2010年06月07日

「アイアムアヒーロー」3巻 花沢健吾(小学館)

・花沢作品は「ルサンチマン」を読み、「ボーイズ・オン・ザ・ラン」を途中でリタイヤしました。4巻までです。

参照:
[「ボーイズ・オン・ザ・ラン」 3巻 花沢健吾(小学館)|ポトチャリポラパ/コミック/2006年7月]
[「ボーイズ・オン・ザ・ラン」4巻 花沢健吾(小学館)|ポトチャリポラパ/コミック/2006年10月]

・いろいろと考え迷いながらも「アイアムアヒーロー」を手に取りました。そのときに2巻まで出ておりました。読み終えたくらいのタイミングですぐに3巻が出ました。

・すごくこのマンガについて考えております。
・結論を出すのは早急だなと思ったのが結論だなとは思います。
・そうです、現時点では「おもしろい」かどうかもよくわかりません。

・3巻まで出てるのでざっくりしたネタばらしのあらすじを書きます。現時点でははっきりしてないものの3巻までの展開は「ゾンビ」です。死人がヒトを襲いはじめます。襲われたヒトはゾンビになりまた襲います。それであれよあれよと日常は侵食されていきます。ゾンビの基本設定ですね。忠実にそれです。

・数多あるゾンビもののひとつとして本作で特筆するところがあるとすれば、現代日本の日常に異常が紛れ込んでいるサマをものすげえ丁寧に描写していることですね。実にまだその状態です。もう全員ゾンビのところと、だれもゾンビじゃないところ、徐々にゾンビ化が進んでいるところとかなり分かれております。

・この日常と異常のドタバタな感じは、2巻のおわりから、3巻のアタマ。電車のシーンがわかりやすいです。
・外の地獄の状態から逃げるように電車に乗ると、ビックリするくらいの「いつもどおり」。でも、隣の車両にはアイツがいて。そして、連結のドアを開けたら「いつもどおり」じゃなくなる。

・その感じは、タクシー内でピークに達します。タクシーで主人公以外全員が「アイツ」に変わっていく。運転手も。

・そんな中、きわめてチキンな状態でおろおろしつつも、ドラクエのコマンドでいうところの「いのちだいじに」状態で、主人公は逃げていきます。その変化に対応しきれず戸惑い続けております。1巻の終りから終始なにがどうなってるのかわからないまま翻弄され続けます。それは3巻の終りまでそうだったから、まだ「翻弄」は終わってない感じです。

・主人公はさえない男で、自分の人生くらいはヒーローになりたいなと漠然と思っていますが、負け組でキモいアラフォーなのです。とても戦える状態ではないのです。
・猟銃を持っていますが、未だにそれはケースに入れたままカギをかけたまま開けておりません。開けたら銃刀法違反だからです。異常事態の中で法律やらモラルに縛られながらも死ぬから逃げるという感じ。

・と、これまでをふまえおれの感じたポイント。

・主人公が襲われる最初のゾンビは彼女なのです。
・非常事態において愛する女性を守る「ヒーロー」の図式とは真逆の展開ではあるのです。「ヒーロー」からもっとも遠い位置に主人公は立っているのです。

(ここからは超穿ったことを書きます。作者ならびにいろいろすみませんと最初にあやまっておきます)

・恋人の「てっこ」はヒロインにふさわしくなかったから最初にゾンビになったんじゃないだろうかと思ったのです。

・主人公はアシスタントでくすぶっている売れないマンガ家です。35歳です。でも、ファンだといってくれた美人でかわいい彼女がいます。これが「てっこ」です。
・ただし、彼女は売れっ子マンガ家のモトカノです。
・そして、彼はそれをずっと負い目に感じております。まだ売れっ子とつきあいがあるんではないか? 売れないおれに愛想を尽かしているのではないか?と。
・だから、セックスさせてくれないのではないかと。

・そう思わせる描写がいっぱいあります。ラブラブ状態ではあるけど、主人公は彼女のふとした「素」をいくつかみてるし、結局最後までセックスさせてくれてないような気がするし。

・それだからこそ、3巻で彼がヒーローになるべく「ちゃんとした」お姫様と森で邂逅するのではないかと思うのです。
・お姫様は森にいるものだから。お姫様は処女なものだから。そして、ヒーローはお姫様を守るべきものだから。

・それらをふまえた、まわりからハブにされ気味の処女っぽいかわいい女子高生と森で「出会わせる」のです。

・ここいら、作者の作品に一貫してる「オンナは裏切る」「オンナは基本ビッチ」ってのがまたしても炸裂したのでは?と思うのです。
・ま、その前に「オトコはバカなことする」ってのもちゃんと炸裂してるんですけどね。主人公も考えられる限りサイアクなひとことをぶちかまします。そしてそれが最後のコトバになったりします。

・それが正しいかどうかは、今のところどうなったか不明な売れっ子マンガ家が以降で登場するかでハッキリしそうです。ラーメンズの片桐仁氏に似ている彼が再び登場するかどうかはポイントだと思います。

・てっこがカワイソウなんです。素直にそう思います。
・つまり、ヒロインの座を降りることになったわけです。ヒーローのココロが離れたから。実に、1巻の図式は、彼が彼女をふってます。本人も無自覚のうちにふってます。

・主人公の心情もすごくわかるのです。
・コトあるごとに前の彼氏である天才マンガ家がスゴイこと、まだネームを見せ合うなどのつながりがあること、彼氏時代にされたエロいことなど聞かされる等、そんなことされておもしろいオトコはいません。

・でも、てっこは尽くしてるのですよ。おでんつくってくれるし弁当つくってくれるし、生理だからってクチでしてくれてるしさ。モトカレのマンガの話をするのも「発奮」させようと思ってのやさしさなんでしょう。

・微妙ではあるんです。リアルタイム穴兄弟なのかどうか。まあ、主人公すごくそれが大事のようですし。

・わかるけど、それをも飲み込んで、彼女がみせる誠意を「ありがたい」と甘じて受け止めろよとは思ったのですよ。。主人公はそうしようと思ってるし、そうしてたんだけどさ。それでも足りないし、ついには自分にウソをつけないって暴走をしたわけで。そして仲を修復する間もなく事件になったと。

・形見としてもってきた歯は、森で出会った女子高生のチッコのあとを拭くためにわたしたティッシュからすべてこぼれ落ちる(この描写は彼女との離別を表すわけでしょ)。

・いや、だから、つまり、同族嫌悪の一種ではあると思うけど、おれは主人公にもうひとつ感情移入できないのですよ。。
・それは「ボーイズ・オン・ザ・ラン」「ルサンチマン」の主人公でもそうかもしれない。もうディティール忘れてるけど。読んだ後のモヤっとした感じは「花沢作品」って感じはした。

・たとえば、同じ「日常にゾンビ」って描いてらっしゃる福満しげゆき氏。
・彼の女性に対する畏怖ってのは、いわゆる童貞主人公マンガにおいてはすごくわかりやすく明確と思います。完全にビビっております。完全に良く分からない存在でありまぶしい状態にしてます。

・それに対して、花沢マンガのそれは、畏怖から敵対まではいかないまでも、「共倒れ覚悟で1発かます」ってのがある気がしてしょうがないです。
・しかも、それは主人公が手を下すというより天罰のような感じで女性にふりかかってくる感じもあります。 たしか「ボーイズ・オン・ザ・ラン」もそうだったし。

・別に物語のことだし、ウソだし、もっとひどい目に遭ってるキャラも、リアルでひどい目に遭ってる方も多いんだけど、そういう根本のところで、なんつーか、ちょっとした拒否があるのも事実なんだよな。かわいそうというか、救いがないというか。

・それらを二文字で表すと「相性」。やっぱ、花沢作品とは相性がよくない。

・で、本作。この先、マジでどうなるか想像がつかないです。つまり、現時点で「おもしろい」かどうかわかりません。おれは前記のとおり相性の点でやや不利だと思いますし。

・ただすげえとは思います。本作、そういうことを乗り越えたすごさは余裕であると思います。

・相変わらず様々なインスパイヤ元を隠そうともしないで、110%くらいの全力を超えたチカラをぶつけてこられてはいます。
・細かい作り込みや、技術や情熱に飲み込まれず、伝えたいことはガッツリ伝えてきてます。伝わってきます。

・こうやって「おもしろい」かどうかを認める認めないで葛藤するだけの価値があるマンガとも思うのです。

[Amazon.co.jp: アイアムアヒーロー 3 (ビッグコミックス): 花沢 健吾: 本]



posted by すけきょう at 14:52| Comment(2) | TrackBack(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
おかえりなさい。

花沢健吾に対する相性よく分かります。
私も読ませる事は認めるしスゴイと思うがキライです。
キライというか苦手というか。
読んでると、なぜかイラッとします。

遅くなりましたが、お悔やみ申し上げます。
Posted by nasi at 2010年06月10日 21:18
コメントとお悔やみ ありがとうございます。
「ボーイズ・オン・ザ・ラン」はリタイヤしたので本作は一応最後までがんばってみたいなと思います。

あと、ポトチャリコミックも(別に喪中だから書かなかったわけじゃないんです)。
Posted by sukekyo at 2010年06月10日 21:23
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