2021年01月26日

いつか中華屋でチャーハンを 増田 薫 (スタンド・ブックス )


8人編成のソウルバンド思い出野郎AチームのSAXの方によるグルメマンガ。
[思い出野郎Aチーム]

WEB連載なのでだいたいのところは読んでいただけばすっかりわかると思います。おれは書店でジャケ買いしたのですが、「あ、これ読んだことある。これだったんだ」と思いましたよ。
[いつか中華屋でチャーハンをの記事一覧 - イーアイデムの地元メディア「ジモコロ」]

書籍版は15話ですがここには12話載ってますわ。だからぶっちゃけここを読めばいいです。書籍版は大半がカラーではないですし。

ただ、表紙のハナコの岡部氏ほかの推薦文にまみれた文字のなかのオビの惹句「グルメ漫画エッセイの新たな金字塔」はマジでそうだなあと思ったよ。

本作は中華料理店に絞っております。ただし、ラーメン、チャーハン、餃子などの定番を気持ち避けて、変ったメニューや中華屋のカレーやオムライスを食べてみるというスタイル。しかも、あちこちで集中的に。しかも、多角的に。なおかつ、答えが出る。なぜなら、店のひとに話しを聞いているから。ただし、答えが出ないこともある。店のひともわからないことがあるから。

たとえば、大阪の中華料理屋の「あんかけカツ丼」。中華飯にカツが載っているスタイルでしょうか。それを食べ比べる。
[【漫画】大阪のあんかけカツ丼 | いつか中華屋でチャーハンを - イーアイデムの地元メディア「ジモコロ」]


たとえば、日本ではあまり馴染みのない酸菜(一応変換候補にある)に焦点を絞りいろいろと食べ比べる。
[【漫画】大陸系中華に潜む「酸菜」に気をつけろ! | いつか中華屋でチャーハンを - イーアイデムの地元メディア「ジモコロ」]

こういう感じ。「へー」があり、「うわ、食べたい!」っってのがあり、読むたびに、グーグルマップで検索しては印をつけていた(マンガ内の店は実名)。

イラストレイテッドな味のある人物画に精緻な料理画。随所にあるパロディなどの遊び。なによりネタのまとめかたがいい。

消えていくであろう料理が多いです。そういう儚さ、一期一会のものがあります。売れてるものが正解ってことじゃないよなあと。2度と食べることのできない美味しいものも歴史の中から現れては消えていくわけですよ。たとえば、わかりやすいところでいうと生レバーとかさ。本書の料理群も「いつまでもあると思うなよ」という儚さがあります。そして同時に「新しさ」もあるんですよね。たとえば、中華屋のオムライスなんてのは実に新しいものですよね。
自分語りゾーンに入りますが、中華料理系の食堂を営んでました(過去形です)。オムライスがわりに名物でした。かように中華屋のオムライスって意外に多いです。なおかつ、そこから派生して中華料理系のアレンジが加わったオムライスも多いのですよ。そういうものは新しいし儚いものです。この店がなくなったら食べることができなくなるワンアンドオンリーなものがありますから。
[【漫画】メリークリスマス!中華オムライスを食え|いつか中華屋でチャーハンを - イーアイデムの地元メディア「ジモコロ」]


前記にあった「グルメ漫画エッセイの新たな金字塔」っていうと思い出すものがあります。
近くへ行きたい。秘境としての近所--舞台は"江ぐち"というラーメン屋。 - 久住 昌之

「孤独のグルメ」でおなじみの久住昌之氏の1985年に発表された初の単独著作であるエッセイ。いまみたらamazonで12000円というどえらい値段で売ってた。

たぶん2010年に発表されたこの本と内容な似ていると思います(読んでません)。久住氏が通い詰めたラーメン店「江ぐち」の魅力について延々と1冊語り続けるというエッセイです。しかも、店に取材するでなし、店員はこういうひととか、こういう裏メニューがあるんだとか、友達と美味さについて語るだけとか、いろいろな点で影響を受けた本です。これもおれにとってはグルメ本の金字塔です。恐ろしいことに久住氏はこのころからあまりブレてません。美学や主義主張や芸風はこのころから一貫してます。すごい。
[【漫画】きみはラーメン屋で酒を飲んだことがあるか|いつか中華屋でチャーハンを - イーアイデムの地元メディア「ジモコロ」]

翻って本作。前記の「江ぐち」の後継店である「みたか」について語っております。そうだった。おれは上記の本を読んで「江ぐち」に行こうと思っていたのをすっかり忘れていた。
しかし、「みたか」を囲んで35年の時を経て2棟の金字塔がそびえ立ってるって考えるとすげえなあ。三鷹で降りたことねえなとも思ったけど。

腹が減ります。がっつり中華食べたいです。あちこち行きたくなります。なぜかはよくわかりませんが読むと「ウォー、がんばるぞ」と元気になるマンガです。すばらしい。


上記のハナコの岡部氏がコメントしてる理由。また、ハナコの単独ライブのジングルなども担当しているようです。



近くへ行きたい。秘境としての近所--舞台は"江ぐち"というラーメン屋。 - 久住 昌之
近くへ行きたい。秘境としての近所--舞台は"江ぐち"というラーメン屋。 - 久住 昌之



posted by すけきょう at 21:32| Comment(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする