2010年11月19日

「ききみみ図鑑」宮田紘次(エンターブレイン)

・音にまつわる8本の短編集。
・作者にとっては初連載作だそうです。おれは情報はまったくないです。
・表紙の教室の机に座ってギター抱えてる少女に見惚れて買いました。
・そして、その少女が登場する1話目にやられました。そういうことを書こうと思います。

・その前に。
・ほかの話もよくできております。音、音楽に、まつわる人間模様ということで、時代も舞台も設定も練られております。

「天使の声」。エレベータが故障で閉じ込められる。インターホンの応対に出た女性は意外な人物だった。
「秘密の合言葉」。お嬢様高校。校門から入るときに「ごきげんよう」というのが決まりになってる。それが恥ずかしくてどうしてもいえない生徒と、どうしてもいわせない先生の話。

・たとえば「天使の声」は、ほぼ2人の会話のみで展開するけど、女性側のまわりの描写と、声しか聞こえない女性に妄想をふくらます男ということで広がりをみせる。
・たとえば「秘密の合言葉」は、いつも叱ってる先生がもう辞めることを知り、夜に2人で校庭で話をするシーン。そこで「ごきげんよう」にこだわる意味がわかる瞬間とかさ。
・あと、まあ、みんな女性が主人公なんだね。みんなカワイイわ。

・そして1話目「視える音」よ。オビにもある「僕は音楽が嫌いだ」というモノローグからはじまる話。
・主人公(男)は音を視覚化するチカラがある。そしてそのことでバカにされたりイヤな思いをしてるから音楽をキライになった。
・ヘッドホンの音漏れからは痴呆の顔したひまわりがヘラヘラと笑いでて、選挙の演説のスピーカーからはタヌキが現れる。
・ところがあるとき、竜が背後を通り過ぎる。「なんだ今の?」と音のでどころをさぐると、女の子がギターを弾いていた。

・音楽がスキ。たとえば、CD買ったりDLしたりするくらいに音楽がスキなヒトは、大なり小なり音楽にやられた瞬間というのがあるし、それは多いほどステキな体験です。
・ベターなネタでいうと、ビートルズの「She Loves You」の「Yeah!」にココロを奪われたからギターを手にとったというかな。衝撃を受け衝動にかられるパワーを感じるワケですよ。
・本作は「音が視える」ということで、それをビジュアルで表していて、実にうまく「やられる」瞬間を描いております。何度見ても文化祭のライブシーン鳥肌がたちますよ。
・また、女の子がげじげじ眉のそばかすで天パーってのがいいんですよね。クセのある女の子がものすげえ音を出すって感じが余計にかっこいい。

・そして「けいおん!」の原作を2巻で買うのを止めた理由を考えるのです。あのマンガは「そういうこと」をキレイに抜いている。衝動も衝撃もない。んまあ、フェアな描写をさせてもらうと、2巻まではなかった。3巻4巻は知らないです。
・逆にとても画期的かもしれない。音楽に対してのリスペクトが感じられない音楽マンガなんてあまりないから。
・そもそも音が聞こえないマンガにおいて、音楽を題材とする際に、音楽のパワーが感じられないなんてのは愚弄もいいところとは思う。それはいくら設定でも、内容がおもしろいとか、合ってるとか、そういうところで理解はしてても根底の違和感はガマンならないわけですよ。
・もっとも、アニメ版は感じられたんだけどな。「ホンモノ」の聞こえる音楽が流れてるワケだし、愛生、歌うまいし。いい曲も多いし。
・だから、なんだったんだろうとは思うけど、抜けてるからこそ、アニメで思うさま「盛る」ことができたのが成功の秘訣だったのかしらと思ったり。もとがプレーンだから「自由にカスタマイズOK」状態?

・2話目「奪われた歌」はネタバレになるからあらすじを書くことができないけど、こっちも「音楽」というもののすばらしさを満喫できるようになっております。実は、個人的なベストは2話だったり。
・おれにとってちょっと収まり悪かったのは3話目「始まりのリズム」です。1話目の「音」の衝動、2話目のメロディ、そして3話目でリズムという感じになりたかったのでしょうけど、3話目はサイレントでさ。すげえ気合の入った上手い絵ではあるんだけど、サイレントで全編通すほどじゃないよ。「まだ」。たぶん、5年後、同じものを描かれるとみちがえるとは思いますけど。

・久しぶりに全編通してさわやかで気持ちのいい短編集を満喫しました。シアワセ。
オススメ

参照:
[Amazon.co.jp: 音楽と漫画: 大橋裕之: 本]

衝動と衝撃といったら、こちらもスゴイ。すごい絵なのに音が聞こえてくるしド迫力です。こっちのほうが「買う」「読む」で考えると敷居は高いけど、「ききみみ図鑑」を読んで「ここに書いてあるとおりだ」と思ったあなたは、このマンガにも同等のインパクトは感じられるはずです。これも音楽に対するリスペクト度合いがすばらしい。

[Amazon.co.jp: ききみみ図鑑 (ビームコミックス): 宮田 紘次: 本]


posted by すけきょう at 14:21| Comment(0) | TrackBack(0) | オススメコミック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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