2009年05月25日

「きみといると」1巻 かがみふみを(双葉社)

・この違和感はなんだろうと読みながら思ったのです。

・腹がユルイ男子高校生。トイレを借りるためにやむなく喫茶店に入る。とるものもとりあえずトイレに入ろうとすると、アルバイト店員の女子高生が入っていた。
・という、わりにサイアクのボーイミーツガールではじまったうれしはずかしのピュアラブストーリーです。すごくピュア。

・と、これらはかがみふみを氏の「いつもの」なんです。「ちまちま」でも「まちまち」でも「アシスタント!!」でも、ピュアなボーイ&ガールが描かれていると思います。かつてあったおのれのミーツ時のドキドキを思い出させてくれるような。

・本作もまったくそれです。じわじわと惹かれあうふたり。名前を知るだけで飛び跳ねたり、メールの返事を書くだけで徹夜したりね。甘酸っぱいことノーリミットです。

・これまでの絵柄と変わったというのはあると思います。マイナーチェンジといいますか、「アシスタント!!」などの4コマを経たためなのか、線が整理され、全体的スッキリしたイメージがあります。それは手抜きとかそういうんじゃなくて、より明確になったというかね。
・あと、女性キャラがちょっと下ぶくれなりんかくになったことも影響してるのかしら。
参照: [たんしおのホームページ](ここの時間軸におけるりんかくの変遷をごらんいただけるとわかると思います)

・でも、それだけじゃないと思うんだよな。以下、すごく推測です。

・これまでの作品、もちろんすべてを読んだワケではないのですが、以前「加賀美ふみを」名義で成年コミックを書いていたときから読んでいたものとして、ある共通する「感じ」がありました。

・それは運動会でフォークダンスの練習のときに握った女子の手の汗ばんだ感触。すごく熱を持った湿り気。

・成年コミックのベテランや売れている方はだいたいこういうどこかしらの「リアル」を描写するのに長けておられると思うのですが、かがみ氏の場合は、「それ」だったのですね。擬音でいうと「じっとり」でしょうか。
・当然、悪いものではないのです。それがかがみ氏の味わいではありますし強力な武器と思います。

・ただ、それがトゥーマッチに感じるヒトもいたんじゃないかなとは思ってました。暑苦しいとか。不要のエロさというか。

「えんまちゃん」という作品がありました。小学生女子の退魔モノです。すごく健全なものでした。でもすごく「じっとり」を感じました。それはそれで変わっててよかったのですが、なんていうか、「悪い」と思いました。誰にってことではないんですが。

・本作「じっとり」が相当払拭されているように思いました。
・そういった点も含めて非常にさっぱりさわやかなボーイミーツガールに仕上がっております。無駄な脂分カットでよりヘルシーといいますか(そう書くと以前が悪かったように思えますね。だからそんなことはないのです)。

・実はちょっとしたお色気シーンがあります。それは主に男子高校生の妄想といったカタチで現れますが、そこに「じっとり」は微塵も感じられませんでした。いやまあ感じようと思えばってのはありますが。それはおれの能力が長けているせいでしょう。

・以前の成年コミックもそうだし、わりに一貫して、幼い女性を描くのに長けていた作者ですが、その視点というか視線が変化しているように思えるんですよね。
・相変わらず、「愛おしい」という気持ちはすごく感じられますが、それを男子高校生と同じ目線ではなく、本作でいうと、喫茶店のマスターのソレにシフトしておられるような気がしたんですよね。保護者的というか。2人を暖かく見守るという視点。

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そんなわけで二人は僕の子どもみたいだなと思ったりします。
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この「あとがき」がすごくピシッと決まっておられるのですよ。今回はまさにそれ。2人とも子どもで、大事に大事に愛を育んでいるところを描いているというか。

「よこしま」抜きで「甘酸っぱい」を楽しむことができる感じが、これまでとちがうなと。

・ポイントはその理由です。さらに推測になりますが、作者の作風の変化は心境の変化で、心境の変化は普通に加齢じゃないかなと思ったりしたのでした。あるいは父の立場になられたか。ホントここいらはわかりませんがね。

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posted by すけきょう at 18:50| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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