2009年06月15日

「シンプルノットローファー」衿沢世衣子(太田出版)

・丁半コロコロ、いやもとい、バツグンだった。「だった」じゃないな。現在進行形。バツグン。たぶん、かなりしばらくバツグンのままいくはず。

・中高一貫の女子高を舞台にした1クラスの女子たちを描いた1話完結で主人公も移るスタイル。オムニバスですか。


何気ない日々のかけら、全12話収録。


・これ、オビにあったけど、ちょっとちがうなと思った。

・だいたい1話は1日から1週間くらいの時間。その中での「日々」は日々は日々だけど、ちょっとだけ「特別」な日々を描いているのがポイントじゃないかなと思った。だから「何気な」くない。

・たとえば6話「トップシークレット」。

・トモダチが学校から家が近いからって遊びにくることになった。あわてて部屋を掃除しなければならない。大騒ぎしているうちに未完の冒険マンガ小説を書き留めたノートが60冊出てくる。それは1番に隠さねばとあちこち飛び回った挙句に学校で同級生が庭掃除をやったあとの焚き火にあたりながらくべてしまう。

・たとえば9話「ヨモギ」

・学校の裏でバドミントンで遊んでいる。ヨモギをつみにいたオバチャンに話しかけられ、そのオバチャンにラケットを持たせたらものすごいショットをみせられる。そいでなし崩し的にバドミントンの特訓させられる。で、必死こいて特訓してたらオバチャンがヨモギ餅を作ってきてくれる。

・と、日々のルーティンにほんの少しの特別がまじった日を丁寧に切り取ってマンガにする。
「特別」を特別と感じるかどうかはココロの持ちようであると思うし、そもそも中学高校のときは毎日が「特別」だったんだよなあと思い出す。

・おれも前世は女子高生だったと確信するくらいバチーっとその特別を感じましたよ。

・もうひとつのポイントは男気ですよね。この全12話中セリフのある男は数えるほどですし、それに恋愛感情はナッシングです。
・このパターン、いわゆる萌えマンガのセオリーでもあるわけですが、そのアプローチや意図するところはまったくちがうのがおもしろいよなあ。

・個人的に非恋愛を描く女性マンガ家さんがすきで、非恋愛なんてコトバは今でっちあげたのですが、初期の岩本ナオ氏、渡辺ペコ氏と、衿沢世衣子氏あたりでしょうかね。おれの把握してる限りでは。

「男ほしー」とか「恋したい」と色気づいてない女子を描く系といいますかね。

・萌え系のマンガもそういうのがないのですが、それは読者(=男)が彼女らに恋愛感情を持ってもらうための配慮であります。本作や非恋愛のは男なんて画面の中にも外にも存在してないものとしてすら描いております。そこが痛快。

・映画をみてまわりパンフまで買ってるから、食費をケチってるために年中貧血気味だったり。
・ダンスの練習をしているところ、同級生で宅録が趣味の同級生にみられてユニットを組んだり。
・選択授業でならった茶道がことのほか気に入ってぜひ本格的にやりたいと思ったけど金がなくて親に断られるとか。だから、野点を決行するんだ。

・彼女らに男気はないです。読者の男にすらも媚びる気はなさそうです。でも、すばらしく魅力的ですよ。かわいらしいです。すごく楽しそうに「特別」を謳歌しております。

・と、おれは前世が女子高生だったのか、毎話ズーンと涙腺にきます。3回読みましたが3回ともきます。別に泣かせたり、誰か死んだり、勝負に勝ったり負けたり、なにもなく、ただ女子高生の1日が終わったってだけなのに。なんだか胸がいっぱいになります。

・ちなみに。
「いいマンガ読むと映画化したくなる病」がうずきまくりです。まあ、動きが派手な「パラダイス」をやるかね。というか、現役女子高生がコレを撮れ。15分くらいでいいものが撮れるぞ。

・全キャラスキになります。みんなとてもイイコや。巻末のキャラ表を照らし合わせながらまた読み返したりしてます。人間関係もえらい練ってありますね。津田さんがキーパーソンなのかしら。

・その彼女らの描き分けのミゴトさよ。かなりハイレベル。わかりやすい意味で「絵が上手い」ってのはちがうんだろうけど、細かいところまで配慮しつつ、思い切りのいい省略や切り上げがいい。

・ただ、描画の濃淡にムラがあるのは不思議なところ。あまり気にはならないけど。

・QBB著「中学生日記」の1番最初のような大傑作と同様に「現在」を描いているのがいい。彼女らのようなイイコが日本のどこかにいるってのは夢があっていいね。日本の将来も安泰だ。ちょっと「バトルロワイヤル」的というか、魚類図鑑の1ページありとあらゆる種類がいます的に、個性があるヒトが集まりすぎてるキライはあるけどさ。

・最高にいいのは再読しやすいこと。おれはいつでも何度でも読み返すことのできるマンガがすき。「ONE PEACE」やら毎日読むのはしんどいでしょ?

・しばらくは手に取りやすいところにおいておいて頻繁に彼女らに会おうと思った。

オススメ

[Amazon.co.jp: シンプルノットローファー: 衿沢 世衣子: 本]

posted by すけきょう at 19:21| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/121563718
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック