成年コミックだから。
・にったじゅん氏の最新刊です。なんだかまたしてもすごいことになられています。深化しております。
・三和出版においての童貞シリーズにおいて、ブレイクされたにった氏は、基本、その世界を共通されておられます。それは、いくつかの作品が1回読み切りではありますがキャラを同じに据えたゆるやかなシリーズと化して、つながっていることからも伺えます。たとえば、本作においては、「Happy Go Lucky」のシリーズ3作目からはじまります。
・また、「夏体験物語」などはそれで1冊編集版がでているほどです。
・その世界の1番は男女の性的格差ですね。圧倒的に女性が優位に立っております。それはタイトルの童貞のみならず、すべてにわたってそうです。全男性は全女性にセックスから起因しすべてに対して屈服しております。
・女性がのぞむままに男性は性的奉仕をするし、気が向いたり、運がよかったり、ホレられていたりする男子は童貞を卒業させてもらえるわけです。
・でも、非童貞であっても状況はたいして変わらないのです。気が向いたときに呼び出されるという図式。ま、そこのところはくわしく描かれているわけではないので想像によるところが多いですが。
・でもってそういう世界ですが、前作にあたる「県立性指導センター」ではその格差が問題になったので、政府が、ボランティアの人妻をつのり性の指導をし、男女格差を是正するという名目のモト、人妻が童貞を食べまくるという世界が繰り広げられていました。
・本作はさらにそれをふまえたのかどうかはわかりませんが、それ以降の世界を描いております。
・女性にとってセックスがアタリマエになりすぎたので一定の秩序が取り戻っている世界での恋愛が本作でしょうか。とくに純愛を描いているのが印象的な作品が多いです。
・これまでも純愛はありました。実はにったじゅん作品はそういう世界でありながらも、純愛を描いているものが多いのですね。今、手元にある何作かを確認したらそうだったことを発見したくらいです。女性側からの逆陵辱ってのは少ないのです。男は同意のもと屈服し女性に隷属するのです。
「童貞遊戯」でのトラック1は前述のとおり「Happy Go Lucky」シリーズの3作目です。これがまたシリーズ通して純愛な話ですよ。
・1作目でエロ本を買おうとして入った店が同級生の家が経営している店で同級生が店番している。そして、オススメのエロ本をみていて勃起してしまったので、「あたしの部屋で休んでいかない」となってハッスルタイムがスタートですよ。
・それが3作目では、1作目の彼が6年ぶりにその店に訪れて、「どうしてもキミのことが忘れられなかった」って告るって話です。
「茜のらぶ☆ほ〜る」シリーズでは、アダルトグッズにつとめる女性社員がラブホールのモニタをお願いし、自分から型をとった新商品と、自分のを比較してもらうということから、店員とモニターという間から2人とも恋に落ちていきます。
「僕の家庭教師沙緒里先生」でもそうです。志望校に落ちた彼が第二志望の入試までに度胸をつけさせることが必要と踏んだ沙緒里先生。そのためにはセックスが1番よということで、知り合いの女性をとりあえず5人紹介するからセックスしなさいというところ、先生がいいといってはじまる純愛のドラマです。
・これらの純愛は、「にったじゅんワールド」をふまえて展開してるのがおもしろいんですよね。
「Happy〜」の女の子は6年、ほかの女性とセックスしない主人公にたいして、自分との初体験がダメだったからかと気にします。女性のほうに「彼女のために貞操を守っていた」という感覚がないのよ。
・つまり、「彼女とだけしたい」「好きなヒトとだけしたい」という感情や思考は基本、男のほうにあるんですね。
「茜のらぶ☆ほ〜る」の茜さんは、やろうと思えばいつでもできたけど、オナニーにハマったので高校卒業まで処女。だけど、入社したときに「セックス研修」というのがあり、1ヶ月セックス漬けにされていたそうです。つまり、「あえてやらない」というスタンスを取らない限り処女を捨てるのやセックスをすることは超カンタンな世の中ということですね。食べ物でたとえると、ベジタリアンを主義として貫くというのに似てますかね。
「沙緒里先生」シリーズではさらに複雑な関係がありまして、シリーズに登場する飯田さんは、あちこちでズコバコやってますクソビッチですが、彼とはゴムをつけて普通にします。そしてそれが最高に気持ちいいらしいのです。まあ、彼の家に泊まりにいく前は、気分が乗っていて、10発中だしを決めるそうですが。
・変則的な愛ということでは、すごいセックスのうまいプレイボーイにごほうびでやってもらうために、モテないクンのところにダッチワイフとして派遣される女性の「TRADE」。
・お互いに相性が合うってことでやりまくってるだけのカップル「藤村サセコさん」とか
ありますが、これらも愛のひとつのカタチです。
・ということで、初期の作品から世界は流動的に動いていますし、その世界においてキャラたちの思考も変化はありますが、愛は尊いってところに落ち着いているのがすごいなあと思うのです。そのメッセージは強烈ではあります。
・ただ、非常に大きな問題があるのです。
>
オマンコってね…
チンポ遊びが激しい
悪いオマンコだと
黒ずんで肥大して
醜くなっちゃうのよ
>
・これをビジュアル化してるのですよ。黒ずんで肥大してるのですよ。
・しかも、そういうのをいろいろなパターンでみせるわけです。
・ファンタジーな「にったワールド」において、そこがえらい地に足着いたリアルなワケですよ。まあ、実にすごくスジが通っているわけでもありますが、いっぽうでそここそファンタジー化すべきところだろとも思うし、ほかの90%以上のエロマンガはファンタジーにしてるところだろ。
・そりゃあ、リアルでマンガのようにバシバシといたしたらそうなってもおかしくないわなあ。でも、「そうなるなよ!」ってツッコミはいれたいところですよ。
・これは女性に神秘やファンタジーを持ちたいと願っている層、すなわち「童貞(および童貞気質)」にとってどうなのよ?と思ったりしました。
・いやまあもうぶっちゃけるとものすごいイキオイでエロ度は低下していってますよ。
・三和出版での最初の作品集「奪!童貞」がすでにしてピークだったんじゃないかとすら思いますが、そこいらは個人差があるので詳しくは追求しません。
・反面、掘り起こされたり、ガッチリとハマる層も登場するんじゃないかと思ったりしました。なんつーの、マニアアピールというか。
・にった氏は、わりに自身内でブームや流れがあるみたいで、今回は作品内のコトバでいうと「汚マンコ」ブームなのかなあと思ったりもしました。「県立〜」では熟女ブームとか。「素人童貞」の森先輩とか同じく「県立〜」での鯖井春さんのようなマッチョブームとか。
・そして「次」につながるのではないかという問題作が、本書の最後に収録されています。「Dual」です。
・ついに禁断の「ふたなり」に手を染めたのです。
「チンコの生えた
女同士の
セックスって
最高!
もう男なんて
いらないね」
これが最後のセリフです。さあ、次のにっったじゅん作品ではどうなっているのでしょう?すごく楽しみです。
・そうすごく楽しみなのです。ただ、この楽しみは、駕籠真太郎氏とか、氏賀Y太氏とかの新刊を楽しみにするのとニュアンスが似ていますね。
・その駕籠真太郎氏が「輝け!大東亜共栄圏」というすごく狂った戦史マンガにおいて、「おれにはこれが史実」とおっしゃってました。それと同程度かそれ以上の情熱がにったワールドから感じられます。そして、その行く末を見届けたい。本作を読んでこれまで以上にその思いが強くなりました。。
・さしあたって持ってない「夏体験物語」を買おうとは思いました。
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