・関西の人々のドラマを読み切りで描いております。
・3巻では3話収録。
・他人によくして「正義のヒーロー」を気取りたいがために妹のバイト代をむしる兄との確執を描いた「女忍者の夏」
・ワンマン社長が倒れて寝たきり&喋られなくなる「テレパシー」
・いきつけのキャバクラの嬢が客に一目惚れしたのを調査するおっさん探偵の「あいの探偵」
・これらのどれもずしりとした読みごたえ。
・とくに「テレパシー」がすごかったなあ。これを読んで「中春こまわり君/山上たつひこ」を連想した。どっちも「老い」を描いているなと。
・小さな麩工場の社長。社員も身内もみんな家来と思っているような男が倒れて寝たきりで喋られなくなった、動けなくなった瞬間、まわりから仕返しされるとおびえ出す。
・だから、嘘でもいいから下手に出ろと小学生の孫からアドバイスをもらい実行するわけですよ。すると、みんなが手のひらを返したようにやさしくなるわけだよ。ただ、1番虐待していた妻だけはどうしていいのかわからないんだよね。
・この感じよ。つづく「あいの探偵」もそうとうすごかったけど、こうやって「老い」を目の当たりにするマンガが流通しはじめているなということに世の中の強い変化を感じるのです。
・そりゃあ、たとえば、「のぼるくんたち/いがらしみきお」なんてのもかなり昔から老いをテーマにしてきたのですが、ここしばらく、個人的にそういうのを目にする機会が増えております。くわえて、「老人の世界」を描くというより、自分らの世界に老いが忍び込んでくる感じがすごく「イマドキ」って感じがする。
・そいで、家族の絆ってのが「凄味」の正体になるんかな。
・家族だけあって絆だけあってカンタンに切れないために、喜怒哀楽がうずまくわけですよ、波風が立つわけです。
・それらが際だった3巻だったな。
・1巻が最高で、2巻がイマイチに感じていたので、あまり期待しなかった分、よけいにぶっ飛んだね。
・2巻では、1巻にあったユーモアな部分が控え目でビターな味わいだったのがおれにはちょっとモノ足りなかったんだ。
・3巻はその2巻でのビター路線に1巻でのユーモアと、前記の「凄味」を加えたという、よくあるけど実は滅多にない常套句であるところの「さらにおいしくなりました」を実現させた世にも珍しい3巻だったのですよ。どれくらい珍しいかというと、読後すぐにポトチャリコミッックを書かせるくらい。最近の書かない具合でいうとスゴイことですよこれは。
オススメ
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