2024年06月28日

佐々田は友達 スタニング沢村 文藝春秋社

佐々田は友達 1 [ スタニング沢村 ] - 楽天ブックス
佐々田は友達 1 [ スタニング沢村 ] - 楽天ブックス
佐々田は友達 2 [ スタニング沢村 ] - 楽天ブックス
佐々田は友達 2 [ スタニング沢村 ] - 楽天ブックス

2巻のジャケットが素敵だったので、こりゃあ読みたいな。試し読みしておもしろそうだったら買おうなんて、ebookjapanをみると、試し読みできないんだよね?およよ。じゃあ、Kindleでって調べたら1巻をすでに持っているのです。なんだそりゃ?(買った覚えがなかった)
まあ、助かったなと1巻を読んだら衝撃的におもしろかったのですぐに2巻も買って読んでさらに衝撃的なおもしろさだったのその勢いでこの文章を書いている次第でござい。

高2の佐々田は物静かで地味で、どちらかというと陰キャグループにいれられる女子だけど、そこの面々と話が通じるほどのオタクでもない。はぐれ狼ポジ。学校があまり好きではないが、不登校になるほどの強い意志は持ってない。
だから帰り道が1番好き。道の木々や草花や虫やカナヘビを追いかけてます。かといって積極的な野生児やフィールドワーク大好きってほどでもない感じ。
それで今日もカナヘビを追いかけて林を抜けたら、同クラのスクールカーストトップのギャル系の高橋さんとバッタリ出会います。
次の日から高橋さんにからまれるようになります。で、以降、カースト間を超えた友情ストーリーが「はじまらない」。
そう、はじまらないんですよね。佐々田さんは1話ですでに先生に評されている。「ガード固め」で「ニコニコ流すタイプ」なんですね。
頑なにマイペースでパーソナルスペースを確保していようとするけど、先ほども書いた通りそれで波風を立てるまほどのメンタル強者ではないのですね。だから、殻にこもる。
で、名前呼びしてベタベタしてくる陽キャの代表である高橋さんに、笑いながらも「名前呼びするな」「あと距離が近い」とおずおずながらもいってのけるのですね。

ここらへんの感じがとってもいいなあと。最近好きなキーワードであるところの「雑魚」いなあと。
本作には「友達」ってタイトルがついているわりに、メイン登場人物の高橋と佐々田の接点が極小なことなんですよね。こんな接点のないの珍しいと思いつつもリアルだ。結局「人種」のちがう同士の異種交友は無理が出てくるんですよ。
高橋は根っからのパリピでひとがたくさんいるほど、みんなが騒いでるほどアガるし、全員がそれを望んでいると思っている。だから、コミュ症気味な佐々田を良かれと自分の仲間とのオケパに誘うわけです。だけど、佐々田はいろいろ考えた末(特に着ていく服)に「寝逃げ」するのですね。ひたすら横になって連絡をシカトする。
そして仲がさめて、そのまま夏休みで、まったくお互いを思い出さないまま、過ぎていくのです。
そのまま夏休みに突入で2ヶ月互いに連絡なし。ここがすごい。2巻の白眉。

学校だけの付き合い、同じクラスの間だけのつきあいってたくさんある。1回だけ休みに集まったけどそれっきりとか。
高橋も佐々田も詳しくは語られることのない他キャラも、それぞれまったくちがう夏を過ごしているんだよね。干渉し合わない。つるまない。つるむのはつるむ用の友達がいる。また高橋は短期間に何人もつきあったり別れたりしてる。まったく佐々田の関係のないところで。これがまた画期的だよなあ。

と、こんなに人種がちがうのに、クラスが一緒なばかりにひょんなことで関係が生まれる。
これが学校のいいところおもしろいところだなと。たまたま同じ年に生まれてたまたま近くに住んでいただけのひとを同じところに集めて何年もいっしょにおく。
その化学変化ってすごいよな。そりゃ「学校なんてクソだ」ってのから「学校サイコー」ってのから無数のその間って面々がそれぞれが感じているグラデーションがある。それをしてカーストといってるけど、底辺が上の方を取って代わろうとは思わないわけですよね。威張ってるのはいやだけど。
現実だと当たり前。だけどそれをあらためて考えさせるマンガなのです。マンガの青春群像劇だと集まったり、なんかの偶然で会ったりつながったりするじゃん。でも、学校でカーストがちがうひとは現実だとまず思考や行動範囲がまったくちがうからがっつりからむことがない。

そこいらをそれはそれは丁寧に描いているんですよね。しかも、平等に描いている。誰の夏休みもそれぞれに平等に尊い。上下はない。

高橋にしても佐々田にしても、主人公らしからぬ、読者からの共感を拒絶する苦味のあるキャラなのがまたいい。それぞれいいところもあるけど、上記のオケパぶっちみたいな読者がひくような、理解が難しいような言動をお互いにするんだよね。
高橋はどうしようもなく純度の高い陽キャでパリピ脳だし、佐々田はどうしてもコミュ症だし難儀なところがある。おれはどっちにも「わかるわー」ってところが少ない。

そんなこんな含めてあんまりやりすぎてもダメだし、ぬるくてすぐに仲間とか絆を連呼しててもダメだし、関係性に緩急つけすぎるのもちがうしって、つまり、さじ加減がいいんだよね。それをとっ散らかったものじゃなくて「マンガ」としてきっちり成立しているのもいい。その互いの、たまに交差する青春がいいんですよね。

全描画いい。とりわけ、さりげな心象描画がとてもいい。激エモ青春!ってほどじゃない、かといってクールってほどでもない。
また夏休みのような二元中継の構成も非常に巧み。

高橋みたいのと佐々田みたいなやつの理解ができたような気がした。とくに高橋。パリピの脳内や行動理由を知った気になれた。



おもしろかったです。3巻楽しみ。
佐々田は友達 2 (文春e-book) - スタニング沢村
佐々田は友達 2 (文春e-book) - スタニング沢村
佐々田は友達 1 (文春e-book) - スタニング沢村
佐々田は友達 1 (文春e-book) - スタニング沢村
posted by すけきょう at 09:20| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年06月27日

それでも天使のままで 小骨トモ 双葉社

それでも天使のままで (アクションコミックス) [ 小骨トモ ] - 楽天ブックス
それでも天使のままで (アクションコミックス) [ 小骨トモ ] - 楽天ブックス

おもしろいけど何度も読めない本ってありますよね。本作のことです。
何度も読めないわけを書いていこうという趣向です。心に深く刺さってダメージが深いからです。しまった。すっかり書いてしまいました。

以下蛇足です。

4編収録されております。学生さんが主役の話ですね。

「リカ先輩の夢を見る」
https://x.com/Kobone_Tomo/status/1804063903879700671

映画少年が名画座で映画に感動して涙している。上映終了後にリカ先輩も涙していたのを見かける。学校に馴染めない少年。ふざけあってる同級生が幼稚に見えるが、その幼稚にバカにされてる屈辱。そしてリカ先輩に呼び止められて映画の話をしようと誘われる。先輩はバンドのボーカルが好きだから興味を持ってみたいといってたのだけど、ひとしきり映画の話をした少年は、わかってくれるひとがいたと救われた気持ちになった。次の日、少年はおすすめのDVDをもって先輩を尋ね話しかけようとしたら先輩と同じクラスの陰キャが話しかけている。先輩の話を立ち聞きしてその映画をみにいったから話をしたいと。でも、先輩はキモがる。少年は声をかけられなくなる。
後日、少年と映画をみにいく。先輩はバンドのボーカルに少年から尋ねたおすすめ映画をリプしてる。そしてあくびを噛み殺しながら意識高い映画をみてる。
少年はブチギレてリカ先輩を断罪する。
「お前なんかに僕”ら”の気持ちはわかるもんか」
「お前”ら”なんかに…! 映画を観る資格はない」
(”ら”の””はおれがつけました)

そして少年は逃げ去って勝どきをあげながらも泣き崩れる。

どうよ?意識高い映画鑑賞をする眼を持ってるってことでなんとかちっぽけなプライドを支えていた映画少年をズタズタに引き裂くマンガは?
”ら”のつけるところのすごさよ。いろいろな方面に溜飲を下げている。この身勝手さが思春期の厄介なところだよな。

次の作品はバンド。その次もバンドで、最後はマンガがキーになってます。

他人の心より、自分のプライドと好きになったものを通じて良くも悪くも歪み、そして多少学習する。そういう思春期に標準装備のダルさ。その「ダルい」をおさえてた蓋を開いてまざまざと思い起こさせる作品集です。
大きな石をひっくり返したらその下でうごめいている虫か、酒造りの大きな樽をかき混ぜたら醸造してるどろっとした液体の底から浮かび上がるあぶくか。

共通点として体液大サービス描写ですね。人間、こころが動いているときは体液が出るし、思春期はとくに代謝がいいので期間限定増量キャンペーンで体液が出ています。涙、汗、精液、その他。
だから、すっかりキャンペーン終了して久しいおれもその体液描写にあてられてなんだかわからんが汗がだくだく出ます。デトックス効果があるのかその逆なのかはわかりませんが。うろたえる。そうだな、読むたびにうろたえてしまう。

なんつか。10代20代って毎日何本もフラグが立ったり折れたりしてるなと。このマンガのキャラもどういうルートを通ってどういう未来に向かうのか、それがグッドエンドなのかバッドエンドなのかわからないけど、フラグが立ったり折れたりしてるなあと。
「リカ先輩の夢を見る」にしても、映画少年がヲタキモいって避けられるエンドも、映画少年とリカ先輩がいろいろ妥協して(少年は性欲と色と映画ヲタと自分に洗脳させようようとして、リカ先輩はバンドのボーカルにセンスいいと思われたいための専用コンシェルジュとして)関係を続けるエンドも、さらに妥協してつきあうまでもあったりとか、いろいろあるけど結局自意識大爆発大自滅エンドを選んだわけで。
そこらも含めライフ・ゴーズ・オンだけど、その自爆で読んでるこっちも巻き添えを食らって破片が胸に刺さって痛い痛いとなるわけなのですよ。

ということで心にハンカチをご用意して読んでください。


それでも天使のままで (アクションコミックス) - 小骨 トモ
それでも天使のままで (アクションコミックス) - 小骨 トモ
posted by すけきょう at 00:44| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年06月25日

スキップとローファー 高松 美咲 (講談社)

【全巻】スキップとローファー 1-10巻セット (アフタヌーンKC) [ 高松 美咲 ] - 楽天ブックス
【全巻】スキップとローファー 1-10巻セット (アフタヌーンKC) [ 高松 美咲 ] - 楽天ブックス

スキップとローファーは天才バカボンです。
さしあたりこの画像を見ていただきましょう。アニメ天才バカボンのOPですね。初代です。元祖でも平成でもレレレでも深夜でもありません。
有名な歌です。適当に検索すると聞くことができるでしょう。

西から登ったおひさまが東に沈む〜ではじまります。(手頃な動画があったんですがサイバー攻撃を受けてダウンしてます)

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西から登ったおひさまが東に沈む〜のところのバカボン
柳の下に猫がいるだからネコヤナギ〜のところのパパ

つまりなにがいいたいのかというと、スキップとローファーの登場人物はバカボンやパパのように掘り下げられてこういう足場の不安定なところで毎日がんばって立っているなあということがいいたいわけです。
本作の登場人物はえげつないまで人物像を掘り下げられてます。最新10巻では元生徒会長がザクザク掘られております。しかも「マジだる…」って感じで。
個人的に1番きつい「掘られ」だなと思いました。痛い痛い。彼が感情的になるシーンはとても痛かった。似たようなことした封印されし記憶の扉がゴゴゴと開きかけます。
この解決法で、彼がすごいやつだなとも思いました。

スクールライフコメディと帯には書いてあるけど、読後、自分も掘られたような気持ちになるんですよね。不完全燃焼のスクールライフを送ったひとには堪えます。そもそも完全燃焼悔いのないスクールライフを過ごしたって思ってるひとは大いなる勘違いか忘れているだけだと思われます。あの時期に「黒」を体験してない人間はいない。

と。性善説で、どのキャラも作者に愛情たっぷり注ぎ込まれた「いいひと」のように描かれつつも、同時にオノレの汚さと雑魚っぷりに頭から黒い臭い煙が出てオーバーヒートで立ちすくんでおります。自分を燃してる火葬場の煙を見ているような。それでも人生は続いていくのだなと。そしてじわじわと一歩踏み出すしかないと。そう思っていられるのは、もはや高校生に共感性羞恥心を持たない程度には、すれた人間になれたからでしょうか。おれにもスキップとローファーのキャラみたいに作者から暖かく守ってくれてる存在があったと思います。ま、親とか。

そしてここから本編とは関係のない与太話ゾーンに突入ですよ。

今年のマンガにおけるキーワードは「雑魚」だと思っている。取るに足らないキャラを取るに足らなく描く。
それは若すぎて足らなすぎるキャラを描くための定石ではあるんだけど、その描き方に新風が巻き起こっているような気がする。
そして、たぶん、その流れの最初の一滴になっているものに本作もあると思う。
本作の登場人物は遠慮なしに裸にされる。無防備な弱い自分を思い知らされるエピソードが満載。しかも、かなり「平等」に裸にされる。成年コミックやエロゲーでたとえたいところだがここではさておきましょう。
そこを作者EYEで優しく見守っている図式。これに救われているし、それが作品全体を世知辛いが優しい世界ってトーンにしているんだなと。

雑魚は世界を救ったりはしないけど、多少の安心はもたらしてくれそうだね。

スキップとローファー(10) (アフタヌーンコミックス) - 高松美咲
スキップとローファー(10) (アフタヌーンコミックス) - 高松美咲
posted by すけきょう at 23:48| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年06月11日

室外機室 ちょめ短編集 ちょめ(アクションコミックス)

室外機室 ちょめ短編集 [ ちょめ ] - 楽天ブックス
室外機室 ちょめ短編集 [ ちょめ ] - 楽天ブックス

4篇収録の短編集。

個人出版として描いたもので、それぞれ単独の作品として発表されたもので統一性はないと思われるんですが、共通点というか作風が見いだせることができます。かつ、完成度が高いです。

1冊の本としての体裁を「序」と「〆」という描き下ろし作品で出だしと終わりを飾っている。目次や表紙や口絵もなくいきなり「序」がはじまる。
新幹線の帰路だろうか。突如なんでもないところで停止する。主人公がなにげなくスマホをみるとWi-Fiが通っている。「しつがいきしつ」。ふと車窓からエアコンの室外機がフジツボのようにくっついている雑居ビルがみえる。
好奇心からネットワークをつなげてみる。
そうすると「目次」が現れる。
1番下の「継ぎ穂」をクリックする。すると次ページから「継ぎ穂」が現れる。

継ぎ穂 / 継ぎ穂 - ちょめ | webアクション https://comic-action.com/episode/2550689798575876059

いつまでも残っているのかわからないが、リンク先を参照していただければすっかり読むことができるので、本作はネタバラシとか関係なく全部語ろう。

同人誌即売会。「接ぎ穂」という同人誌を発見。なにげなく買う。とてもおもしろいファンタジーマンガだった。ところが奥付がない。おもしろいのに情報がないから「いろいろわからなくて残念だった」とSNSに画像とあげる。ところが、次に見返したら、SNSの発言が削除されている。「あれ?」と思うと本はある。やっぱりおもしろい古き良きミステリーオマージュ。「あれ?」そんな話だったっけか?また読む。いやーおもしろいSFだなあ。と、読むたびにコレジャナイと思う。共通しているのは「おもしろいものを読んだ」という感想。なんとか内容を残そうとノートに書き留めているうちに、「これはこうしたほうがいいのではないか?」と着想が次から次へと湧き上がり、ノートに書き留めていき、ついには「継ぎ穂」という同人誌を作り上げて売る。

つづく、「21gの冒険」「混信」「地下図書館探検譚」。この4作(「序」「〆」も)に共通すること。

帯にあるように日常から不思議が入り込んでいくファンタジー短編になっている。
いわゆるSF(すこし・ふしぎ)ですね。それから終了したあとにSHになります。すこし・へんか。
物語の主人公は日常からするりと非日常へと入り込み、また「戻る」。でも、以前とはちがう、「変わる」がある。

そして、その「変わる」には人間が介在していないという特徴もある。人間っていうとちがうか、人の作りたもうたモノやコト。
「継ぎ穂」での同人誌のように、モノやコトが「ふしぎ」へといざなう。
そして基本は主人公のモノローグ以外のセリフがない。
最後のジブリアニメのような、タイトルにもある探検マンガの「地下図書館探検譚」にしてもたくさんの登場キャラが出てくるが、主人公はほとんど会話をしてないんだよね。
ひとりで「不思議」に迷い込んで抜け出して「変化」するという、不思議な成長物語4編なのです。
変わるための勇気を出す。もうちょっと具体的にすると、コミュニケートするために一歩踏み出す作品。「継ぎ穂」の主人公が同人誌にインスパイヤされてなにかを発信したくなるって感じの。作品ごとになにかはちがうけど変わる物語。

そういう希望に満ちた読後感を持てるいい作品集ですね。

室外機室 ちょめ短編集 (アクションコミックス) - ちょめ
室外機室 ちょめ短編集 (アクションコミックス) - ちょめ
posted by すけきょう at 14:25| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年06月06日

ふつうの軽音部 - クワハリ/出内テツオ | 少年ジャンプ+

[新品]ふつうの軽音部 (1-2巻 最新刊) 全巻セット - 漫画全巻ドットコム 楽天市場店
[新品]ふつうの軽音部 (1-2巻 最新刊) 全巻セット - 漫画全巻ドットコム 楽天市場店

[第1話〜第4話]ふつうの軽音部 - クワハリ/出内テツオ | 少年ジャンプ+ https://shonenjumpplus.com/episode/16457717013869519536

ジャンププラスで連載している軽音マンガです。最新2巻が出ました。そこまで様子を見ようと思いました。でも、2巻まで読んで好きだったので取り上げることにしました。

ぼっちや、けいおん!とちがって男がいます。部員が1年だけで45人いる。それがふつうなのかはおれにはよくわかりません。名門校の吹奏楽部みたいですね。そんな軽音部の話です。

流れとして、概要を紹介して、ちょっと腐してから、あとで持ち上げる構成にします。Aメロマイナーで、Bメロでドラムレスになって、サビで熱くなるタイプの楽曲風ですかね。

大阪が舞台。以降も実在のモノやバンドや楽曲が多数出てくる。主人公が90年代の日本のロックが好きなのでそこらへんからの選曲が多いです。ちゃんとJASRACにお金を取られる感じで歌ってます。主人公、高1の「はとっち」は「陰の者」を自称するスクールカースト下位。ただふつうだから特段いじめられたりとかではなく、高校に入ってそうそう軽音部以外の友達もできるし、部内でもいじめられたりとくに浮いたり、逆にチヤホヤされることもないポジにいます。
バンドをやったり大人数の部活マンガだけあって人間関係、とくに男女間でドタバタが渦巻くナンパでパリピな軽音部もはとっちは陰の者だから浮いた話とはあまり関係がないのです(2巻現在)。

1巻では完成したバンドがそのドタバタに巻き込まれ空中分解。
2巻は新たなバンドを作ろうと日夜奮闘しつつも集まったメンバー+助っ人の初ライブが散々なデキだから、夏休みは弾き語り修行としてメンバーに内緒で弾き語り修行をして、休み明けまた人間関係で波乱が起こります。

最大にふつうなこととして登場人物が雑魚ばかりです。これこそふつう。とくに男は普通以下の雑魚が目立ちます。女に色目をつかってフラれるとケツまくって逃げるような雑魚。女は女でまあ似たようなもんです。
でも高校生だし。ティーンエイジだし。そりゃあそうだよな。
ここらへんアカラサマに雑魚なのに感激していた1巻でしたし、2巻以降もこの雑魚感がつづくのか心配だったのですが、杞憂でした。登場人物全員雑魚いままです。

そこがいいんだ!
今年のマンガのキーワードは「雑魚」だなと思っています。雑魚なキャラクターが雑魚なりに右往左往しているなか着々と育っていく。

本作の場合、それこそがロックの衝動となるわけです。片岡義男さんが「ロックンロールは、僕はNO!と叫ぶこと」なんておっしゃってますが、それなんですよ。

ふつうの軽音部 - ジャンプルーキー! https://rookie.shonenjump.com/series/pGBIkZlifOI

本作は原作者のクワハリ氏がジャンプルーキー!という新人の登竜門的なところで描いていたマンガをベースに出内テツオ氏がリライトしております。
これがわりと忠実なリライトであり、原本における、「ロックの衝動」がちょっと「ロックの衝動」のままなんですよね。
もうちょっと具体的なことを描くと、毎話の引きの謎、構成の妙(いい意味じゃない方面の妙)。あちこちの意図不明の謎のコマとセリフ、旧式な場面転換、単調なアングル、原本ほどじゃないけど揺らぐ作画、よくわからない設定やエピソード挿入(鷹見くんとのことを最序盤で描いた割にけっこうのちのち関係してきているじゃんとか)。なんつか「ロックの衝動」なところが随所にあります。

でも、1巻クライマックス。主人公のはとっちが誰もいない部室で弾けないギターでandymoriのeverything Is my guitarを歌うシーン。
2巻クライマックス、弾き語り修行で副部長を前にして歌うスピッツのスピカ。

心が震えるんだよ。

これだ!って。シンプルに心が震えている自分がいます。選曲がいちいちジャストなんだよ。切り取ったみたいにはとっちの心情を歌っている。そして聴きたい!はとっちの声で!熱望してる!むしろ熱望しすぎているのかもしれません!

なんとかこのロックの衝動を大きく大きく熱く熱くしてください!そしてなんとかはとっちにeverything Is my guitarやスピカや拝啓、少年よや、生活や、赤橙を歌ってるのを聴かせてほしい!
つまり、まあ、アニメ化してほしいんですかね?(問いてどうする?)

あと2巻の弾き語り修行とか、ずっとメンバー間で揉め事が起こってるわけで、これって『友情・努力・勝利』のジャンプ印ではあるんだよね。切り口こそあれだけど。

https://open.spotify.com/playlist/459e2r1Qt8JLASW8tSd02r?si=b76c1a8de46a48d0

ふつうの軽音部で歌われてる曲を並べたプレイリストです。Apple Musicにもありましたよ。
ぜひ、これを聴きながら読んでください。そしてはとっちがカバーして夢想してください。心が震えますよ。

2024-06-06 11.57.33 ebookjapan.yahoo.co.jp db248aa29a82.jpg

ふつうの軽音部 1 (ジャンプコミックスDIGITAL) - クワハリ, 出内テツオ
ふつうの軽音部 1 (ジャンプコミックスDIGITAL) - クワハリ, 出内テツオ
posted by すけきょう at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする