・東京の中野区に巨大隕石が落ちて大きな岩山になりました。そこはワイルドマウンテン町と名づけられました。そこの町長とそのユカイな仲間の物語です。
・本作6巻と7巻、同時発売で、なおかつ「香港編」の上下巻という作りになっております。
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[香港編]上下巻だけでもご堪能頂けます!
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と、オビにあります。
・なるほど、そう思ってみるならばたしかにここだけ読んでも相当楽しむことができる2冊となっております。
・どうも、マンガ自体の売れ行きが鈍っているようで、各出版社いろいろと工夫されてますよね。最近はそのカラクリに目がいってしまいます。
・たとえばすっかりおなじみになった、2巻同時発売、出版社をまたいで2冊同時発売。2ヶ月連続発売などなど、発売日を固めて出す方法。くわえて、2冊買って、オビの応募シールを送るとプレゼントありとかもおなじみです。
・あとは、巻のナンバリングを廃止するなんて手法も使われてましたね。本編を廃止して、新シリーズとして発売して、「**の章」とかの力技を使ったりね。
・コンビニで売っているような雑誌の紙を使ったものだと1本の話で1冊分にするってのもありますね。
・あとはそもそもの作りから1話完結で、話の連続性を極力抑えてどの巻からでも読むことができるってスタイルね。
・本作はずっと連続している緻密な物語の中にありながら、突如香港編がはじまるという変則的なスタイルになっていて、上記の要素を満たしながらも、ちゃんと前後にきちんと話がつながっており、「前はどうなっているんだろう?」「次は最終章っていうけどどうなるんだろう?」と思わせるすごくいい作りになっているのです。
・6巻と7巻のざらりとしたあらすじは、香港に宇宙から侵略者が降り立って地球防衛軍が迎え撃つということになってます。香港を舞台に、かなりなSFでウルトラマン的なプロレスアクションを楽しむことができるこれまでと比べてもかなり異色でいながら物語の大きな変換点で、アクセントにもなっております。やや強めのアクセントですが。
・多分にちゃんと香港の建物や地図を調べて、ちゃんと宇宙人(ビルよりちょっと大きいくらい)を暴れさせてます。これがまずスゴイ。
・だいたいがイマドキ、ちゃんと実在の場所で暴れている怪獣を描くマンガ家がどれだけいると思いますかよ。なんか、もやっとしたところが舞台(中世RPG的だったり学校だったり)で魔法とか宙に浮いたりした感じで遠距離から光の弾をぶつけあうってのばかりじゃない。これってもはや30年くらい前からやっている手垢にまみれたバトルではあるんだけど、未だに根強いものがありますよね。
・いろいろと意見はあるでしょうが、単純に「描く」という点において大きいものが重さがあって地面をドシンドシン揺るがせながら戦うほうが難しいはずです。空中を飛ぶマンガの最大の欠点は重さが感じられなくなることですからね。だからそういうマンガでも「上手い」ヒトは必ず重さを感じる描写をいれてますよ。
・本作はマンガにおけるメタ表現なども多用しており、そういった点では「軽い」のですが、ロボットと宇宙人の肉弾戦などは相当な迫力がありました。
・メタ表現ってのはたとえば登場キャラが作者や読者に話しかけたりとかそういうの。
・マンガ家も多分に通常の「ワイルドマウンテン」の2倍増しで描画に時間かかかってそうです。だから、戦いがダイジェストになったりするくらいです。
・そいで恐ろしいのは、それらがすべてネタバレゴメンに抵触するのであまりくわしく語ることができないんですよ。7巻後半の展開がものすごいことになっており、それら読んだあと、6巻をアタマから読み直すとさらにスゴイことになってますし、ためしてないけど1巻から読み直すとさらにさらにスゴイことになってそうですよ。
・しかも、最後けっこう涙腺がゆるむんだよな。ワニグチがいいんだなあ。
・ということで、「鉄腕バーディー」なんかが「懐かしくて」楽しい方には実はすごくストライクですよ。古きよき特撮のテイストがたっぷりと盛り込まれてます。非パロディではありますが。
・ただ、6巻と7巻でタンノウできるかなあ?
・そして、仮にそれで気に入って1巻から5巻まで揃えられて通読されるとどうかな?とも思うけど、それですごく気に入られ、本秀康氏の大ファンになる可能性はあるよな。前向きに考えよう。それくらいおれはすごくおもしろかった。
・おれはもともと大ファンですが、本作、これまではちょっとグダグダでした。全体が「長いな」と思うくらいで。
・だけど、この6巻7巻でこれまでの伏線であった、主人公がもと地球防衛軍隊長って設定がぐっと生きる大活劇巨編になってまししたし、これまでも「アーノルド」とか巨大ロボットが登場する短編はありましたが、ここまでのアクションを本秀康氏の作品でタンノウできるとは思ってもみませんでした。うれしい誤算ってやつです。
・興味のある方6巻7巻だけでも値段分のおもしろさはあります。でも、あらためて注意しておきますが、1巻から5巻までは、6巻7巻ほどのアクションはありません。ノリはずっといっしょです。そこだけ気をつけて、本秀康ファンになってください。
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