が美味しくなるかってことっすよ。ま、重要なんですけどね。おれはゆで卵自体が美味しいかどうかに重きを置くのですよ。へのつっぱりはいらんですよ(それちがうゆでたまご)。

しかし、最初からそれありきで動いていたとはいえ、ネットで公開しちゃんと紙の本として出したことはすごいです。このマンガは短編集にありものの「カップリング」はないほうがいいですし、紙の本で持って置かなければってモノです。だからただただありがたいです。

日本短編漫画傑作集 | 書籍 | 小学館 https://www.shogakukan.co.jp/books/volume/50309
日本短編漫画傑作集 VA. (小学館): ポトチャリコミック http://sukekyo.seesaa.net/article/482745584.html?seesaa_related=category


2021年に買って損なし今後の歴史に残る1冊です。100年後の「日本短編漫画傑作集」にはこのページ数を割いても収録されるべき1本です。

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表情も絶妙だよな。


ルックバック (ジャンプコミックスDIGITAL) - 藤本タツキ
ルックバック (ジャンプコミックスDIGITAL) - 藤本タツキ

posted by すけきょう at 17:38| Comment(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年08月15日

いつも憂き世にこめのめし にくまん子 (ビームコミックス)

いつも憂き世にこめのめし(1) (ビームコミックス) [ にくまん子 ] - 楽天ブックス
いつも憂き世にこめのめし(1) (ビームコミックス) [ にくまん子 ] - 楽天ブックス

にくまん子さんの4冊目のコミックです。1,2冊は同時発売で3冊も間をおかず発売で、その3冊が発売された2019年はにくまん子イヤーとでもいえる画期的な年だったのですが、まあ、それからちょっと間がありまして、「どうしてらっさるのかしら?」なんて思ったころに新刊でした。わりに青天の霹靂で。というのもツイッターでフォローしててときおりあったツイッターマンガのほうも楽しみにしててそっちのほうもあまりみてなくてけっこう渇望してたんですね。だから素直にうれしい。

それが最高だったので最高にうれしい。

本作は連作長編というカタチでしょうか。作者の分身的な女性とその同棲している恋人とのいちゃいちゃ日常マンガ。

ここいらの経緯はあとがきに詳しいですが、かなり命削って描いていた前作らでやや燃え尽き症候群になったところからのリハビリをかねた「生活の話」的なゆるくて描きやすいのでいってみようってことらしいです。

それがすばらしいのです。

つきあって3年経ってちょうどいい具合の力の抜けたバカップルの最上級のバカップリスト状態の甘々でゆるゆるの毎日を描いてます。

1ページから3ページ4ページのマンガがつづくのです。

あー、いうたらなんだけどツイッターマンガっぽい感じで。緩さといい内容といいページ数といい。そして実際にツイッターに載っていたものもあります。

https://twitter.com/oic_oniku/status/1363322554128027648?s=20

ただまあ最近はあまりマンガをアップしてないんですね。ツイッターマンガ流行ってないからなあ。

そしてほのぼのとしたところに「ほのぼの」ベースは守りつつドーンって「これでもくらえ」マンガが挟まる。
この「ほのぼのベースは守りつつ」ってところがミソなのよね。ほのぼのマンガに突然ダークネスなエピソードぶっこむのあるじゃん。つじあやのさんのウクレレ弾き語りアルバムに突然デスメタル曲をはさむようなトンチキな構成の。それが効果的なのもあるけどさ。おれはその落差にどっちらけになってみなくなったマンガあるよ。名前はいわんけど。

「まだいっしょに」というドーン物件(物件か?)。カップルとその女友達と3人で飲んでいる。彼女がトイレにいってるあいだ女友達と彼氏が話をする。女友達が結婚とかその先のこと(結婚ね)をたずねる。そいでつられてガンガン飲んでしまい真っ赤になってぽやんぽやんになってしまう。そしてアパートに帰るとガバっと抱きついて「まだいっしょにいたい」と。
ってまあ、そのあとがあるからすげえんだけどね。そのエモで止まらないところ。

まえのときにも書きましたけど相変わらず嫌悪感を持たないキャラといちゃいちゃとエッチの内容です。ほんと不思議。同棲していちゃいちゃしてたり「男ってほんとバカ」的な内容で、なんつかもともこもない日常セックスだったりするけどすべてに「いい感じ」をもつ。

成年コミックの男向けのセックス描写に嫌悪を持つ女は多いでしょうが、逆もあるんですよ実は。ま、とくに非モテな人生を歩んでいた男がセックスがファミマでファミチキを買うくらい簡単にありつける人種がいるとどうしても妬み嫉みの気分が湧き立つのですよ。そこらへん成年コミックもそうなのになぜか女向けに描かれる「それ」にすげえ「いやだー!」って感じになるんですよね。ファミマでからあげクンたのむくらいの高いハードルに思えるのですね。

と、にくまん子氏って作風芸風でいうとモロそういう路線ではあるんだけど、不思議と嫌悪がない。これは本当不思議なんだよな。みんなナイスキャラだからなのかもしれないけど。あとマンガ内の全てに愛を注ぎながら描いてるからなのかしらね。わからんが。
で、前作品にも登場した作者と作者の同棲相手をモデルとしたキャラは最高にナイスですからねえ。そらもう最高なのです。

これが後半の構成がさらに最高なのよ。描き下ろし30p以上のメインを含む2本の短編に、ふたりが出ない短編でギューッとしめて、なおかつ最後にまたふたり登場するという。ここいらの有機的に結びつけて畳み掛けながらもキレイにキレイにエンディング。それで1冊としての完成度を飛躍的に高めている。
とくに今回キャラを固定したのがまた効果的だったのよね。ぐぐぐとまとまりができた。

最高じゃないか。現時点の最高傑作ですよそりゃ。

あと、なんでつじあやのさんだったのか?(知らんよ)

いつも憂き世にこめのめし (ビームコミックス) - にくまん子
いつも憂き世にこめのめし (ビームコミックス) - にくまん子
posted by すけきょう at 11:10| Comment(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年08月10日

映画映画大好きポンポさん

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映画大好きポンポさんの映画に対しては予告編を見てからずっと懐疑的だったのです。


原作は惚れ込んでます。こっちの都合で全部の感想は書いてませんが3までの全6冊のポンポサーガは全部読んでます。全部おもしろかった。




だからこそ映画化はうれしかったのですし、やった!って思いましたが、同時にわりに待たされたあとの予告をみて「ん?」と思ったんですよね。




あれ?おれの頭の中でのポンポさんの「ポンポさんが来ったぞーっ!」じゃない?って。


なぜ?なぜ?おれが思う声優でも随一のマンガのニュアンスを見事に捉えて発声できるプロで名人の小原好美さんなのに、おれのそれとちがう?って違和感。

(だいたい小原好美さんの素晴らしさをいっとき1万字くらい文章で書いてたんですが未発表だったり→ただのファンの妄想電波文になったから自主ボツ)


そして予告編の最後のほうも原作にないよなあ?の展開。「僕の映画にはひとつ足りないシーンがあるんです」というセリフ。


と、何抹もの不安を抱えつつも封切り初週と次の週と2回みました。なぜなら描き下ろしのマンガ小冊子の前編後編が配られてたから。


映画はおもしろかったです。より原作の謎が解けたような気がしました。それは同時に映画評にもなると思うのでそのラインで進行していきます。




この主題歌ほか4曲挿入歌されてます。ここが最大の「見解の相違」だったんだなあと。


誰と?


おれと監督と。




おれの感想文の最後のほう。


>>

蛇足ですが。

この完璧な作品で足りないのはエンドロールじゃないかなあと。

<<


で、




この動画を貼り付けてます。邦題は「我が愛のフィルム」です。

これをラストに流すのはどうか?と思ったのですね。ベタですがポンポさんが舌っ足らずの英語でカバーして登場人物がコーラスしたりボーカルまわしたりする感じを想定。

書くだけ書いて青臭くて中2っぽくて恥ずかしいからすぐに削除しようと思ったのですが「そう思ったのだから」って記念に残してたんですよね。それ、正解だった。


この曲というか想定こそが、おれのポンポさん観なんだなと。


「映画大好きポンポさん」という作品は以前の感想でも書いたとおり、チートでイレギュラーな映画のことならなんでもできるポンポさんという存在がいる映画世界ニャリウッドの話です。これ、限りなく地続きである異世界なんですよね。そう位置づけましょう。そうするとあらゆる点で無理がある「ポンポさん」という存在を成立させることができる。


うん、つまり、どこかおとぎ話、フェアリーテイルだと捉えてたんだよね。おとぎ話の中心にポンポさんがいる。

だからおれの選曲はどこか牧歌的なものだったんですよね。気の抜けたリズムマシーンに乗ったカラオケのようなカンツォーネでのんびりしたもの。


映画の「映画大好きポンポさん」の脚本監督である平尾隆之氏は作品のコンセプトに「マイノリティがマジョリティに一矢報いる映画」としてます。パンフレットのインタビューより、


え?そうなの?ってのがおれの最初の感想です。青天の霹靂です。そんなこと思ったこともないから。そう思って映画を思い返すと、「一矢報いる」感がすごいなと。

原作に牧歌的なものを感じた理由は「いろいろ」ありましたが、大きなものは映画を撮りはじめたら割合とスルスルと完成し上映までこぎつけたからです。それはなんでもできるおとぎ話の魔法使いで妖精なポンポさんいたからです。


(ここから映画版のネタバレに抵触していきます。昨今のエコな風潮に配慮して行間をあけたりせずにすぐにバレます)


というのも、原作ではジーン君やナタリーはポンポさんの手のひらの上でいうがままに動いてあれよあれよと成功へと導かれたように見えます。もちろん、当人の才能や努力もありましたが、そこらへんもきちんとジーン君やナタリーを見出したポンポさんの慧眼と的確なガイドによるものでした。


ところが映画版では、上記の予告編の最後にもあるようにジーン君は「僕の映画にはひとつ足りないシーンがあるんです」といってポンポさんに追加撮影をさせてくれと反旗を翻す展開になっていきます。


ここらへんは想定の範囲内ではあります。マンガを読んでおわかりでしょうし、なにをどうしても、この映画は90分で終わらせるべきなんですよ。10人映画監督がいても10人ともそれを守るでしょう。

しかし、もとが通常の少年誌の単行本1冊にも満たないページだったので、なんらかの「かさ増し」が必要であった。それをどうするんだろうなあとは映画前から思ってた。原作通りなぞったら60分ももたないような気がしてたから。


そのかさ増しのところに監督が想定した一矢報いるゾーンを入れた。ニューキャラとニュー展開をぶっこんで。なおかつ憎いのはそれまではあらゆる映画的アニメ的な技法を盛り込んでいってますが(おれの敬愛するブライアン・デ・パルマ監督の得意な画面分割があったときはうれしかった)、それなりに原作に忠実に展開していったのです。そのニューキャラとニュー展開は、映画を撮り終えて「編集作業」に入ってからなのです。編集作業でそこから平尾隆之の編集がはじまるのです。憎いことするなあ。


「一矢報いる」ってことに軸をおいてみると、ニャリウッドが舞台のおとぎ話からの逸脱ではあります。それすなわち、ポンポさんからの逸脱。

「ポンポさんなんでもおもしろく撮れちゃうのよ」と、話の最初のころにいってたとおり、ポンポさんはジーンくんがなぜ?と思うようなくだらない内容の映画もちゃんとおもしろく撮れてしまう。映画に愛されたチートキャラだから。それはつまり映画にまつわるところすべてでもあるわけです。ビジネスに関するところも。

だから、ジーンくんが「足りないシーンがあるから撮りたい」と土下座でたのんだときも怒ってましたが、なんとかするわけです。チートですからなんとでもなる。ただ、そこのところでチートキャラの無敵な存在ばかりでもなくなるわけです。

それでいて銀行員という生々しい役のニューキャラ。資金繰りという問題まで出てきます。なんか「そんなわきゃねえだろ」とも思います。現実的に考えてもそんなわきゃないし(普通に考えたら頓挫or普通に追加)、ニャリウッドというおとぎ話の関連でいうと、チートのポンポさんがなんとかしてしまいますよね。だから、そこがネックになるのはわりと「そんなわきゃねえだろ」と。


そこらへんの急に生々しいリアル。つまり、ニャリウッドからハリウッドに、ニャカデミー賞からアカデミー賞に抵触させていく瞬間です。そこの葛藤や生々しさを生み出すことで「一矢報いる」感がでるし、それはおれの想定していた「我が愛のフィルム」みたいな牧歌ではなくて「例えば」のように切迫感のある今どきの歌に寄せていき合ってくるわけです。


ドリフ大爆笑のコント「もしも、こんなニャリウッドがあったら」の世界だなあとか。そして平尾ワールドになるなあとも。

もちろん、原作者杉谷 庄吾【人間プラモ】氏も、たとえば、2ではジーン君とは別に映画を撮ったりしてるとか、3ではポンポさんが学校に通ったりとかしているし、そこらへんに1(便宜上)のおとぎ話というのはおれがいってるだけでいろいろな解釈をしているわけですし、それになにかいう筋合いではないことももちろんわかっております。クトゥルフ神話のようにポンポサーガが広がっていくわけです。


それで90分のドラマになり、すんなりと映画ができるってわけじゃないぞってメッセージにもなり、「一矢報いる」要素もより明確に入るわけです。


それを劇場で「なるほどなあ」と思ってみてました。こうすればいろいろな層にも波及するなあと(挿入歌主題歌4曲が1つの映画に収まるなら4つの歌い手のファンである私はみるってYou Tubeの予告編のコメントにありました)。


なによりエモくなる。


ということを教わった気がします。映画大好きポンポさんの映画が映画たらしめるための「編集」のマジックといいますか。実際、編集は大事ですよね。映画本編でもそこをテクニック含めてみっちりやってましたし、原作でもそういう方向の話もありました。


あとひとつ。


監督のジーン君とヒロインのナタリーは映画界の新人です。だから声優も新人の2人を起用してました。そして、世界一の俳優マーティンブラドックやポンポさん、あとベテラン女優のミスティアさん。ここらにはベテラン声優さんを起用してます。ここらへんの対比。


「ようこそ夢と狂気の世界へ」というポンポさんのセリフがありますが、それがまさにこの声優界にもあてはまるのではないか!って。


憎いな。ここらへんの仕掛けでまだ発見できてないところが盛りだくさんなのではないかと思われるので機会があったらこれを書いてる現在は発表はされてない円盤等で積極的にみていきたいなとは。


あ、それで冒頭にあった「ポンポさんが来ったぞーっ!」の違和感も本編ではそんなことはありませんでした。パンフレットのポンポさん役の小原好美さんのインタビューによると中身40代の感じで演じてくれとディレクションがあったのを聞いてなるほどと思いました。たしかに、ここでのポンポさんはそういうところもあるよなあとか。


ただ。いろいろ盛り込んだために原作の2にあたるところもちょっと抵触してね?って。仮に劇場版の2があったらそこらへんどうなるんだろうかなあと。


映画自体の完成度はすごいです。何度も読んだ原作のあんなところこんなところが動いて喋って様々な演出で映像化されているのを眺めるのは至福でした。


原作ファンも、原作を知らない人にも、刺さるところの多い映画だと思いました。満足ではあるのです。


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2021年08月06日

川尻こだまのただれた生活 川尻こだま

[まとめ買い] 川尻こだまのただれた生活 - 川尻こだま
[まとめ買い] 川尻こだまのただれた生活 - 川尻こだま

作者のほのぼのとした不摂生日常まんがをツイッターに描きためたのをまとめたものです無料です。2021/08/02に3巻が出ました。ただ1巻は2021/04/09です。
酒飲みで食いしん坊でめんどくさがりでお金もあまり持ってなさそうな食生活の筆者の日常マンガです。

たとえば、
さけるチーズのとうがらし味を食べたら予想の数倍辛くて思わず目をこすったら辛子まみれの手で目に入ってぐわああっって。
町のこ汚い中華料理屋。だらしないオヤジがやってる店。実はこういう店がうまいんだ!→まずかった。
スーパーにエコバスケットを持っていく。きれいに積み替えてくれて持っていくだけで快適→ひとり暮らしなのでバスケットから出すのがめんどくさい。

あとは無料なので読んでください。1冊でもけっこうな読みでがあります。

このマンガで最高に気に入ってることは「雑」なことです。そこを気に入るかどうかが分かれ目です。

実に巻がすすむほど絵があらくなっていく。ただまあ読みやすくもなる。まあ、絵があらくなる系の特徴ですね。西原理恵子さんを筆頭とする。

でもいいんですよ。無料ですから。もとはツイッターマンガですから。

ちょっと前までツイッターマンガという文化はたしかにあった。隆盛を極めていた気もする。ツイッターにマンガを定期的に載せる。そのことにより商業にみつけてもらい仕事を与えてもらってお金をもらいツイッターマンガを卒業して本格的に商業にいく。

そのシステムは、ジャンププラスやコミックデイズなどの最初から無料の商業サイトがマンガを載せることですっきりなくなりました。だって基本ツイッターは4枚しか絵を載せられないし。あとどこをどうしてもツイッターでたくさんのページで展開するマンガはよみづらいし。もう「1/8」って表示があったら最初から読みません。読みづらいからな!それならpixivやらnoteにリンク貼るほうが潔いわ。

ということでツイッターで衆目を集めることがかなわない以上、タダでマンガを載せていてもメリットないですもんね。漫画家は霞を食べて生きていけるわけじゃないし。
でも、メリットでマンガを載せたりするもんか?じゃあツイッターに文章やイラストを載せているひとはメリットだけ求めてそれをアップしてるのか?ってことですよ。

そこらへんの「ちょうどいい」雑さを体現してるのが川尻氏のマンガなんですよね。
だいたいいつも1ページ。本当はどうか知らないけどカロリーはあまり消費してなさそうだし、作者自身も多大なストレスを減らしながら書いているということもなさそうに「みえる」ちょうどいい力の抜け具合。それにはあまりある味わいのあるネタ。

なんつか、ツイッターに載せるのにそんなカロリー使うなよ?って気をつかわなくて済みそうな、読んでるこっちが罪悪感を持たなそうなサイズ感というか。逆に気合の入った絵だと、「どうせ商業狙ってるんだろ? 中国嫁日記みたいに!」って思うじゃない? 中国嫁日記はブログでしたけどあえて(というか最近は集客のためにツイッターに再録載せてるよね)。

そして、おもしろいんだよ。ここが最大のいいところ。

だから、それこそ、氏の好きな味の濃いジャンキーな食べ物です。栄養にはならないだろうがとても美味しい。ノーブランドのポテチ的な。

それがときおりツイッターに載ってて、それが適当なタイミングでKindleの無料に載る。この気楽さが最高。「最後」であり「最強」のツイッターマンガ。
みんなそう思ってるみたいで1巻配信したときはセールでバカ安になってた「カイジ」を抑えたことで話題になったし、いま現在もバカスカダウンロードされています。タダですらダウンロードされるのが難しいKindleにおいてあれだけバカスカダウンロードされてるんだからな。

くわえて痛快だったのが、まだ3巻までの作品集には載ってない、氏が愛するスーパー「いなげや」のPRマンガ。
ツイッターマンガが急速に廃れた一因でもあるPRを隠したPRマンガをツイッターマンガ家がいっせいにアップした事件。問題になったじゃないですか。その後はちゃんとハッシュタグをつけてPRマンガを載せて継続するひとはしてますが(いっさい止めたひともいるよね)、これがどれもこれもほんとおおおおおにつまらない。まだ普通のツイッターマンガは読むことができたのでこのPRマンガで馬脚を現しまくったのよね。(ここで実名を4人ほど書きましたがさすがにここは自重)。

その点、川尻こだまセンセのPRマンガのセンスが最高だったのです。しかも、完璧にPRマンガとして機能してるもん。おれ一都三県にしかないいなげやに行きたくてしょうがないもん。

https://twitter.com/kakeakami/status/1388312248204943361?s=20

その後に引用RTでおれが大絶賛してるのもあった。ちょっと恥ずかしい。


「これまで読んだTwitterマンガ屋のPRマンガで1番だ。この雑さと芸風のブレなさがこれまでのTwitterマンガ屋にはなかったんだよ!これからのTwitterマンガ屋に期待します!川尻先生にも!」
https://twitter.com/sukekyo/status/1388891256546226179?s=20

これっすね。

いなげや芸人・川尻こだま先生がPRマンガを任されるもマンガの内容がいつものノリ。「あんまわかってないのすき」「本能でレビュー」の声 - Togetter https://togetter.com/li/1707728

ということで実に大まじめに「このマンガがすごい」的なところにも今年のよかったマンガとしてプッシュしたいところです。ただ、「このマンガがすごい」的なところは商業じゃないと載らないからなあ。

で、ツイッターマンガ家はまだ残る余地も売れる余地もあるんだよなあと。最終的に商業を目指すやつは最初からジャンププラスとかにがんばれ。ツイッターをあらすなと。

参照:
Web上で既に公開している漫画やイラストの「まとめ本」を出すことについての話→Kindle無料配信の収益やまとめること自体の価値など - Togetter https://togetter.com/li/1754950
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2021年08月05日

片喰と黄金 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL) - 北野詠一

片喰と黄金 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL) - 北野詠一
片喰と黄金 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL) - 北野詠一

2021年は例年になくマンガを読んでいる。タガが外れている。大きな理由は電書だ。安いしまとめて買うし。ブックオフなんかと比べ物にならないくらい安い。何年も連載されてた昭和の長編が全部揃いで500円とかだから。買った以上は読むし。ただしまったく追いつかなくて未読が増えるのはいつもの流れ。紙の本も大量に積んでるのでそこは問題ない。
本作はなんとなくまとめて買った。現在(2021/08/03)までに5巻。近々6巻が出る。

1849年。未曾有の大飢饉にあるアイルランド。そこで貧乏農場をやってた経営してた主人の娘と顔に傷があるその従僕の2人。彼らは死体漁りをして糊口をしのいでいた。
そして一攫千金を目指しアメリカを目指す。いわゆるゴールドラッシュですね。
1巻でニューヨークにたどりつき、そして金鉱山のあるカリフォルニアを目指す珍道中ですね。西遊記ですね。ゴーゴーウエスト。

精緻な考証と実在の人物を交え、いうても力なき移民の少年少女ができる範囲内で、ほがらかにギャグを交えつつ、ときおりシビアで暴力で道を切り開き進行していきます。

徐々に仲間ができてニューヨークからコニーアイランド、セントルイス、ケンタッキーと徐々に西を目指す。

5巻では黒人奴隷が農園から脱出し主人公の少女アメリアが盾として連行されて森の中逃避行したあと、ブラグというポーカーの原型のようなカードゲームでカジノ対決をするという。

人物がドガチャカ登場して、それぞれの思惑で動く。
いっしょにするには雑すぎるのですが便利なので書きます。「ゴールデンカムイ」っぽいところはあります。群像劇ですね。
謎のようなものはないですしいまのところゴールがカリフォルニアってことだけ決まっている感じですけどね。ただ、史実に沿ってる感じ、そこでの生活。酸いも甘いも苦いも辛いもなんもかんもあり、アメリカならではのものがあり、観光名所があり、なんたって時代はゴールドラッシュ。こりゃつまらないわけがないじゃないですか。

本作はぜひアニメ化してほしいなと思う。そして海外のアニメファン、とくにアメリカのそれに衝撃を与えてほしいなと思う。いや、アメリカンにはアニメファンじゃなくても衝撃を与えてほしいと思う。たぶん、ドラマや映画では本作に匹敵するものが多いとは思うけど、アニメでないだろう。本作がアニメ化し、リアクション動画で本作をみている外国の方が驚いてる顔をみるのがささやかな望みです。先に引き合いに出した「ゴールデンカムイ」も毎回リアクション動画をみてました。みんなの笑ったり驚いたりする表情がいちいち楽しかったです。

片喰と黄金 2 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL) - 北野詠一
片喰と黄金 2 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL) - 北野詠一

片喰と黄金 3 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL) - 北野詠一
片喰と黄金 3 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL) - 北野詠一

片喰と黄金 4 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL) - 北野詠一
片喰と黄金 4 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL) - 北野詠一

片喰と黄金 5 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL) - 北野詠一
片喰と黄金 5 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL) - 北野詠一
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2021年08月03日

ペリリュー ─楽園のゲルニカ─ 11 (ヤングアニマルコミックス) - 武田一義, 平塚柾緒(太平洋戦争研究会)

ペリリュー ─楽園のゲルニカ─ 11 (ヤングアニマルコミックス) - 武田一義, 平塚柾緒(太平洋戦争研究会)
ペリリュー ─楽園のゲルニカ─ 11 (ヤングアニマルコミックス) - 武田一義, 平塚柾緒(太平洋戦争研究会)

2021年は印象的な長編作品が終了する年であるように思える。
ペリリューも終わった。ただし、スピンオフがはじまり、アニメ化が決定するという、かなり発展的な終了だ。
2016年から連載がはじまっています。現在のパラオ共和国であるペリリュー島での日本とアメリカの戦争の話。
ゲリラ戦のようにあちこちに立てこもり戦う日本軍。圧倒的物資による爆撃などでガンガン攻めてくるアメリカ軍。
その一方的な負け戦をじっくり丁寧に描いている。武田というキャラを主人公に丁寧に各キャラも描く。
かわいらしいキャラで地獄のような世界を描いてます。

驚いたのは7巻だった。7巻で昭和20年8月15日を迎えたんだよな。終戦だよ。そしてそれでも彼らの戦争は終わってない。
基地を作っているアメリカ軍の物資を盗み、彼らが戦争が終わったというビラを「嘘だ」と信じない。そして食べ物や負傷兵、住環境(海からしか入ることのできない洞窟など)などで日本兵はどんどんおかしくなっていく。
それで11巻までつづくんだよ。
実際、11巻のおもな舞台は2017年。エモいのは10巻で終わるけど11巻は必要ではある。そして終わる。
11巻、および、全体の身も蓋もないメッセージとしては「戦争は死ぬまで終戦しない」ってことだったりな。
そして、多くの戦争漫画(映画でも小説でも同じ)に共通する長い人生における数年のことなんだよね。実際、主人公の武田は無事に生き延びで日本にいる時間のほうが長いし。でも、戦争の数年は一生を左右するわけですし。

ということを考えます。しかし、5年にも及ぶ長編になるとは。それを描ききったのもすごいな。

ペリリュー -楽園のゲルニカー 11 (ヤングアニマルコミックス) [ 武田 一義 ] - 楽天ブックス
ペリリュー -楽園のゲルニカー 11 (ヤングアニマルコミックス) [ 武田 一義 ] - 楽天ブックス
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2021年08月02日

日本短編漫画傑作集 VA. (小学館)







いろいろとすったもんだの上に発売された作品ではあります。だから、急遽「少年青年漫画編」という小さい字が「日本」と「短編漫画」の間に挿入されました。

日本漫画を時空列に沿って短編漫画のみにフォーカスし取り上げた作品集。とはいえ、日本名作漫画という区切りで長編漫画のほうがフォーカスされないよな。なぜなら長いから。


それはともかく。


1集が1959年から1967年。あとはだいたい4〜5年ごとに区切って並べてある。


毎巻選者によるあとがきがあり、6集のあとがき担当の江口寿史氏によると、6人が20作品ほどの推薦作を挙げてそれを年代別にソートして収録しているわけで本人もはじめて読むような作品が収録されているそうです。


恐怖と奇想 現代マンガ選集 (ちくま文庫) - 徳重, 川勝
恐怖と奇想 現代マンガ選集 (ちくま文庫) - 徳重, 川勝

2020年に発刊された傑作アンソロジー(本作品集とダブリがない)。この解説に、「現代漫画」を銘打ちながら60年代70年代の漫画をほぼ中心に編まれているのが解せないと作者の苦言があったが、本作はその点でもいちおう平成14年まで網羅されている。そしてそれだからこその「日本短編漫画」と大きく出たタイトルだったが(それだからこそモメゴトも発生している)、5集が1980年から1985年。そして6集は1986年から平成14年。一気に14年を雑に網羅してる。そこが最大の弱点なのかもしれないなあと思う。それこそ少女漫画がないことよりも弱点かなと。とはいえ、本作の価値は1980年からのセレクトにあるなと思う。5集6集がそう。


ただ、日本の文学全集といって明治から昭和初期のものが多いのと同様で、やはり1960年代から1970年代はマンガにとっても非常に重要な時期でここは丁寧に追っていかないとダメということもよくわかる。


また14年まとめた6集はともかくとして5集までは考え抜かれており、漫画史を俯瞰しつつも、それぞれの集の色分けや意図を感じ、ひいてはマンガの歴史を感じられるものになっている。この6冊でマンガの歴史がわかる。まあ、そういういいかたするとモメるので配慮した表現で日本漫画のざらっとした流れは把握できる。


1集では手塚治虫氏の「落盤」がすでにオーパーツのような輝きをはなっており、記憶の呼び起こしが真相に迫るにつれてマンガの画風をマンガマンガしたものからリアルになっていくというのちに赤塚不二夫氏がギャグとしてこすりまくったところを効果的なネタとする。

松本正彦氏の海外小説の短編。平田弘史氏の江戸の武士の読み物、白土三平氏は西洋映画、さいとうたかを氏は日本文学かしら。石川球太氏なんかはまさにもろ原作が小説。のちに矢口高雄氏もコミカライズしている戸塚幸夫氏の「羆嵐」。

と、かように「元ネタ」を多方面から引用しつつ、「マンガ」にしようというイキオイを感じされる。胎動とか萌芽とか。


2集はカンブリア紀の生物爆発のようにマンガのありとあらゆる表現を探る時期。この1集と2集のちがいに「こりゃあ細かく区切らないとあかんわ」とは強く感じる。とくにダディグース氏のぶっちぎりのアヴァンギャルド感。

個人的には全部のなかでもっとも刺激的で発見の多い集ではあった。とはいえ、永島慎二、水木しげる、横山光輝、藤子不二雄A、ちばてつやなどというビッグネーム揃いなんだもんな。


あと、全部に共通しているけど、短編漫画としての「読み応え」はしっかり担保されている。これが本全集の1番の目玉かもしれない。ずっしりとした物語構成。短編なのに後頭部がキーンとしてしばらくなにもできない余韻。そこらへんは実験的というより今読んでもちゃんとおもしろいエンタメを優先させている。


短編集は小説でも映画でも好きなんだけどいいのは「おもしろかったー」と後頭部がキーンとなる余韻に浸ってなお「まだ読む作品が残ってる」というお得感かもしれない。


3集にして完成形。昭和のマンガってこうだ!って実に現在にも通じる流れができてる。もう仮舗装終了といったオモムキ。これが1959年から10年の出来事です。鈴木翁二氏の「オートバイ少女」の萌えはすげえ。それに目をつけていたあがた森魚さんもすごいですが。

安部慎一氏と松本零士氏とジョージ秋山氏の3作品に通底する「孤独」に対する答えがそれぞれちがうのも興味深い。マンガの多様性の現れというか(掲載媒体のちがいというか)。

このころからブレてなくて画風芸風が変わってない諸星大二郎氏と、この先、画風芸風を臨機応変に変え続けるかわぐちかいじ氏が同居しているのもおもしろい。職業漫画家としてどう生きていくかなんてのもこのころから隠れテーマとして有るのかしらと思ったり。


そして3集までみて思ったことは漫画家の画力は1集から現在にいたるもほぼ変わってないということだな。もちろん上手い人を集めているのだろうし、CGを駆使して作った現在の完成原稿の美麗さはかなうべくもないが、たぶん、基本的な画力ということでは大きな変化がないと思われる。ド下手くそが減ったくらいか。


4集は1975年から1979年。ここでのトピックは、「おれ」がリアルタイムで読んでいるものが増えることだ。ここから読んだことの有るものはほぼラグなく発表の時期に読んでいるなと。

ますむらひろし氏、星野之宣氏、高橋葉介氏、さべあのま氏、新田たつお氏、いしいひさいち氏と、いちいち読んできちんと衝撃をもらっていた。

そして読んでいたしおもしろがっていた藤子・F・不二雄氏の「宇宙船製造法」の普通に1本のSF映画をみたような満足感とちゃんとしたデキにあらためて感心したり。

未読であるはるき悦巳氏の「力道山がきた」も同様に1本のかなりガツンとくる映画をみたような満足感。


どれか1冊だけだと2集と5集のどちらかをオススメしたいですね。それくらい5集のクオリティは高かったし、全てが凝縮されていたし、1番「古くない」とは思った。それはその後の時代をよりう長く網羅した6集よりも思った。というか6集は小学館の平成ベスト短編集というおもむきがある(もちろんそんなことないんだけど)。


作品のことよりも自分の思い入れが前に出てしまいがちになるのもここらへんからの特徴ではある。湊谷夢吉氏の作品集がほしくて受験で上京していたときにバスを乗り継いで目黒の北冬書房にいったこととか。高野文子さんの田舎での閉塞感。ひさうちみちお氏や泉昌之氏におけるガロ感ニューウエーブ感漫金超感。高橋留美子さんの「ふーんやるじゃん」感。いがらしみきお氏を神と崇めてたとき。いしかわじゅん氏の収録されてる作品集を買ったときの天気。後輩に貸したこと。そしてそれらを何度も何度も読んだ感じ。

この時代とは違う気もするが弘兼憲史氏の短編集などからもいろいろと思い出させるものがある。


ということで思い入れのある5集以降の時代のマンガ史を考えると、6集1冊に岡崎京子氏の作品とよしもとよしとも氏の作品が収まることに違和感はある。5年ちがいますし。そのあといろいろとありましたし。

青山剛昌氏、藤田和日郎氏、あだち充氏が入ってることに強い反対は持たないし、クオリティが落ちるとは死んでもいわないが、偏ってるなとは思う。でもま一生懸命探してみつけた唯一のアラくらいに思ってください。でも小学館に忖度するなら細野不二彦さんの作品をいれるべきだったよなあとか。彼は短編集を何冊出してると思ってるんだ?とか。そこらへんは選者も迷いに迷った末なんだろうなとも容易に想像つくけど。


で、問題になった少女マンガ編も1冊ほしいですね。とはいえ、竹宮恵子氏、萩尾望都氏の24年組が台頭してくるのは70年代になってからなのでなんというか10年ちがうんですよね。この6巻の短編漫画傑作選の作者にも女性による女性目線をテーマとした作品は多いし、たぶんに、そのテーマにおいて秀逸な少女漫画が生まれてくるのは70年代も少し経つ必要があるだろうしでなかなか難しいというか寡聞にして知らないのでぜひやってほしいものですね。

できればその範疇に収まらないものも。成年コミック編は無理だろうけけど(他所がやれ。成年コミックも名作をアーカイブする動きがないと消えていくぞ)、児童漫画の短編傑作を集めるのもいいかもしれない。


それはそれとして労作です。マンガはすばらしいと素直に思える良選集です。できるなら続いてほしいシリーズです。単価は高いですけどね。


日本短編漫画傑作集 (4) - いしかわ じゅん, 江口 寿史, 呉 智英, いしい ひさいち, 一ノ関 圭, ますむら ひろし, 星野 之宣, 高橋 葉介, さべあ のま, 新田 たつお, 藤子・F・ 不二雄, 坂口 尚, はるき 悦巳, 宮西 計三
日本短編漫画傑作集 (4) - いしかわ じゅん, 江口 寿史, 呉 智英, いしい ひさいち, 一ノ関 圭, ますむら ひろし, 星野 之宣, 高橋 葉介, さべあ のま, 新田 たつお, 藤子・F・ 不二雄, 坂口 尚, はるき 悦巳, 宮西 計三

日本短編漫画傑作集 (5) - いしかわ じゅん, 江口 寿史, 呉 智英, 高野 文子, 湊谷 夢吉, ひさうち みちお, 泉 昌之, 杉浦 日向子, 浦沢 直樹, 高橋 留美子, 谷口 ジロー, 関川 夏央, 弘兼 憲史, いがらし みきお
日本短編漫画傑作集 (5) - いしかわ じゅん, 江口 寿史, 呉 智英, 高野 文子, 湊谷 夢吉, ひさうち みちお, 泉 昌之, 杉浦 日向子, 浦沢 直樹, 高橋 留美子, 谷口 ジロー, 関川 夏央, 弘兼 憲史, いがらし みきお

日本短編漫画傑作集 (6) - いしかわ じゅん, 江口 寿史, 呉 智英, 吉田 戦車, 青山 剛昌, 岡崎 京子, すぎむら しんいち, よしもと よしとも, 松本 大洋, 藤田 和日郎, 村野 守美, とり・ みき, 筒井 康隆, あだち 充, 真造 圭伍
日本短編漫画傑作集 (6) - いしかわ じゅん, 江口 寿史, 呉 智英, 吉田 戦車, 青山 剛昌, 岡崎 京子, すぎむら しんいち, よしもと よしとも, 松本 大洋, 藤田 和日郎, 村野 守美, とり・ みき, 筒井 康隆, あだち 充, 真造 圭伍

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2021年01月26日

いつか中華屋でチャーハンを 増田 薫 (スタンド・ブックス )


8人編成のソウルバンド思い出野郎AチームのSAXの方によるグルメマンガ。
[思い出野郎Aチーム]

WEB連載なのでだいたいのところは読んでいただけばすっかりわかると思います。おれは書店でジャケ買いしたのですが、「あ、これ読んだことある。これだったんだ」と思いましたよ。
[いつか中華屋でチャーハンをの記事一覧 - イーアイデムの地元メディア「ジモコロ」]

書籍版は15話ですがここには12話載ってますわ。だからぶっちゃけここを読めばいいです。書籍版は大半がカラーではないですし。

ただ、表紙のハナコの岡部氏ほかの推薦文にまみれた文字のなかのオビの惹句「グルメ漫画エッセイの新たな金字塔」はマジでそうだなあと思ったよ。

本作は中華料理店に絞っております。ただし、ラーメン、チャーハン、餃子などの定番を気持ち避けて、変ったメニューや中華屋のカレーやオムライスを食べてみるというスタイル。しかも、あちこちで集中的に。しかも、多角的に。なおかつ、答えが出る。なぜなら、店のひとに話しを聞いているから。ただし、答えが出ないこともある。店のひともわからないことがあるから。

たとえば、大阪の中華料理屋の「あんかけカツ丼」。中華飯にカツが載っているスタイルでしょうか。それを食べ比べる。
[【漫画】大阪のあんかけカツ丼 | いつか中華屋でチャーハンを - イーアイデムの地元メディア「ジモコロ」]


たとえば、日本ではあまり馴染みのない酸菜(一応変換候補にある)に焦点を絞りいろいろと食べ比べる。
[【漫画】大陸系中華に潜む「酸菜」に気をつけろ! | いつか中華屋でチャーハンを - イーアイデムの地元メディア「ジモコロ」]

こういう感じ。「へー」があり、「うわ、食べたい!」っってのがあり、読むたびに、グーグルマップで検索しては印をつけていた(マンガ内の店は実名)。

イラストレイテッドな味のある人物画に精緻な料理画。随所にあるパロディなどの遊び。なによりネタのまとめかたがいい。

消えていくであろう料理が多いです。そういう儚さ、一期一会のものがあります。売れてるものが正解ってことじゃないよなあと。2度と食べることのできない美味しいものも歴史の中から現れては消えていくわけですよ。たとえば、わかりやすいところでいうと生レバーとかさ。本書の料理群も「いつまでもあると思うなよ」という儚さがあります。そして同時に「新しさ」もあるんですよね。たとえば、中華屋のオムライスなんてのは実に新しいものですよね。
自分語りゾーンに入りますが、中華料理系の食堂を営んでました(過去形です)。オムライスがわりに名物でした。かように中華屋のオムライスって意外に多いです。なおかつ、そこから派生して中華料理系のアレンジが加わったオムライスも多いのですよ。そういうものは新しいし儚いものです。この店がなくなったら食べることができなくなるワンアンドオンリーなものがありますから。
[【漫画】メリークリスマス!中華オムライスを食え|いつか中華屋でチャーハンを - イーアイデムの地元メディア「ジモコロ」]


前記にあった「グルメ漫画エッセイの新たな金字塔」っていうと思い出すものがあります。
近くへ行きたい。秘境としての近所--舞台は&quot;江ぐち&quot;というラーメン屋。 - 久住 昌之

「孤独のグルメ」でおなじみの久住昌之氏の1985年に発表された初の単独著作であるエッセイ。いまみたらamazonで12000円というどえらい値段で売ってた。

たぶん2010年に発表されたこの本と内容な似ていると思います(読んでません)。久住氏が通い詰めたラーメン店「江ぐち」の魅力について延々と1冊語り続けるというエッセイです。しかも、店に取材するでなし、店員はこういうひととか、こういう裏メニューがあるんだとか、友達と美味さについて語るだけとか、いろいろな点で影響を受けた本です。これもおれにとってはグルメ本の金字塔です。恐ろしいことに久住氏はこのころからあまりブレてません。美学や主義主張や芸風はこのころから一貫してます。すごい。
[【漫画】きみはラーメン屋で酒を飲んだことがあるか|いつか中華屋でチャーハンを - イーアイデムの地元メディア「ジモコロ」]

翻って本作。前記の「江ぐち」の後継店である「みたか」について語っております。そうだった。おれは上記の本を読んで「江ぐち」に行こうと思っていたのをすっかり忘れていた。
しかし、「みたか」を囲んで35年の時を経て2棟の金字塔がそびえ立ってるって考えるとすげえなあ。三鷹で降りたことねえなとも思ったけど。

腹が減ります。がっつり中華食べたいです。あちこち行きたくなります。なぜかはよくわかりませんが読むと「ウォー、がんばるぞ」と元気になるマンガです。すばらしい。


上記のハナコの岡部氏がコメントしてる理由。また、ハナコの単独ライブのジングルなども担当しているようです。



近くへ行きたい。秘境としての近所--舞台は&quot;江ぐち&quot;というラーメン屋。 - 久住 昌之
近くへ行きたい。秘境としての近所--舞台は&quot;江ぐち&quot;というラーメン屋。 - 久住 昌之



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