2025年03月22日

絶対死なないステラ姫 光永康則 大高稲(講談社)

絶対死なないステラ姫(2) (シリウスKC) [ 光永 康則 ] - 楽天ブックス
絶対死なないステラ姫(2) (シリウスKC) [ 光永 康則 ] - 楽天ブックス

最新2巻まで。

異世界転生モノは基本は出オチではある。

主人公が死んだ→転生した→〇〇になった→□□というルールのもと異世界に生きる

この〇〇と□□のバリエーションのちがいだけといってもいいかもしれない。

そしてそのバリエーションがちがえども連載がつづくにしたがって一定のパターンに収束し展開していく。
元も子もないこというと、おおよそあまたある全ての長編物語というものはそうやって展開していくのだけれども、異世界は〇〇と□□のパターンがちがうけど、あとの展開のバリエーションは少ない方とは思う。もちろんおれの観察範囲内でのこと。
ツカミの〇〇と□□とそのあとのバリエーションで最終的に何人かの素敵なキャラを読者に認識してもらえばわりと完成。上手く転がっていくとアニメ化おめでとうと。
そんなかんたんではないこともわかるのですが、話数が進むと、@主人公が強くなり、A敵が強くなり、B仲間が増えるって3つの要素は必ずあるし、その仲間にかなり高い確率で可愛い女性はいらっしゃるわけです。ほら、いくらかこのパターンに則った話は思いついたでしょ?
ヤンキー喧嘩マンガでもラブコメでも退魔マンガでも似たようなもんだけどさ。

なにがいいたいのかというと、このマンガもこのパターンに則っているし大きく逸脱していないのに、なぜ他よりおもしろいのだろう?って謎があると。

本作。王様が死んだ。生前の遺言でひとり娘のステラ姫が跡をとり王になれと残す。後妻の連れ子姉弟はそんなことはさせまいと、姫の暗殺を試みるも、なぜかことごとく失敗する。

第1話 絶対転生しない@
https://comic-days.com/episode/2550912964546522818

1話の前半までの無料分です。同じく無料のAをそのまま読んでいただくとネタバラシみたいなことになっております。
目を通しておいてください。1話は77Pもありますねえ。

読みましたね?ネタバラシします。

今回転生した先は姫の寄生虫だったのですね。でもいくつかの特殊能力をもったスーパー寄生虫。
腸内に巣食って姫様の排泄物を食べて生きていて、姫様を毒殺しようとしたら毒物を自ら飲み込んで排泄してしまう。
刺客が現れ物理的に攻撃しようとしたら体外に出て(どこから?わかるだろ?)、対処するわけだ。
1巻の終わりでは、テロ組織を雇い火を点けて襲いかかる。2巻ではそのつづきのラスボスバトルと。

もういっこ異世界転生モノのお約束があったな。主人公が強いってこと。異世界に転生して「最初から」強い主人公の話を5作品挙げろっていわれたらわりかしかんたんでしょ?というか逆が難問でしょ?
果たして本作もスーパー寄生虫だからチート級の能力を持っている。

さて、強い主人公の物語をおもしろくするのに必要なことってなんでしょう?
いくつかの答えはあると思いますが、定番は、主人公の行動に制約をかけることです。そして絶えずピンチを用意すると。2巻はそれです。
これがでたらめに上手いのが光永作品なのですね。謎が解けた。
物語を作るのならこれをお手本にしろと強くいいたくなるくらい物語が強いです。

物語が強い?

そうです。
以下ネタバレ丸出しの解説書きます。ここまで読んで面白そうと思ったら買われるといいと思います。
あ、その前に。
本作光永氏は原作です。そして作画のほうにも言及を。
光永氏の作画にはないシズル感があります。ウエッティな人物描画というか。光永氏の絵ってさっぱりドライなタイプですもんね。血描写だけウエッティですが。
まー、端的に、ステラ姫が可愛いね。これは重要なことですね。
自分が謀略によって絶えず殺されそうなことを知らない。そして知ってからでもその純粋な心のステラ姫は犯人である彼らを殺さないようにいうのです。そういう姫をすばらしく可憐に描いておられます。
2巻では姫のデフォルメ絵がふんだんにあり、それがまたかわいい。ここらへんは光永氏の絵からは得られないものですね。ありがたいありがたい。
もちろん光永原作であるからハードなアクションシーンや、グロテスクなシーンもてんこ盛りですがそこらへんもバッチリです。シンプルに言うとサイコーってことです。

で、物語が強いってことです。

異世界転生のテンプレに沿ってます。上記にあったことにあてはめます。

死んだ→転生した→寄生虫になった→彼の能力で彼も宿主も無敵であるが宿主(ステラ姫)の意思に従って嫌がることをしないというルールのもと異世界に生きる

まずこれにあてはめました。それから展開しました。

宿主(以下姫)は、跡目争いに巻き込まれてます。暗殺しようと次から次へとトラブルが舞い込みます。真犯人である義姉弟を倒さない限りトラブルはい終わらない。(ひょっとしてその後もつづく?)
これはつまり、姫が城から出なくていいということになります。トラブルはずっと城内にいながらにつづくからです。

荒唐無稽とリアリティのバランスですね。姫が外界に大冒険ってのは、城内の敵を全滅させるくらい(この話はコレで終わるはず)荒唐無稽でありえないってことになるんですよね。

謀略戦というのも城内という狭いステージには向いている。それは寄生虫の特性や戦い方にも合っている。
それでいて、姫の心優しさが枷になっている。真犯人は姉弟ってわかっているのに殺しはまかりならんということでさらなるピンチを巻き起こしたりする。
姫の身体をコントロールすることができるのだから、勝手に動かせばいいんだけど、ストレスにより体調不良になると寄生虫も文字通りの死活問題になる。
だから主人公は姫様の意向に従い慎重に大胆に行動しなくてはならなくなる。
2巻の白眉であるエクソシスト(寄生虫入り)との戦いがまたすごい。同名の有名映画のパロディになってる。しかも見張ってる人が多いので周りに戦いをバレないように行わなければならないって限定戦なんですね。
そして宿主同士の戦いの優劣がまた設定に立ち戻るという。設定が隅々まで活かされてる。
なおかつそれが次の展開への布石になる。
完璧です。
異世界転生してなんでも使えるスマホを手にしたりイオンでなんでも通販でもいいですが、「異世界転生」「無敵」ってカードの最低限の荒唐無稽の他には純粋な話のおもしろさとキャラの魅力が出ないと、せっかくの異世界転生が台無しになるんですね。

光永氏のもうひとつの異世界転生モノである「時間停止勇者」もどうかしているおもしろさを持続したままつづいております。現在18巻。

時間停止勇者(1)光永 康則 (講談社): ポトチャリコミック http://sukekyo.seesaa.net/article/473686598.html

だから、ステラ姫が長期化してもずっとおもしろいことはわかります。だから、これを読んだあなたは勝ち確のマンガを2冊買えばずっと楽しいわけです。エロいの絶許マンで時間停止勇者はムリーって方も本作は大丈夫よ。まあグロはあるけど。
(でも、エロってことだとこっちのほうが上級者向けでいろいろ内在はしてるけどな)

絶対死なないステラ姫(1) (シリウスコミックス) - 光永康則, 大高稲
絶対死なないステラ姫(1) (シリウスコミックス) - 光永康則, 大高稲
posted by すけきょう sukekyo at 13:32| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする