2009年09月28日

「P.S.アイラブユー」谷川史子(集英社)

・気がつくと谷川氏の新刊はまちがいなく買うようになってる。理由はシンプルで「買わずにいられない」からだ。

・すばらしい短編集です。表題作と「Room201」という連作短編のエピソード1がとくにすばらしかったのでそれについてだけ書きます。
・どれくらいすばらしかったのかというと、あまりおもしろくてヤバイので本能的に読む手が止まってしまうほどですよ。そういう点ではホラーマンガよりコワイマンガですよコレ。

「P.S.アイラブユー」
・ドイツ語の翻訳をしているひとり暮らしの女性。
・1日に1回図書館に出かけるようにしてる。そうしないと引きこもりになるから。
・そこで、少年と出会う。子供が苦手な彼女だったが、すっかりとなつかれてしまう。
・そして母親と話すうちに、彼女は子供を育てている間、自分はなにをやっていたのだろうと思い悩む。自分以外の誰かのために走ったり一生懸命になったことがあるのか?って。
・後編では、少年の母親視点から描かれます。彼女は少年の初恋になるわけですね。でも、彼はここのコじゃないからいってしまうわけです。初恋と別離になるわけですよ。

・で、ちょっと実験的なことをこれからしてみますよ。本作のネタバレを書いてみます。

・ネタバレを忌み嫌ってる方がいらっしゃることは承知してます。でも、します。

・この少年は10年前彼女にプロポーズした元彼のコだったのです。

・さあネタバレしてしまいました。あんまりにもタメがなくてビックリしたでしょ?
・このネタバレ本作の魅力を髪の毛1本ほども下げることはないのです。

・もうそこに至る前にすでに感動の嵐にまみれてるからですよ。ええ。それは後日談というかオチのようなものです。そしてさらにその後感動が待ってるわけですし。

・まあ、少年がカワイイことよ。いわゆる快活で無邪気な少年なんですけどね。男の子がほしいなと普通に思うわけですよ。おれが思うくらいだからショタの気がある女性はもうイチコロじゃねえかしら。
・と、まあ、あいかわらず、母親も翻訳家も、かわいらしく描かれてますしね。立場がちがう2人の女性を同じくらい美しく魅力的に描いてますからね。

・で、ビートルズの曲名と思っていた「ラブ」はすべてにインターネットのように広がっているなあと思うのですよ。

「Room201」episodo1:S区
・と、この「P.S.アイラブユー」の感動覚めやらぬ間にはじまる連作短編3作の1話目もまた女性の文筆業が主人公の話です。

・彼女はちょっとスランプ気味の作家をしております。彼女は合コンで知り合ったハチミツを売ってるくまのプーさんみたいな男性と同棲しております。
彼との生活は幸せなんですが、家事もやるようになってただでさえスランプの作家業が煮詰まって追い詰められて爆発するのですよ。

・と、まあ、こういう話は少女漫画でかつてようけ読んだ気がするわ。というか、ぶっちゃけ「P.S.アイラブユー」の翻訳家はそれでプロポーズを断ってひとりで暮らししております。

・本作すげえのはその後だったりします。予想外だったなあ。
・おれにとっては久しぶりに意表をつかれた物語だと思ったし、これ、実は描画によるところが異様に大きいですよ。それを描いた絵の巧さよ。
・というか、谷川氏にしか描けないよなあ。だって、怒涛の後半の展開がすべて「ジャスト」の絵だったよ。このコマのこの表情はコレしかありえないって絵しかなかったし、そうじゃないとおもしろさにつながらないどころか物語が破綻してたよ。

・これはネタバレしなかったよ。

・あとの2作品も並々ならぬ意欲作というか実験作ではあります。こっちについても語りたいところですが、それは読んでのお楽しみってことで。

・もう毎回渾身のフルスイングです。それが420円です。傑作です。オトクです。買いましょう読みましょう涙しましょう。

・描き下ろしあとがきマンガによると、有名な方に占ってもらったところ、追いつめられて血反吐を吐いたモノじゃないとおもしろくならないといわれたそうです。
・じゃあ谷川氏にはもうしわけないけどもうちょっと楽しませていただきたいなあとは思うわ。

・また次回作も買わずにいられないね。

オススメ

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posted by すけきょう at 19:08| Comment(0) | TrackBack(0) | オススメコミック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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