・祝1巻でしょうか。マンガ家さんとお呼びするにはあまりにもいろいろと活躍されておられ、正直なところまったく追いきれてませんが、高校生のときに読んだ「なすのちゃわんやき」はたいそうおもしろかったし、そのときの横のつながりというか、トモダチ関連のエッセイコミックや、「ウゴウゴルーガ」などのアニメ、さらには同人誌で、番組内連載の「ちなつのシュート」をコミック化したのを通販で買ったりと、ゆるくファンでいます。
・男子禁制の四畳半木造アパート「なのはな荘」に住む、マンガ家のタマゴさんを主人公に、「なのはなフラワーズ」の住人の面々がおりなす、ほのぼのコメディマンガ。
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私の描きたいマンガの
すべてがここにつまっています。
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・志村貴子氏のオビコメントがすごく的を射てます。
・ゆるいながらも、似たような展開は1個もなく、いい具合に泣かせにきてますが、そこに破綻はないのです。そこいらのサジ加減がすごすぎます。
・こういうの、よりドラマチックを目指したり、意図的なほのぼのを目指しすぎたうえの、強制的な統一感をかもす作家さんは多いです。それが正解や失敗ということではありませんが、本作での、ムリのない、ほのぼのや、泣かせは、やはりベテランといいますか、プロの「ユルユル」を感じさせました。
・二話。住人の女医さんのモト彼が結婚する話。彼女の復讐劇などは、スーッと通り過ぎるようで、そこまでに丁寧なシカケを巻き散らかしており、スーッと感動させられるのです。
・各キャラもしっかりの記憶に残る作りこみをしてありながらも、基本ラインの物語を破綻させたり壊したりするような「デストロイ」要因はいなく、大人の対応です。日本びいきのガイジンさんでいつもメイド服を着て、なおかつメイド喫茶に勤めているモーリーなんかはそうとう「立った」キャラなんですが、けして邪魔はしないんですよね。
・そういったみんなかわいらしくも大人でやさしくていいヒトばかりなんですよね。あまりトゲトゲした感情を持った方がいない、それこそタイトルどおりの、春の菜の花のようなやさしさ。
・でも、「辛し和え」で、ちょっとピリっとせつなくなるところもあるかも。
・前半からの仕込みである、担当編集に恋する主人公の話が1巻のクライマックスに用意してありますよ。その前のクリスマスでもそうとうグッとくるのですが。
(んまあ辛し和えって書いたらネタバレ? でもそれでおもしろさは微塵も減らないので安心めされい)
・こういうほのぼのショートの見本にしてほしいくらい、随所にいろいろなワザがあります。これをトレースして書き写すだけでも、マンガ家志望には参考になると思うよ。抜くところ、描くところ、ユルめるところ、キツくするところの、サジ加減が絶妙すぎる。しかも、1巻1冊としての構成のコントロールがまたすばらしい。前記の志村氏が嫉妬する感じがよくわかります。
・ひっじょーーーーーによくできた1巻です。1巻で終わってもよくできていると思うくらいですが、すごくうれしいことにまだつづく! 青木俊直マンガの2巻を読むことができる。1巻終わりの「to be continued」の文字がこれほどうれしいと思ったことはないね。
オススメ
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