2011年02月25日

「ベルとふたりで」3巻 伊藤黒介(竹書房)

・こういう感想文を書くとき、ポイントとなる1フレーズみつけてそれを核にふくらませるってやり方があります。
・それでやろうとすると本作は非常に難しい。1巻から漠然と思っていたけど、3巻になりさらに強くなりました。でも、なんとなく書きはじめたら出てくるってのも、おれの場合よくあるやつです。

・グレート・ピレニーズのベルと元気小学生すずとの7歳同士によるほがらか日常4コマです。
・ベルは大きな犬で二本足で立ってかしこい動きをします。
・すずはアタマの悪い学力と言動のクレヨンしんちゃんが女子になったようなハイパー小学生です。ケツだけ星人とかはしませんが。

・同級生や家族など毎巻キャラは増えていきます。3巻では旅行作家の父が登場して、碧眼金髪なれど大阪弁しかしゃべることのできない少年など。

・基本は「かつて」のストーリー4コマのように、1回1話でユルくストーリーはつながり展開していきますが4コマは1本づつ独立して起承転結というやつです。これが現在基本なのかはわかりませんが、「けいおん!」などいくつか読んだ分には、4コマで落ちてないのもありますので念のため「かつて」と。
・たとえば、3話は年末大掃除の話です。ベルやすず、母の妹の巨乳が、逃げまわったり失敗したりサボったりしてるのを母親が怒りまとめながらも大掃除をするって話です。
・庭を掃除してると、ベルが家のいろいろなものを埋めたのを発見。いろいろなものを埋め込んでしょうがないなあと思ったら、すずの13点の答案や母のお気に入りの割れたマグカップなんかが出てきて、すずが逃げるって4コマです。んまあアットホーム。

・さて1行目に戻ります。本作を読んでポヤポヤと浮かんできたフレーズは「芯食ってる」です。
・なんていうかな、腰を落としてかまえ躊躇なくフルスイングしてジャストミートしてるわけです。いや、野球知らないんでこれらの単語に自信ないんですが。

「よつばと!」をひきあいにだしましょう。これも芯食ってる日常マンガです。これとはまたちがうアプローチではあります。けど、同様のフルスイングによる風圧を感じます。こういうときに使うコトバとちがいますが「容赦ない」感じでブンと振り抜いてます。

・毎話、ほがらか&ドタバタしてるんだけど、そのガチ度がちがうんですよね。渾身のチカラでもってほがらかドタバタしてるわけです。
・すなわち芯食ってるほがらかドタバタなんですよ。
・腕の力こぶに太い血管が浮かび出るようなイキオイで、ほがらか&ドタバタで、なおかつ、ゆるゆるとやってるのです。
・矛盾してますがそうなんです。
「こちとらゆるゆるだオラァ!」ってな。
・デフォルメも雑な描画にみせるところも渾身のチカラで「抜いて」みせてる感じがします。全力でチカラを抜いている。

・また「よつばと!」。あのマンガの精緻な描写に、最新刊が発売されるたびに「雑誌掲載時にさらに描き足した」ってニュースサイトで話題になります。では、はたして「よつばと!」においてあれだけの精緻な描写というのは必要か?という疑問が浮かぶのですよ。

・マンガは「必要」なものを描けばOKです。点2つに棒1本をまるで囲めばヒトの顔です。コマを横切る直線は、水平線にも地平線にも地面にもなりますし、それにデコボコがつくと街の背景になります。
・それでふきだしにセリフが入ると、それはマンガになります。
・でも、それだとおもしろくないし個性がでないからほかにいろいろと足します。人物はたくさん登場し、背景はいろいろと描かれ、「おもしろ」くなります。

・それぞれのマンガには決まった「おもしろ」容量があります。そこに達した時点で、そのマンガは「おもしろ」です。
・これは正解はないですが、基本、ジャンルによってその必要量はちがうと思うのです。

・棒人間が殴り合うバトルマンガはつまらなそうですし、丸を2つならべたものを胸とする成年コミックもあまり読みたくない感じです。

「よつばと!」も「ベルとふたりで」も、おれ判断だとその容量はカンタンに満たしております。そしてさらにオーバーフローです。洗面台の上のほうにある楕円のアナから「おもしろ」が流れでてる状態です。
・だけど、「デカ盛り」の店なんかで皿からあふれるほどに盛りつけられた料理は、それ自体の味とは、また別の「おもしろ」が生まれてくることはおわかりですよね。
・前記のとおり「よつばと!」は「ここまでやる?」ってくらい書きこむことで、本来のほがらか未就学児マンガに、ちがった意味やおもしろが生まれております。そして、その「おもしろ」自体が、従来持ち合わせていた必要量のおもしろにプラスしてます。
「よつばと!」の内容は「クレヨンしんちゃん」の絵でも成立しますからね。絵の優劣ではなくて制作に必要な実時間の話です。どう考えてもちがうでしょ? でも、長い長い時間をかけて背景やふーかの水着姿を描いたりするわけですよ。
・んまあ、「よつばと!」読んでてアタリマエみたいなこと書いてもうしわけないなと思ったりもするんですけどさ。

・で、「ベルとふたりで」ですよ。

・こちらも「おもしろ」があふれています。「よつばと!」とはちがったものが。
・こっちはさきほども描いたように、すごく4コママンガということを意識されております。
・4コマなんだから、読者に「重」と感じさせてはいけないとか、気軽にアハハと笑えるものとか、そういう作者内のシバリがあり、肩のコらない作品として老若男女楽しむマンガとしてそこにあろうと全力で考慮されてます。

・でも、なんつーか、「ちがう」んですよね。それが気軽に繰り出されたものじゃないことは読むとすぐわかる。
・おれが超一流のマンガダイバーだからわかるというのではないです。たぶん、多くのヒトが読んだあと「これちょっとちがうな」と思わせるなにかがあります。その「なにか」を表現するのが難しいってことなんですよ。
・そこで超一流のマンガレビュワーとしては「芯食ってる」と表現してみましたよ。「ほがらか」や「ドタバタ」の「当たり」がちょっと尋常じゃないんですよね。場外ホームランといいますか。
・もっと曖昧な表現だと、「なんかヘン」なんだけどね。それは悪い方にヘンじゃないのは確かな感じの。
・それは、琴子という全盲の美人女子高生が準レギュラーとして登場してるとか、あとがきに都条例にモノもうしてるって、わかりやすい「なんかヘン」アクセントを抜きにしてもですよ。
・あと、おれが「げろこ」ちゃんがスキでスキでたまらないことを抜きにしてもですよ。

・なんつーかな、全身全霊をこめてほがらかを描いてるってことにヘンな凄味が生まれてるんですし、その「味」は上質だけど、上質で片付ける以外のなにかなみなみならぬ覚悟とかチカラを感じさせるんですよ。まあ、「なんかヘン」な。

・このマンガ、けっこう昔ながらのマンガではあるけど、キャラの造形なんかは「今」ですよね。様々な「かわいい」女性キャラが登場しますが(半分は小学生ですが)、万能タイプの美人が1人もいなかったりします。昭和の委員長キャラといいますか。
・そいで、女子ばかりじゃなくて、オトコも多いし、犬も猫も多いし、バリエーション豊富。
・それらはまったく見失いませんしね。そして魅力的。

・結論。
・渾身のチカラをこめた上質のなにかヘンなほがらかドタバタ4コマでおもしろいなあ。
・あと「げろこ」ちゃんカワイイなあ。げろこちゃん、おれが大学時代スキだったさとこちゃんに似てるんだ。

オススメ

[Amazon.co.jp: ベルとふたりで 3 (バンブーコミックス): 伊藤 黒介: 本]




posted by すけきょう at 15:07| Comment(0) | TrackBack(0) | オススメコミック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/187727290
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック