・それだけだと味気ないので、ちょっと雑談を。
・ポトチャリコミックをはじめてこれでかれこれ3年目4年目になりますが、1番、いまだに反応がいいのが「にったじゅん」で検索されてヒットする、前々作にあたる「童貞遊戯」ですよ。トータルでいうとダントツかな。
・で、新刊のタイミングで検索がどっと増えます。この現象、ほかの成年コミックも普通のコミックでもあまりありません。不思議なものですが、熱心なファンが多いのでしょうかね。
参照:
[「童貞遊戯」にったじゅん(三和出版)成 : ポトチャリコミック]
(もちろんこれも成年コミックだから未成年は配慮しましょうね)
では、本編を。
・前作「恋する童貞」はがっかりだった。
・これまでの「童貞」シリーズとは毛色のちがうイケイケな感じの装丁に女性の表紙で、なんだかイメチェンをはかったのかな?と思ったりしてました。うーんと、オッサンがまちがって思ってるオシャレな女性雑誌みたいなノリというか。
・内容のほうもなんだか「普通」になったなと思ったんだよな。なんだかしっくりこなかったんだよね。
・にったじゅん氏の描く、エグイ女性上位社会は、現実のソレのすぐとなりか2つくらいとなりの並行世界として独自に展開しているのですが、それが1番現実のそれに肉薄していたような気がします。
・ただ、それはこれまでの女性上位社会の流れを経て現実に寄っていたような不思議なことにはなってました。間違い探しのノリですね。
・それでいうと、もっともかけ離れていたのは、「県立性指導センター」で、これは「童貞」の文字がついてないシリーズでも異色作ではありますが、内容もそうとうかっ飛んでいて、男女の性格差を埋めるべく、童貞男子に主婦のボランティアが1ヶ月みっちり指導して女体になれてもらう施設が「存在」するという話。
・この本には、にったじゅん氏創作のキャラでも屈指の鯖井春という、ビリーズ・ブート・キャンプ的に男子を徹底的にセックスマッチョにするべきトレーニングする軍人女性がいたりします。ま、余談。
・ここで仮説。にったじゅん作品の中でまだこの「女性上位社会」の歴史が綿々と続いていたら?
・そう思うと、つづく「童貞遊戯」「恋する童貞」「キミたち童貞?」に連続するストーリーが生まれるように思うんですね。おい、長くなるのか?
・こう、まあ、ざっくりと書くと上記の作品の順番でゆり戻しがはじまっているんですよね。女性上位社会に対するオトコの反乱がはじまっている。
・そして、それは「県性指導センター」の成果が現れた?と。
・いくつかのシリーズものをのぞくとにったじゅん作品の各話やそのキャラにほぼつながりはないです。だから、にったじゅん史における世界の広い社会のあちこちでじわじわと変化が起こっているんではないかと読み取ることができるんですよ。それは進行してたり従来通りだったり。
「童貞遊戯」では、女性の導きにより(というかプレイで)、SM的なアプローチをする脱童貞ほやほやが登場してきます。
「恋する童貞」では、圧倒的女性上位と思われてたけど、やはり女性のなかにも体験したくてもできないキャラがでてきます。
・犬ちゃんという凶暴だけど一途なすごくマンガのキャラみたいのも登場します。
・そして、本作です。長い前フリでしたね。
・半村良氏の小説に、セックス時、より多くの快楽を得たヒトは寿命が縮むというルールが存在する世界の話があります。それを利用して合法的に要人を暗殺するエキスパートを作るという展開。
・まあ、そうじゃなくてもホレたもんが負けるってパターンってのはこの世界でも共通のルールですね。
・本作、そのルールが作用して、にったじゅんマンガでは絶対勝利のはずの女性が負けはじめています。
・いつものように単なる生きてるバイブ的なオトコの作品が3話続いたあと変化が現れています。
(細かいことをいうとそれらにもちょっと変化はあります)
「僕らの船出」では、学校を卒業したら親の借金のために風俗に落ちる女性が、店長から、「なれるためにクラスメイト全員とやってこい」といわれて「あ行」からずっとやってきて、そのコのことをひそかに恋していた渡良瀬クンといたすことになる話。
・彼は彼女に拒絶の意思を示します。ま、成年コミックだからやることやってだけど。
・この拒絶の意思は、「恋する童貞」収録の「春の心」とは真逆のものです。
「春の心」はびっくりするほどこの話と同じですが、彼女をすきなオトコは、「仕事」で遅れがちな学校の勉強をきちんと教えて、彼女が「悪いから」と提供しようとする快楽をことわります。仕事で酷使してる彼女の身体をいたわって。
・んまあ、ネタバレしていいのかどうかわからんけど、「僕らの船出」の渡良瀬クンは、「そんなヤリマンもういらない」って拒絶です。つまり快楽に膝をつけなかった。
「鰯田君が止まらない」がけっこうなターニングポイントたる作品になるのかと。
・レスリング部の美女がクラスで1番貧弱な鰯田君にレイプされる夢をみて、どうにも気になって仕方がないので、「フリ」でいいからレイプしてくれと。
・そいでもってミイラ取りがミイラじゃないけど「俺色にそまれ」状態になるわけです。
・ほかのマンガにはちょいちょいあって、性別を逆にすればにったじゅん氏のマンガには腐るほどある話(なにより「キミたち童貞?」の1話目「虜」がそれ)でありながらも初じゃないでしょうかね。
・最初は快楽をもって女性が男性を支配していた。それが「愛」でもって、少しづつ攻略されていき、ついに「愛」を抜きにして快楽のみで女性を攻略する男性が登場したわけです。んま、この場合の「男性」ってのはにったじゅんマンガにおける童貞のことになるけど。
・反逆の狼煙が立ち上がった瞬間だったのですよ。
・そして、「ここまで」を続いてる歴史としてアタマにおいてみると、本作のベストであり、近作でも1番じゃないかと思うのが「肉便器の習性」だったりするんですよ。
・サッカー部のマネージャーをやってたコが密かに思いをよせていたイケメンに、明日本命とはじめてセックスするけど童貞でうまくできないとカッコ悪いから練習させてとたのまれます。彼女はサッカー部の性欲解消役であり、そのプレイを撮影したものをイケメンもみていたんですね。
・で、まあ、成年コミックらしいことをします。
・次の次の日に、また、彼女はイケメンに声をかけられるのです。またやろうって。彼女はサッカー部マネージャー伝統のトレーニングでとても具合がよかったので、イケメンは彼女の味を忘れられなくなったのです。「で、いつでもそばにいておれのオナホになってくれ」と手マンされならが告白され、彼女はヨロコビのあまり潮を吹いたのでした。
・どこが最高傑作じゃ!と思われる方もいらっしゃるでしょうけど、彼女の細かい心理描写や表情がすごいんですよね。で、純粋にひどいイケメン描写の対比で、してもらえるなら肉便器でもいいって感じがいじらしくてなあ。そしてにったじゅんの世界においての「ハッピーエンド」じゃないですか。
・本作、また強く思ったのが、キャラがカワイイこと。描画もここしばらくの変化が安定してきたのもあるけど、それよりもなによりも、女性上位の自信に満ち溢れた凄み描写は薄れ、愛嬌みたいのを描けてるのが大きい。
「拾う!!鳥居くん」だと、神社で10億円が入ったダンボールを拾った鳥居くんにクラス1の美女が「スキです抱いてください」ときて、パツイチかましたら電話がかかってきて拾った金は偽札でしたと。そうしたら「もうスキじゃなくなった」なんてプイと出て行く。だけど、最後にまた鳥居くん、今度は金塊をみつけたらその子が「やっぱりスキ。抱いて」なんてくるのですね。
・このクソビッチなにいってやがるって感じであるけど、その描画になんとも愛嬌があるんですよね。憎めないんだよ。
「バックヤード」では、エロDVDを万引きした「C学生(余談だけどにったじゅん氏のこの手の表記はあまり好きじゃない)」をt.a.t.u.みたいなカッコした店長が「エロい気持ちをなくすには金玉を空っぽにするしかない」ってレイのやつだけど、なんだかこの店長もみょうな愛嬌があるんだよな。典型的なにったじゅんキャラでありながらどことなくこれまでのと感じがちがうというか。
・愛嬌もあるし、女性がやさしくなった感じがあるなあ。いや、ここいら微妙すぎてこのコトバじゃちがうんだよなあ。「愛嬌」が1番近いけど、それは正解じゃないし全部じゃないような。慈悲ってのもまたちがうしなあ。
・この変化にいろいろと理屈や仮説を立てることもできるけど、それはまた次の作品を読めばわかることかなあって。
・こうなると、にったじゅん氏自身にどんな変化があったのかしら?とヒトとナリにまで興味がわいてくるくらい。また、本作、枯れたあとがきでなあ。その前のあとがきはどうにも不穏なこと描いてあったし。大丈夫なのか?いろいろと。
・そして、この「童貞年代記」とでもいえる長大で遠大なサーガの「次」の展開が楽しみになってる。本作、買おうかどうしようかすごくすごく悩んでいたんだけど買ってよかった。
エロマンガサイコー!
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