2009年08月21日

「サマーウォーズ」1巻 細田守&杉基イクラ(角川書店)

・同名アニメ映画のコミカライズです。
・映画はみにいきました。
・本作を手に取り読んだのはネットでの評価が高かったからです。
・作画のヒトの作品ははじめて読みます。
・映画はおもしろかったです。
・本作はおもしろかったです。

・ただし、映画の「おもしろい」と、本書の「おもしろい」はイコールではありません。そのことを書こうと思います。

・学校のマドンナからアルバイトをたのまれます。それは彼女の田舎に同行するというものでした。長野のその家は大豪邸で大家族で戦国武将の末裔で主人公はいろいろと面食らいます。その夜メールに届いた謎の数列を解き明かすと世界は一変しました。
・全世界10億人が参加している仮想世界OZというところをめちゃくちゃにするモノがあらわれ、OZはめちゃくちゃ、それに連動して現実世界もめちゃくちゃになります。
・それに戦いを挑むのがその大家族と主人公でござい。

・コミカライズは丁寧で忠実。背景も様々な人種(老若男女ってことよ)もすごく上手に描き分けておられる。マンガだと描きづらいだろう仮想世界OZもすごくそれっぽい。
・くわえて、映画では描ききれなかった細かい設定や事情も描いてあります。

・たとえば、彼女と主人公のそもそものカンケイとか。いちいちはさまれるワンクッションになる前置きやセリフの細やかさは前後のつながりをよりスムーズで明確にしてくれる。大家族は、ずらずらとセリフで流れるよりもひとりひとり名前と活字で説明されるほうがいいしね。だいたいがアニメのほうでも、「ややこしい」ということで主人公に人間相関図を紙に書いて渡すシーンがあるほどですしね。また、その「わからない」ほど多いってのがすなわち大家族ってことだし。

・とりあえずここで結論づけると、実にコミック版が「サマーウォーズ」の「正解」だと思いましたよ。

・そしてそうなるなと映画をみおえた直後に予感していたのですよ。

・映画は「おもしろかった」です。ただし、いろいろと説明が足りないところやわからないところが多かった。そもそも短時間でたくさんのキャラが出るとどうしてもそうなってしまうわな。
・もちろん、おれの読解力の悪さもある。おれはリアルも虚構も顔と名前を覚えるのがヒトより劣るようです。
・ただ、おれはそれに甘んじてます。がんばって「必要以上」の理解を得ようとすることはしないことにしてます。とくに虚構は「なにが悪い」とイバリ気味です。
・パンフレットや設定資料、コミカライズ、ノベライズ、公式サイト、感想サイト、それぞれあたればわかること理解できることも多いでしょう。それをして原作の補完をすればあとづけでより映画を楽しむこともできるでしょう。

・そう考えて思うわけです。「サマーウォーズ」のプレーンな物語ってそれほどいいものじゃねえなと。
・だって、そうやって補完が必要だなと映画をみおえた直後に思うのだから。

・ここからちょっと微妙な表現になりますので、監督の細田守氏あたりは読まないでほしいんですが(読んでねえよ)、映画としてカタチづくられる前、脚本段階でも、原作でもどっちでもいいですが、それ、すなわちプレーンなモノはそんなデキがよくないなと思うのです。

「仮想空間の危機が現実の危機にもなり大家族がチカラを合わせて悪を退治する」

・大家族である必然性、その敵の意味意図存在理由、主人公とヒロインの目的と動機、いろいろと弱いと思いました。なんで武将云々って家系のところまで掘り下げるの?その関連性とか。
・目指しているところやテーマ(現実もネットもヒトのつながりはすばらしい)はよかったし、多分に「それありき」でスタートしている企画でしょうけど、そこへとたどりつかせる引力が弱いといいますかね。

・どこの段階でどうなったかはよくわかりませんが、少なくともおれの立場、「前情報をあまりいれないで映画館でみるだけ」と考えるとそう思わずにいられないのです。

・もちろん、今もある謎なんかも、前記の「いろいろ」をあたればわかるんでしょうし、現に、コミック版の「サマーウォーズ」で解けた謎も多いです。

・そして、映画版の「サマーウォーズ」はおもしろかったのです。

・なによりもアニメのダイナミズムをタンノウしました。「絵が動く」というプリミティブなよろこび!
・OZ世界と現実世界(といってもほぼ大家族の家の中ばかりだけど)と行き来することによるギャップや変化を楽しむこともできるし。とくに現実世界の動きが意外なほどあるのがよかった。

「エヴァ」を批判し、新しいものに挑戦せよ的な気概や熱意、それを実行してるサマにすごくシビレました。ジブリでもエヴァでもないTVでおなじみでもない、「劇場版」として意味のあるオリジナルアニメとしての意義をすごく感じました。
(参照: [「同じことばっかりやってて、面白い?」細田守が"家族肯定"に挑んだ理由 - 日刊サイゾー])

・なんたって、キングカズマの正体がわかった時点でちょっと泣いていたくらいですから。すごく最初のほうです。そいでもってあっという間に映画は終わったし、泣いているのをガキどもにチェックされまくっていたし。「ずっと泣いていた」なんていわれました。

・実に声も大きいなと思いました。キャストが絶妙なんですね。とくにカズマを谷村美月氏にしたのがすげえと思った。彼女の声優としてプチ大根なところが中性的なノーブルな「男?え、女?」って謎な感じがすごくよかった。
・ヒロイン以外にオッパイが出ていた仲里依紗氏が演じる38歳の高校球児の母もよかった。あれも仲氏の演技ですごくよさが引き出されていたと思う。まあ、年齢的におれはストライクですし。

・そういうのがつまり物語の弱点を補ってあまりあるくらいに「おもしろかった」と。というか、みているときは気がつかなかった。

・そして。

・これらを踏まえず、コミック版「も」おもしろかったと思いました。

・おわかりのとおり、アニメとしての「おもしろい」ところはないわけです。マンガの絵は動かないし、声も出ませんから。

・コミック版は、前記のとおり、実に丁寧に「物語」を語ろうとしている姿勢がおもしろいのです。
・けっこうわりきって大家族の「それぞれ」をカットし、映画だと画面のハシバシにあった「遊び」もカットし、主人公のモノローグも多用し、彼を読者の視点として据え、感情移入や物語進行を促すことで、いろいろな点で「正解」といえるくらいの明確さを生み出しております。その結果、皮肉ですが、前記のとおり、物語自体の弱さがみえることにもなったのです。

・だけど、というか、だからこそ、本作を映画のほうと比較しすぎて考えるのがおもしろくねえなと思ったのです。

「換骨奪胎」というコトバがあてはまりますね。
・本作は「サマーウォーズ」をちゃんと杉基イクラ作品にしようという姿勢や気概が汲み取れるのです。

・映画の各シーンと比較して、「ここはこうちがう」とするのもいいんでしょうし、それこそがのぞむところだし、むしろ逆に、マンガ版を読んだから映画にいくって方もいるんでしょうし、映画とコミックのリンクを切り離すのは無粋だし無意味なんでしょうが、多分にそういう方ばかりなので、ヒネクレもののおれとしては、本作を自分のものにしようと「戦争」している杉基氏に拍手を送りたいなと思うのです。

・だからあえて、映画カンケイなしに本作だけ読んでもおもしろい!といいます。

・そいであらためて結論。アニメもマンガもちゃんと「戦争」していてそれぞれちがったものと「戦っている」のがおもしろかったなと、そういうことになるのでした。
(まだマンガは完結してないので2巻以降の展開がわからないからオススメは保留します)

[Amazon.co.jp: サマーウォーズ (1) (角川コミックス・エース 245-1): 杉基 イクラ: 本]

posted by すけきょう at 16:30| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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