がんばれタブチくん〜おじゃまんが山田くん〜隣の山田くんホーホケキョで、朝日新聞で「ののちゃん」を連載中のベテランでレジェンドなマンガ家による同人です。
ここらへんより入って通信販売でどうぞ。1冊1000円で送料500円です。
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これは、
ポルトガルの
国民歌謡『ファド』の
歌手をめざす
どうでもよい女の子が
どうでもよからざる能力を
見出されて花開く、
というだけの
都合のよいお話です。
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海辺の街に住んでいる吉川ロカさんがファドを歌い、皆の心をつかんでいくというお話です。
10年にわたりあちこちで描かれております。
いしいひさいち新境地などと話題になっておる作品ではありますが、実際のところ、キャリアをドーナツブックスほかのシリーズでわりとつぶさに観察していたものとしては新境地なのが通常運転すぎて、本作がとくに画期的に新境地とは思えなかったんですよね。
ドーナツブックは双葉社から出されていた新書サイズの4コマ集であちこちに描かれたものを再編集したその都度のベストセレクションな存在でクロニクルみたいな感じですが、これが毎巻新境地というべき、4コマに革命が起こるような作品集なんですよね。
B型平次シリーズ、さがしやケンちゃん、ノンキャリガールなどなど。もちろん、出世作のバイトくんにしろタブチくんにしろ、そのジャンルを築き上げたくらいの画期的なものではあるのですよ。そもそもがこのドーナツブックスにしても新書サイズ1ページに4コマ1本というスタイルが斬新で(だから買いはじめた)したし。
だから本作もいつもの「新境地」ではあるなあと思いました。
ときおり拝見する文章や、雑誌(漫金超など)、いしひさいち読本的なもので、博覧強記な方というのは存じ上げてましたが、それをファドに注力されてる感じ。それが端々からこぼれ出る感じ。音楽理論でROCAがすごいことを表現してるのがすごいよなあ。引き合いにだされてた実在のミュージシャンも興味深かった。
4コマをベースとして展開しておりますがときおり「2コマ」打ち抜きのハッとするシーンにぐっとくる。ストーリー4コマということか。きちんと4コマで1笑いあるところはベテランのなせる技。サザエさん等を引き合いに出すまでもない、4コママンガの登場人物の時間が流れないという基本から逸脱したロカさんの成長物語。そこもストーリー4コマっぽくはある。このあたりは熱心に読んでないので今もどれくらいの割合や規模で描かれてるのかわからない。4コマ雑誌がつぶれるとか、そのわりにアニメ化が決まったとか、いろいろあるようですが。
そして重要なキーワード「サウダージ」。ここでも出た。
鍋に弾丸を受けながら 青木 潤太朗/森山 慎 KADOKAWA: ポトチャリコミック http://sukekyo.seesaa.net/article/490920336.html?1661740849
本作でも、鍋に〜でも、ひとことでは簡単にいえない複雑な感情表現だそうです。なんかわかったようなわからないような、まだおれには難しいのかもしれない。
1回読み、そして感想を頭に思い浮かべてから、またファドの有名な人(らしい)アマリア・ロドリゲスなどをYou Tubeで聞きながら本作を読み返す。そして発見する。、
最大の特徴は、吉川ロカの生地であり、友人の柴島美乃とともに育った地元の港町の印象がすごく強いこと。それこそ、誰(京アニ?)がいつからはじめたかわからない女の子萌えアニメにおける聖地巡礼に行きたいくらい魅力があるところに思ったのだけど、読み返すと実際のそのシーンが少ない。不思議。というか、それはすべてラストシーンに集約されていたんだね。あのシーンを読んだときに感じた潮風はなんだったんだろう?そして感動とかエモいってシンプルな言葉で足りない複雑ななにか。これがサウダージなのかはわからないが忘れられない2022年でも強烈なマンガ体験にはなった。
ファドとこの街のロケーションがまたぴったりなんですよね。ファドって港町の音楽やなあと。おれの感覚なのでちがう可能性も高いのですが、そうなってしまいました。それはもういしい氏のせいです。
あ、あと、いしい作品にしてはわりとダイレクトな下ネタがあったかなーとも。