2022年12月26日

70年目の告白 〜毒とペン〜 高階良子 秋田書店




実は作者について知りません。びっくりするくらいのベテランですから。タイトルの通りのキャリアのベテランです。
大御所漫画家の生い立ちからのまんが道。全3巻。
タイトルにある「毒」は毒親のことですね。
彼女の人生に立ちはだかり続けていた母親との軋轢を描いた70年のまんが道。
これがすさまじかった。
知ったのはTwitterだったのです。圧巻とフォローしていた漫画家の方々が書いていたので、ちょうどセール日と重なっていたので「ふーん」と軽い気持ちで買い、軽い気持ちで読みはじめたがこれが凄まじかった。すっかりやられてしまった。

オープニングは母の死。そして戦時中の空襲により母が自分を生むところにタイムスリップして出産前の母親描写から物語を今の作者が見守るところからはじまる。
家を伯母にとられバラック小屋に子供4人と暮らす。父親は仕事が忙しくてめったに家に帰らない。そこでいて母親にあからさまにいびられる日々。

マンガという生きがいをみつけても馬鹿にされたり書き溜めたノートを捨てられたり、「マジか」ってエピソードがつづく。
それでいて中学卒業とともに就職。住み込みの職場で仕事の合間に布団にちゃぶ台を置いてマンガを描くというエクストリームまんが道。

そして作者は漫画家として成功するんですよ。そうなると母親が寄生しはじめるというネバーエンディング毒沼。
アシスタントの前で主人公をdisり自分がえらいことをアピールするとかいびるのが止まらないまま、ついには精神を病んだりする。

毒親ってのがよくわからないのは、結局のところ親を捨てきれてなくていつか自分をかわいがってもらえるっていくつになっても思ってるから、絶望に絶望を重ねても暗闇の中に一筋の光を見出すって構造なんかなあと。作者も「今の」作者視点から分析されてるけど。

基本というか最初から最後までラスボスとして母親は立ちはだかっているのだけど、終戦から昭和平成という時代にはなんていうか別の敵も多いんだよね。
中学のときの牛乳のエピソードがとくに強烈だった。
クラスの牛乳が足りないっていったとき牛乳嫌いの同級生が手をあげて「私のをあげます」という。それをみていた担任が、作者に「あなたは生活保護でタダで給食を食べてるんだからこういうときはすすんで差し出せ」なんていうのよ。
で、それがショックで「自分は牛乳が飲めない」という自己暗示をかける。
なんかこういう強烈なエピソードが多いんだよな。
結局、母親が財産を管理するって名目で作者の稼ぎの大半を貯金してたものの、それは晩年にボケた母親のケアホームのためになくなるとか。

いやハードすぎね?と絶句する。

昔から大好きだったって理由でフォローした漫画家もときおり毒親の話をツイートするのを読んで衝撃を受けていた。
こういうのやっぱりあるんだなあ。

こういう「まんが道」もあるんだなと。凄まじかったです。
posted by すけきょう at 14:19| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする