2019年11月25日

「このマンガがすごい」に去年一昨年原稿依頼がきてたけど今年はこなかったのでしゃあねえから依頼されたと想定した原稿を書く(2019年ベスト5)



オトコ編かオンナ編を選び(宝島社で制定されてる)、そこでベスト5を選びTwitter程度の文字数でコメント。巻数指定はできなくて何巻であろうと1作品で勘定する。それでだいぶモメてリテイクが多かったりしました。あとオトコ編を選んだわり「その作品はオンナ編です」ってのも多かったな。「魔法はつづく」とか「口が目女」なんかはオンナ編だったので落ちましたよ去年。書き忘れてましたがおれはオトコ編をチョイスしました。それで1作はオンナ編のもねじ込める。だから「魔法はつづく」をねじ込めました。

[恐怖の口が目女 崇山祟(リイド社 LEED Cafe comics): ポトチャリコミック]

[魔法はつづく オガツ カヅオ(リイド社 LEED Cafe comics): ポトチャリコミック]

なおギャラは5,000円分の図書カードでした。


余談はともかくはじめまーす。(リンク先は本作での感想文です)


オトコ編(ということにはこだわらず5作品)

1位: [ひょうひょう ネルノダイスキ (アタシ社): ポトチャリコミック]

2位:[心臓 奥田亜紀子 (リイド社): ポトチャリコミック]

3位:[恋煮込み愛つゆだく大盛り にくまん子 (KADOKAWA): ポトチャリコミック]

4位:[SPY×FAMILY 1 遠藤 達哉 (集英社): ポトチャリコミック]

5位:[僕の心のヤバイやつ(2)桜井のりお (秋田書店): ポトチャリコミック]

1.令和をもっとも感じる作品。新しさは近年1番感じられる。2.平成を総決算する作品。平成の空気を見事に保存されてる。将来貴重な資料になる。3.今年はにくまん子イヤーだった。出した3作ともすばらしい。とくに「よよの渦」のヤバさ。4.新しさと王道のバランス。5.飽和してきたラブコメに鮮烈な一撃。SNSの使い方も絶妙。



こんな感じでしょうか。次回は依頼がくるといーなー。2019年版は発表されたベスト5のうち3作が入ってたのに。



来年もいいマンガに出会えるといいですね。本家は12月くらいに出ますね。おれは買わないがみんな買おう!


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2019年11月22日

文庫 筒井漫画瀆本ふたたび VA.(実業之日本社)




2019年8月に発売された筒井漫画瀆本の続編であり、2010年発売の文藝春秋版を基底に、筒井康隆氏みずからの作品を3作収録しております。
参加マンガ家は以下。略称敬、じゃなくて敬称略で。

◆明智抄「幸福ですか?」
◆いがらしみきお「北極王」
◆伊藤伸平「五郎八航空」
◆折原みと「サチコちゃん」
◆雷門獅篭「落語・伝票あらそい」
◆菊池直恵「熊の木本線」
◆鈴木みそ「あるいは酒でいっぱいの海」
◆大地丙太郎「発明後のパターン」
◆高橋葉介「ラッパを吹く弟」
◆田亀源五郎「恋とは何でしょう」(『男たちのかいた絵』より)
◆竹本健治「スペードの女王」
◆萩原玲二「弁天さま」
◆畑中純「遠い座敷」
◆みずしな孝之「フェミニズム殺人事件のようなもの」
◆Moo. 念平「うちゅうを どんどん どこまでも」

にとり・みき「わが良き狼」は文庫1作に収録で除外。
くわえて「たぬきの方程式」「傷ついたのは誰の心」「客」の筒井作品を巻末収録。

前作である漫画瀆本のオリジナルが1995年で今回は2010年。この15年でのマンガの移り変わりでしょうか。筒井作品はわりあいとして古いものが選ばれており原作のマンガ化での洗練さというか変遷が鮮明となっておりそこが見どころのひとつにはなってますね。

それぞれのマンガのチョイス、自身の作風に合わせてのもあり、意外なチョイスもある。そのどれも共通するのはマンガとして成立しているというか帳尻を合わせている。完成度が高いというと微妙な表現になるし、よりおもしろくなるというとこれまた齟齬が生じる気もする。ちょっと面映いものいいではあるが「よくできている」と。ここが差なのかと思った。

小説からマンガへのメディアを移すことはどんどん洗練性がましています。そういう中で、本作は選ばれている作品は短編をおもにしておりますが、それでも漏らしてしまったりする内容を絵と内容とマンガならではの描写と処理などでうまく補完しております。その技術がまずおもしろいなあと。そこらへん研究すると筒井原作、1と2で卒論書けますよ。

ま、学生じゃないので淡々と感想書いていきまーす。

いがらし北極星、大地発明後の、マンガ家からのイメージ解釈のおもしろさ。雷門伝票やみずしなフェミニズムの4コマというホームフィールドでの落とし具合。大地氏と竹本健治氏それぞれの異業種でのマンガも、前作の清水ミチコ氏のような破天荒さはなく「マンガ」してるなと。

個人的におどろいたのは菊池熊の木本線です。

菊池直恵氏は「鉄子の旅」というアニメ化もされた鉄道ルポマンガでその流れで鉄道が出てくる本作も抜擢されたんだろうと思っておりましたが物語の再現度、描画、とくに家に列車が入り込むシーンなどはすばらしくて、ちょっと驚きました。「鉄子の旅」では同乗者のエキセントリックなキャラである横見氏にフォーカスを合わせていてあまり列車や景色描写をしてなかったような記憶があったから。

[むしろウツなので結婚かと - 菊池直恵/城伊景季 / 第9話 何してるの!! | コミックDAYS]

この最新作ではときおりバズったりと話題になっており「なるほどな」という逆発見があったりしました。

萩原弁天も絢爛豪華なイメージ。作者は「パプリカ」という長編のコミカライズも行っており、のちに今敏監督による劇場アニメ化も果たされているが、そのアニメ版のノリを経由したかのような弁天さはよかった。軽いバカ話の原作をブラッシュアップしてネオン装飾を施したことでよりバカをました。

ほかには田亀恋とは〜や畑中遠い座敷、伊藤五郎八空港の、適材適所としかいいようのない作品。これまた自作くらいの力量と熱量で仕上げてオラれてますよね。とくに畑中純さんすげえわ。

筒井3作品では1で蛭子能収氏がマンガを担当した「傷ついたのは誰の心」の作者本人による漫画化が興味深い。同じ作者でも解釈がちがうよなあ。蛭子氏もかなり忠実なコミカライズをしていることがわかるよなあとか。マジで筒井康隆氏マンガうまいよなあとか。

正直なところすでにして現在では少し古めな作品や印象はあります。だからこそ今また3はいいかな!というかぜひ読みたい!誰がどんな作品をどんな風に料理して3にするか。とても興味がある。



posted by すけきょう at 14:36| Comment(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月14日

性的な宇崎ちゃん 〜宇崎ちゃんは遊びたい!の読み方










うざい後輩宇崎ちゃんが先輩にちょっかいを出してるマンガ。
献血ポスターの問題で悪名が轟いてしまった令和元年です。その原因のほぼすべては宇崎ちゃんのおっぱいです。
最初反対派が「奇乳」などというくらいの大きさではあります(すぐにこれは「スジが悪い」と気づいて撤回しましたが)。
そのほかのすべてはあの乳における嫌悪からの後付の理屈ですね。

あの乳をみて「性的」と思うのは実は正しいリアクションではあります。マンガ内でも重要なポイントになっています。広義では「性的」であることはまちがいないです。なんていうかアイコンとしての爆乳なんですよね。性的喚起を促すためのアイコン。
ただし、
そう「ただし」がつきます。

物語の骨子は先に書いたとおり、ボッチ気質の先輩になにかとからむうざい後輩の宇崎ちゃんです。
この骨子だけだと実は宇崎ちゃんが男でも成立する話ではあります。友情物語にもエロコメにもラブコメにもできますし。まあ、BLにもできます。

ただ、あの乳だからこそ成立するのがこのマンガのキモなのです。

ラブコメでおなじみの朴念仁のニブチン主人公は、あの乳によって女性ということを否が応でも意識するようにできてます。でも、それは広義での「性的」といえばそうだけどレベルでいうとせいぜいで「読者サービス」です。目を引くアイキャッチ的な。
実際、読者側のビジュアルも助かるけどね(それが問題を生み出したのでもありますが)。

おっぱいが大きかったらそこに性的なものが生まれるのは必然ではあるけど、上記のとおり、宇崎ちゃんのおっぱいは、そうでもしておかないと先輩は宇崎ちゃんをただの男の後輩として扱うだろうし、実際多くの場合そう扱っている。そこに「すげえおっぱい」というアクセントが生じることにより「彼女は女」という軽い「ジャブ」が入ることでときおり意識する瞬間が生まれる。それにより淡い恋心もふわっと起こる。

この「ジャブ」が重要なのですね。むしろ、ツルペタの宇崎ちゃんだったら、宇崎ちゃんを「女性」と意識した瞬間に成年コミックに突入するじゃないですか。そうなるとただの先輩後輩から恋人になり肉欲の日々です。ラブコメというジャンルとして成立しなくなるし、そもそもマンガとして成立しにくくなる、もっとあからさまなことをいえばマンガとしてはつまらなくなる。

もっといえばあのおっぱいのためにマンガが「性的になりすぎる」のを抑制する効果を果たしているわけです。おっぱいのお色気でそれ以上のお色気展開を阻止してるのです。
現実ではどうなのかはわかりませんが、ラブコメ世界では大きすぎるおっぱいは往々にしてそれ以上の進行にブレーキをかける役割「も」果たすことがある。抑制たる乳。寸止めたる乳。クッションたる乳。もちろんアクセルにもなりますがそこはそれ。

そういうデリケートな読解力(要経験値)が必要なマンガなので献血のポスターにしたのは微妙な判断ではありました。
マンガでの宇崎ちゃんが好きだから担当はポスターに採用したわけで、それはつまり、宇崎ちゃんの魅力を理解した上でやってるから、それを読み取れない方々の「性的」という浅いレベルでの指摘は寝耳に水だろうなあと。そして宇崎ちゃんの魅力をわかってもらえなくて残念だったろうし、そういうラブコメのお約束は思った以上に浸透されてないし理解されなかったんだなと。そこに怒りも悲しみも感じました。

正直なところ以前の「ゆらぎ荘の幽奈さん」や「のうりん」に関しては本編の内容を知らなかったのでなんともいえないところがありました。その分、「むこう」の言い分も逆にちょっとわかったりするが、原作を読んでいる宇崎ちゃんの言いがかりはかなりオーバーに思いました。
ということはつまり幽奈さんやのうりんもその可能性が大だし、実際、そのあと「幽奈さん」はアニメ化されたりマンガを1巻読んでみたかぎりではとてもいいジェントルでフェミな主人公だよなとは思う。マンガの影響を受けたのならむしろ男子たちは立派なフェミニストになるんじゃないかと思えるくらい。宇崎ちゃん問題から派生してジャンプにフェミなマンガを載せろという意見もありましたが幽奈さん読んでろよと。十分かどうかはともかく女性に優しく接する子供に育つ可能性は大きいです。

つまりいいたいことは、宇崎ちゃんを「ちゃんと」読め!と。マンガを「ちゃんと」読め!と。

そういうことで宇崎ちゃんはあのポスターだけではわからない魅力にあふれるマンガではあるのでぜひお試しください。マンガの「読解力」を鍛えてください。






posted by すけきょう at 13:40| Comment(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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