2020年09月30日

竜女戦記 都留 泰作 平凡社





有無をいわせない。そういう種類の作品があるじゃないですか。好き嫌いとか苦手なジャンルとかをぶっ飛ばした存在。それは本作と。

異世界ファンタジー。指輪物語やゲーム・オブ・スローンズとかの長大で重厚なダークファンタジーのクロニクルなやつ。ただし、舞台が和風。つまりは時代劇。

主人公の「たか」は日本髪を結った主婦で、ちょんまげを結った侍を夫に持ちます。その「たか」が天下をとる話です。「主婦が天下を取る物語」なのです。

1巻は天下を取る契約をかわして2巻からいよいよ急転直下の展開です。ファンタジー丸出しになっていきますが天下取りの物語にもなっていく。しかも3国に分かれている国のそれぞれの思惑が混ざりはじめる。主人公「たか」はどうやって天下取りの手がかりをつかんでいくのか。

奇天烈な展開やディティールに日本みたいで日本でない西洋人が考えついたあちこちのアジアが混ざり込んでいるおなじみのアレみたいな世界観。
それはいわゆるRPG以降の中世異世界の架空の国々をも思い出す。あれも国を特定できないですよね。
「天空の城ラピュタ」が欧米人にイマイチウケないのと似ているかも。あれは「欧米」のいいところをチャンポンで取り込んでいるからだとか。
それをかなり意図的にやっている様子。
なるほど、西洋風があるなら和風があったっていいじゃないかというシンプルなところからはじまったのかもしれないけど、それを実現させるまでにボーダイな知識とセンスを持ち込んでじっくりと組み上げている。どうしても史実に沿いたくなるじゃないですか。どうしても日本史のなにかになぞらえたくなるじゃないですか?それを絶妙な舵取りで「処理」している。よくある跡目争いや国盗りゲームなどを現実のそれに半端にリンクさせたりしないあたりのストイックさがいいかなと。

それでいて、エロもグロもナンセンスもギャグもファンタジーも「人間」もふんだんに盛り込まれている。広大なスケールも矮小な人心も丁寧に丁寧に描いている。

有無をいわせない娯楽を正面切ってぶつけてきている。

好き嫌いでいうと異世界もファンタジーも時代劇も政治的な謀略なども好物ではないです。ただ有無をいわせられない。「おもしろい」が溢れている。というかこれがつまらないはずないじゃないか。おれはそこまで自分の価値機運も好き嫌いにもゼッタイの自信はない。それがおれのいいところとすら思ってる。

ともかく。

そういうマンガです。2020年読むひとを圧倒させるマンガはこれです。ありがとうございます。3巻が楽しみです。今のうちに読んどけ読んどけ。

竜女戦記 コミック 1-2巻セット - 都留泰作
竜女戦記 コミック 1-2巻セット - 都留泰作
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2020年09月28日

美人女上司滝沢さん 4 やんBARU (ドラゴンコミックスエイジ) -



長いことマンガを買っている人生です。
1巻を買った以上は最終巻まで読み切る。定期購読の雑誌は隅から隅まで読むってのにも疲れてきた年頃です。コミックは1冊買い忘れたら「もういいや」だし、漫画雑誌は長らく購読してません。
だから、ポトチャリコミックにおいても「最高傑作!」とか「次巻が待ち遠しい!」なんて書いておきながらもうずっと買わないで存在も忘れているマンガは多いです。無責任ということに心は痛みますが、その痛みよりフトコロの痛みのほうが苦しいのでしょうがないのです。

マンガを買わない理由というのはいくつか具体的なものがあります。「つまらない」「つづきが気にならなくなった」「読み進むのがしんどい」などなど。
その逆は理由も逆になりますかね。「おもしろい」「つづきが気になる」「読み進むのが楽」と。

だいたい最近の目安は4巻かもしれませんね。そこまででフェイドアウトするのはする。

本作は4巻が出てるのを知らなくて「あわてて」注文するくらいでした。

おもしろかった。

タイトルのとおり美人上司の滝沢さんとその美人っぷりにドギマギする新入社員の武田くんとのドキドキラブコメ4コマとなっております。

いい大人のわりに初々しいラブラブな感じにじれったくなったのも今は昔の話。そのぬるま湯と進行しそうでしない「かったるい」展開が超好み。
気分によるとその「かったるい」が裏目に出ることもあるのですが4巻は大丈夫でした。楽しく読むことができました。新キャラもいい具合。コメディ要員の部長も登場シーンは限られてましたがおさえるところではきっちりおさえてありまして、大安定の4巻でした。

単行本では毎話描き下ろしでアイキャッチのようなカットが入ってます。これがずっとセクハラめいた、破廉恥なカッコを滝沢さんにさせていたものですが、今回はそれも含めてだいぶギラギラした脂が抜けた感じがありますね。おれがそう感じているだけの可能性もありますが。実際水着やエッチいカッコは相変わらずですが滝沢さんがちょっとなれている感じがあってそれがいいかなと。4巻ものあいだセクハラにあってなれるってのもなんだけどまあ水着くらいいいかってなった開き直りがね。

そして前記のマンガを買い続ける理由。途中で止める理由の大きなものに「なんとなく」ってのもあるなあと思ったり。元も子もないですが。でも「なんとなく」は侮れませんよ。いつかそれに適当な言葉がつくことがあるかもしれません。

美人女上司滝沢さん 4 (ドラゴンコミックスエイジ) - やんBARU
美人女上司滝沢さん 4 (ドラゴンコミックスエイジ) - やんBARUやんBARU KADOKAWA


posted by すけきょう at 20:36| Comment(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年09月11日

明日、世界が滅びるかもなので、本日は帰りません。 ふせでぃ (文藝春秋)



セックス充になれない人生だった。だからセックス充がうらやましい。
でも、セックス充もいろいろと大変かもしれないぞとはSNSや各種メディアから学んだ。少し未だ疑っているが。

本作もそうだ。


大人の男女が
二人で会うと
お酒を飲むか
Hをするしか
選択肢がない



ですって! 聞きました奥さん?

セフレさんとエッチしてのセリフです。セフレのセリフ。

本作の主人公さんは平凡なOLさんで平凡なセフレがいる感じです。セフレ以上に好きなのにむこうはセフレだろうし、下手なことをいったらセフレの関係すら壊れるかもしれないので黙ってる感じです。

幸せかどうか自問自答する。元カレのことも考える。そしてセフレのことも考えると。

うむ。セックス充だよなあ。セックスのあいだは楽しいしかれが一緒にいてくれるのはうれしいと。

セックス充じゃないからよくわからないけどそれでも足りないなにかを探してる感じは欲深いと思いつつもそんなもんだろうなと。

普段遣いの孤独? 承認欲求の底に穴が開いててずっと漏れている状態?

焼き肉バイキングでたらふく肉を食って幸せなのにカレーも食べたいと思うような感じ?

NOTセックス充にはピッタリはわからないんだ。

台風のシーンがあった。台風にひとりでいる主人公にセフレがたずねてくれる話。台風の描写自体はともかくとして台風のあとの描写がとってもいい感じであった。
正直なところ、この題材で作風で、このキャラ絵描画はしっくりこない。その他の作画もかなり頑張ってるが発展途上にはあると思う。ただ、上記の台風のあとの描写にはすごい可能性を感じる。主人公の心情を表しつつ、あまり他ではみない台風一過表現。だからあらゆるところを突破するような気はするんだ。

うん。

明日、世界が滅びるかもなので、本日は帰りません。 (文春e-book) - ふせでぃ
明日、世界が滅びるかもなので、本日は帰りません。 (文春e-book) - ふせでぃ

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