2025年02月23日

あさってのニュース 北村みなみ (筑摩書房)

あさってのニュース (単行本) [ 北村 みなみ ] - 楽天ブックス
あさってのニュース (単行本) [ 北村 みなみ ] - 楽天ブックス
1回3p〜5pのSF時事ショートマンガ。イラストレーター・アニメーション作家でもある氏によって紡がれております。

かわいらしい絵に合った話も、ちょっとビターすぎる話も、本当にあさってにありそうな話も、あさってどころじゃない先のも、昨日になりかかってるのもある。1回のページ数が少ないのでどこか未来に実際にあった出来事をスナップ写真で切り取ってきたかのようなシャープな手触りもあります。

たとえば、AIが発達した社会。デスクワークは完全に取って代わられて、グラフィックデザイナーだった主人公はAiではデキない仕事をしている。みんなに尊敬される引っ越し業者をしている。

たとえばAIの恋人。いまのに飽きたのでちがう恋人を選んだ。

メタバースの世界でアイドルをやってる。アバターに生殖機能ができ、妊娠してしまったのでクビになる。

完全に人間が設計したスマートシティ。虫も害獣もいないし年中快適な気候。でも、人間は退屈だから街を捨て廃墟化する。

宇宙に舞台を移した壮大なのもある。切り口も多彩のSFショートショート詰め合わせセットです。

「あした」くらいはみることもできるでしょうけど「あさって」の未来はどうかなあと思う。火の鳥の血でも飲んでいれば別だけど。
でも、ひとが考えたり感情を動かしたりすることは変わらないんだなあと思った。

絵がかわいいのにリアル。未来のメカも雄大な風景もひとも動物もかわいいのにリアル。もともとネットに流れてきた絵にひかれて買ってみたのですが、予想以上に絵も話もかわいくてリアルでファンタジーでハード。

『あさってのニュース』北村 みなみ | 筑摩書房 https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480816962/
(OPが読めます)

あさってのニュース (単行本) - 北村 みなみ
あさってのニュース (単行本) - 北村 みなみ
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2025年02月22日

ゆるり愛しのひとり旅 おづまりこ(文藝春秋)

ゆるり愛しのひとり旅/おづまりこ【3000円以上送料無料】 - bookfan 1号店 楽天市場店
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献本
タイトルの通りの旅エッセイコミックです。「ゆるりより道ひとり旅」の続編になるんでしょうかね。前作は関西在住の作者の近辺のひとり旅が多かったですが、今回は遠距離になってますね。続編でスケールアップ!セオリーです。でも「ゆるり」です。

尾道に、札幌に、倉敷など。奈良や神戸もいっておられます。

80ページ以上描き下ろしでオールカラーです。

最大の特徴は「愛」でしょう。好きなことを好きな風にやる!そのためのひとり旅という大前提で、旅前にテーマを決めて、それだけを好きなだけ満喫すると。

たとえば、尾道では「レモン」。札幌では「六花亭」。倉敷では「マスキングテープ」。神戸では「パン」とか。これらに「愛」がつまってます。楽しかった美味しかったおもしろかった、それすなわち愛おしかったと。

寄り道などもありますが、テーマがはっきりしているので、毎回切り口がピシッと固まっており、そのテーマに沿った「ゆるり」されておられる感じ。だから、旅だけど、店だけとか、食事だけとかにグググとフォーカスしていて、作者の絵の世界に溶け込んでいく感じがしていいです。「るるぶ」的には使えないですが、超個人的な愛ある旅になっており、新鮮で楽しいんですよね。

絵がやっぱり唯一無二ですね。かわいくてホッとするイラストレイテッドな絵柄でありつつ、食べ物にかける愛(描写)がすごくてそれがやっぱり見どころではありますね。問答無用で美味そうなんだよね。かと思えばコンビニおにぎりで済ましたりもしてるし。
唯一の登場キャラともいえる作者(他はゲストとかモブですね)がまたいい感じで旅をまわしているんだよね。

また、倉敷だの尾道だの札幌だのいちいちおれも行きたいところばかりってのがねえ。尾道はおれだったらイカフライ食べる旅に出るなあとか。

あと、家に帰って自分のためだけに買ったお土産をあけるシーンってのも他の旅マンガにありそうでないところでいいですね。
その発展形として日帰りで神戸で13個のパンを買ったあと、ひとりで食べる日々なんかもマンガにしていますね。パンを食べ終えるまでが旅ってことなんスね。

第9話 奈良でカフェ旅 その3 | ゆるり より道ひとり旅 https://crea.bunshun.jp/articles/-/52503

読むことがデキます。大量描き下ろしだしそれがまたいいのでおもしろかったらお買い求めされるといいですよ。

ゆるり 愛しのひとり旅 (文春e-book) - おづまりこ
ゆるり 愛しのひとり旅 (文春e-book) - おづまりこ
posted by すけきょう at 11:41| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年02月17日

人間一生図巻  いがらしみきお (双葉社)

人間一生図巻 [ いがらしみきお ] - 楽天ブックス
人間一生図巻 [ いがらしみきお ] - 楽天ブックス

すごい本を読みたがってる皆さん、お待たせいたしました。すごい本ですよ。
1回8ページ読み切り20人。架空の人物が生まれて死ぬまでの一生を描いていくという作品です。
あとがきに全て余すことなく書いてありまして、それ以外に書くことがなくなるのですが、元ネタというか出発点は山田風太郎氏の「人間臨終図巻」だそうです。本作をコミカライズできないかと思っていたところがスタートです。

人間臨終図巻(1)新装版 (徳間文庫) [ 山田風太郎 ] - 楽天ブックス
人間臨終図巻(1)新装版 (徳間文庫) [ 山田風太郎 ] - 楽天ブックス

歴史上の有名人が臨終になった年齢順に並べてある作品です。実は相当売れてる有名本です。おれも文庫と電書で持ってます。

追読人間臨終図巻 芸術家編【電子書籍】[ 山田風太郎 ] - 楽天Kobo電子書籍ストア
追読人間臨終図巻 芸術家編【電子書籍】[ 山田風太郎 ] - 楽天Kobo電子書籍ストア

構想だけあってしばらく置いていたら、すでにコミカライズされていたので断念したそうです。
こちらのほうは人間臨終図巻の「感想文」みたいな感じで1人1pで死に様につっこんだりボケたりしてて人間臨終図巻を読んでいたらおもしろい副読本ではあります。ファンブックって誰のなににファン?って疑問はありますが。楽しく読みませていただきました。

いがらしみきお氏が人間臨終図巻をコミカライズされた場合、どうされるのかなという興味はありますが、人間臨終図巻を起点として描かれた本作はそういうこととは全く別にすごい作品となっております。

世界中の時代も性別も人種も毎回いろいろなひとの命が尽きるまでの顛末を8ページで語っています。
「人間臨終図巻」も各年齢で亡くなった有名人の死の間際を列挙したものになっておりますが、本作も「ひとが生まれ、どういう行動をして、どう死んだか」を1回8ページというテンポで次々とはじまって終わってしているのです。だからショートショートのスピードで毎話大河ドラマが押し寄せてきて、1回の情報量に圧倒されて次の話の前にオーバーヒートになっていまいます。それで頭クラクラになりおなかいっぱいになるんですよ。

ほら、ワタシっていがらしみきおの大ファンじゃないですかあ?(知らんがな)

それぞれの人間の生き様に氏のキャリア全部のエッセンスがまんべんなく散りばめられていて、それこそ「根暗トピア」の最初期の過激な4コマを描いていたころから、「ぼのぼの」「かむろば村へ」などの有名作、「Sink」や「ガンジョリ」なんかのホラー、老人老後を描いた「のぼるくんたち」なんかもそうかな。もちろんエッセイなどにも顕著に現れてます。氏の思想、死生観といったものや、芸風作風も色濃く反映されております。それこそいがらし氏の一生を煮染めて抽出したような濃さに頭がくらくらしてきます。

第1回「鈴木広美 0歳」 / 人間一生図巻 - いがらしみきお | webアクション https://comic-action.com/episode/13933686331793023816

3回分まで読むことができます。この最初の3作がわりに全体のトーンを物語っているような気がします。
読んでいただくのが手っ取り早いし、この3作のネタバラシ的な内容紹介になりますので一旦上記リンクから3作に目を通していただけるとサイワイです。

鈴木広美は、生まれた瞬間に死んでいた。死産だったわけです。彼女から話がはじまります。

2話、ディウグは300万年前の人間です。彼は言葉を発明します。「誰かに見られているような気がした」という誰かが言葉を伝えるのです。この感じは「I【アイ】」や「誰でもないところからの眺め」などを連想しますね。おお、この感じ!いがらし風の神描写!って感動しました。

3話、これが全作品でもとりわけ好きです。ホラーとギャグと感動ネタって本当紙一重なんですね。それを十分理解して紙一重を描き分けてるのがやはりすばらしいです。

絵がいいんですよね。鉛筆ラフ画に水墨で色合いをつけてるような感じがおとぎ話的にもなるしどことなくふわっとした読み感(そんな言葉ないですね)になる。いつものカチっとした画だとちょっと生々しく感じそうなのを避けている。

多様性なんて言葉がありますが、その真の意味って本作になる。彼も人間、彼女も人間。そして全て等しく死は訪れる。そして等しく、なにかは残る。「多様性」って言葉にそれ以上もそれ以下もないんだなと。

思えば、死ってのは人類が発生してからずっと「ドラマ」として最大のものとして存在するんだなとしみじみと思う。死んで終わる。つまり誰もが「終わる」ことはできるのだなあと。

なるべく長生きしてこういうすごいものに接し続けたいなという凡庸な〆で。

人間一生図巻 - いがらしみきお
人間一生図巻 - いがらしみきお
posted by すけきょう at 21:59| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年02月10日

エルフとバイクと帝国地理調査員と 磯本つよし (少年画報社)

エルフとバイクと帝国地理調査員と 1 (YKコミックス) [ 磯本 つよし ] - 楽天ブックス
エルフとバイクと帝国地理調査員と 1 (YKコミックス) [ 磯本 つよし ] - 楽天ブックス
エルフとバイクと帝国地理調査員と 2 (YKコミックス) [ 磯本 つよし ] - 楽天ブックス
エルフとバイクと帝国地理調査員と 2 (YKコミックス) [ 磯本 つよし ] - 楽天ブックス

マンガ読めてない問題。
もうゲームは30年もので寝かせてるのが多くて、小説や本もそれくらいのがあるかな。CDやレコード(プレイヤーが本の山に埋まってるんや)もあるけど、マンガは!と思ってたけど、最近は全く駄目です。2年間のモラトリアム期間を持ってしても、積みが解消されるかと思ったけど全くダメです。むしろ倍増倍増です。
こうなると、なにがいやっておもしろいマンガを適切なタイミングでインプットすることができないんですよね。こんな僻地の感想場でも、「旬」を大事にしたいんだよね。本作もまたそのひとつなのです。

だいぶ前に買ったはいいけど読めてなくて1巻を読んだらすごくおもしろくて、取り急ぎ2巻を買ったらこれまたおもしろくて、感動してたら2巻巻末に3巻は2025年の春に出るとのアナウンス。
だから「旬」なのです。タイミングが合いました。おもしろいのでいまのうちに2冊どうですか?という主旨の文章となります。

タイトル通りなんですよね。中世ファンタジーな世界観で、モンスターが跳梁跋扈し、魔法がある世界に、バイク乗りのエルフとジープ乗りの相棒(彼は何者だ?)と2人で帝国地理調査員として各地にある道標を探す冒険活劇です。この上ないシンプルで明確なタイトルで、その通りの内容です。

バイクアクション、戦闘、魔法、ドタバタ、そして表紙のエルフさんのおっぱいも出る(不可抗力で出るときも多々あります。だいたいは自発的)。
これらが毎回「ちゃんと」あって、1話完結で次回につづく。

律儀、って言葉を最初に思い浮かびました。こんなに毎回律儀に幕の内スタミナ弁当大盛りをきれいにパッケージして「ああ今回もおもしろかった」と大満足する。しかも、熟練の腕を持つシェフがこだわり食材を見事に調理だわ。古代遺跡も、ファンタジー設定描写も、モンスターも、バイクシーンも、キャラたちも、おっぱいも。チリバツのグーです。
1回24p完璧に満足させる絶対的な娯楽仕様。掲載ペースみると隔月連載みたいですね。さもありなん。それくらい精緻に丁寧になんの手抜きもなく完璧に作り上げられています。それぞれに工夫に工夫を凝らしてある。ページコストが高いんですよ。それはパラパラと眺めてもすぐにわかりますよ。

エロくて興奮も、アクションに興奮もある。ただ、それにのみ100%チューンされているところにはちょいと及ばない。そんな感じ。幕の内な感じ。
作者はこれらが「好き」なのでしょうしね。バイクとメガネとガールが。それが毎話100%伝わってきますし、だからこそ生き生きと動いて活躍しているのだと思います。

2巻ではさらにアクションもバイクもキャラもおっぱいも増量になってきて、お値段据え置きって感じです。やっぱりおれはこういう誠実に丁寧におもしろさを提供しているマンガがとても大事だし愛おしいし、「ここにおもしろいマンガがある!」と声高めにいいたいのです。そうじゃない世の中はいやです。と、そんな大げさなことじゃなくても、雑誌に載ってて「今回もおもしろかった」という軽さもあるしね。ほんといいマンガ。出会えてよかった。

買いましょう、読みましょう。楽しみましょう。


エデン コミック 全2巻セット - NETFLIX, 磯本つよし
エデン コミック 全2巻セット - NETFLIX, 磯本つよし

エデン
Netflixオリジナルのアニメシリーズ全4話を、コミカライズされたもの。磯本つよし氏が全2巻にして手掛けております。
これがまた、忠実にコミカライズされており、マンガならではのアレンジが施されており、なんともいえない「磯本節(潮の香り?)」がしていいです。CGの洋風な動かしすぎのアニメとちがい、そりゃ、マンガは静止画だから当たり前ですが、それでもテンポやノリがちがっていい意味で相互相乗効果があると思います。おれはコミックを先にみてからアニメの方をみましたが、新鮮でした。

そういうことだから(どういうことだから?)、ネトフリは今度はZ指定にして(おっぱいでるからね)エルフと〜をアニメ化しましょう。そうしましょう。2026年配信しましょう。最低でもエデンと同等のクオリティで。

エルフとバイクと帝国地理調査員と コミック 1-2巻セット (少年画報社) - 磯本つよし
エルフとバイクと帝国地理調査員と コミック 1-2巻セット (少年画報社) - 磯本つよし
posted by すけきょう at 17:38| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年02月09日

物の怪オンパレード 九日ゆう (小学館)

物の怪オンパレード(1) (サンデーうぇぶりコミックス) [ 九日 ゆう ] - 楽天ブックス
物の怪オンパレード(1) (サンデーうぇぶりコミックス) [ 九日 ゆう ] - 楽天ブックス
献本です。
幼いときから、たくさんの物の怪がみえる少年。そのためにみんなに嘘つき呼ばわりされたりいじめられたりしてる。だから、こんな閉塞的な田舎から出て東京に行く!って思って東京の高校に推薦入学の願書も出して通ったけど、見えることで懐いてくれる物の怪たちには言いにくい。でも知られてしまった。学校の内申が悪くなったら東京に行けなくなるんじゃないか?って失敗するようにいたずらをしはじめる。そのうちにそれがちょっと一線を超えて少年はブチギレる。「おまえらと会いたくないから東京に行くんだ!」って言ってしまう。その日から物の怪は全員姿を消す。そのまま卒業間近。いつも少年をいじめていた不良が別れる前にもう1回ぶん殴るってときに妖怪は姿を現して不良を追っ払う。そして仲直り。感動。

https://www.sunday-webry.com/episode/2550912964542290095

1話のあらすじの途中までです。表紙のカラーも見ることができますね。単行本じゃモノクロですし。

上記で3話まですっかり読むことができるのでネタバレもなにもないんだけど、少年が上京するので物の怪たちもいっしょに東京に行くのですね。全員引っ越し。

これにはかなり意表をつかれた。
「よし、おれは田舎に残っておまえらと過ごすよ」エンドになるハートフル短編読み切りの定番ストーリーじゃないですか。しかしそうならなかった。
そうなると、この意表をついた次の展開がどうなるか?って気になるじゃないですか。

はたして2話からが本番なんですよね。
東京にはひとがたくさんいる。同じくらい物の怪もいる。そのなかにあり、仲間の物の怪にたよりつつも少年が成長していくという感じなんでしょうかね。

20人の物の怪とともに育ち、慕われたり、ときに守られている。少年はひとにも物の怪にも分け隔てなく優しい。しかも、それが「仲間」だけじゃなくて、初めて会うひとにも物の怪にも分け隔てない。かつて田舎の同級生に物の怪が見えるばかりにハブにされたりいじめられたりしているし、対人恐怖症の気は多々あるけども、それでも困っていたら勇気を振り絞って助ける。デキたナイスボーイです。
20体の少年側の物の怪も、東京の物の怪もキャラが立っていて性格までうかがえるし、完全に見分けがつく。それでいてキュート。少年以外には見ることができない物の怪をクッキリハッキリ見ることができるってなんだか改めておもしろいです。

描画もすごい。毎回それらの妖怪をキッチリ描き込んでいる。まあ手間だろうに、毎回レギュラー物の怪は全員描き込んであるんじゃないかな。しかも複数コマで。すごい。背景もモブも丁寧に描いてある。

2025-02-09 09.01.28 www.sunday-webry.com 5c0ef73f1788.jpg
こういうレベルで毎回小さいコマにまで物の怪を丁寧に描き込んであります。すごいです。

彼にとって物の怪という存在はなんだろうか?って根源的な謎もありますが、アパート一室に、ガシャドクロから座敷わらし(とそれぞれ明記されてはいないですけどね)やらなんやらかんやらが20人近くいて、孤独を感じるものなのか?って謎はありますが、まあ、少年はいろいろなことに孤独を感じて親に電話をかけたりもする。そりゃあ、東京もどこに行くにもなにをするのもヒトを見ることになりますもんね。ヒトが多いから孤独じゃないだろうやって理屈と同じことなんでしょうか。

このワチャワチャ妖怪のいるドタバタゆかいコメディの体裁の奥にひとと(あと物の怪とも)の関わり方ってテーマが底にひたひたと流れている作りになっている。

物の怪たちは妖怪にちょっと詳しいひとならすらすらと名前が出てきそうな有名な、もっと言い方を変えたら定番な方々ばかりです。少年もわかりやすい純朴な田舎の子。
一方、東京の物の怪は見たことない、逆を言うと作者オリジナル?って感じのが多い。
一方で、少年がいた田舎は地名もあやふやで「そこそこの田舎」ってのが分かる程度の描写だったけど、東京にきたら浅草寺だの実在する名前になっていく。東京の物の怪のほうが出自由来がしっかりしている(今のところ)のでどこかリアルで新しい感じ。この少年や物の怪の定番でテンプレな感じとのギャップがいいです。

それは少年の立場でもあるのね。前記の通り、どことなくファンタジーな世界に住んでいる少年が東京という「リアル」の洗礼を受けて、どう変わっていくかとかね。

と、これだけ「受け」が広くて、1巻4話収録のどれもこれもバラエティ・バリエーションに富んでハイクオリティできっちり描かれており、今後、どういう展開でもありえそうだなとは思われるチカラは感じられる。だが、その展開からの、「どうなっていくの?」ってのがなにか提示されているといいんじゃないかなとは思いました。
たとえば、「鬼滅の刃」なら鬼舞辻無惨を退治すること。「古見さんは、コミュ症です。」なら古見さんが友達100人できること。「どろろ」なら呪いで奪われた身体のパーツを取り戻すために妖怪と戦う等の「どうなっていく」かみたいなもの。

主人公の成長を描くっていえばそれだけど、もっとわかりやすくて甘い「芯」というか。ミッションクリアのためのミッションというかね。
それはテキトーなものかもしれない。前記の例で言えば鬼滅と古見さんは目的を達成したけど、どろろは打ち切りだったから身体のパーツを全部取り戻さないまま話がおわってるし。テキトーなもんです。

でも、何らかの指針みたいなものがないと要素やおかずばかり増えても、弁当箱に満漢全席が詰め込まれていく状態でどこかでなにかがあふれていって「もったいない」かなあと。本作は丁寧に丁寧に魂を込めて紡がれているから余計にそう思ってしまいます。
たぶん、バトルマンガにする気はないんだろうし、誰かが死ぬとか消える(物の怪とか)とかシリアスすぎる展開にならないだろうし、「指針っていわれましても」ってことなのかなあっては思うけどさ。

あ、何度か読み返して気がつきました。
本作のテーマは「高校デビュー」なのかなと。新しい自分に生まれ変わるって意味での高校デビュー。
高校に入学し、田舎の知り合いと別れ、ひとりで暮らし、東京に住む。いろいろなデビューがありますね。それを友達で仲間の妖怪とワチャワチャ賑やかにやっていく。そして新しいなにかや関係が生まれていく。そういう話ではありますかね。おれが勘ぐりすぎただけかもしれません。その可能性大。

そういった意味じゃ高校編がスタートした4話からが真の本番なのかな。

2巻も期待してます。

物の怪オンパレード(1) (サンデーうぇぶりコミックス) - 九日ゆう
物の怪オンパレード(1) (サンデーうぇぶりコミックス) - 九日ゆう
posted by すけきょう at 09:15| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする