2011年06月01日

「遠野モノがたり」小坂俊史(竹書房)

「4コマ史上に残る名作「中央モノローグ線」に続く物語。」だそうですよ。オビより。

・4コマ史上に残る「中央モノローグ線」は、中央線を舞台として各駅に住んでいる女性の独白で4コマが展開するという作品でした。
・本作はその登場人物のひとりが岩手県遠野市に引っ越してはじめる遠野ライフなワケです。
・読んだこと無いけどタイトルは有名な柳田國男氏の「遠野物語」と、モノローグのモノをかけてのタイトルになるわけです。

・主人公、とはいえ、本作、メイン登場人物は4人いて、昨今の4コマ風潮に合わせて全員女性なんですが、そのうちの引っ越してきたイラストレーターさんがメインでしょうかね。
・イラストレーターは、ネット、すなわち電話が通じるところならどこでもシゴトはできるということで、それを実践してみたわけです。縁もゆかりもないまったく住んだことのない遠野市にポーンといってみたのですね。
・だから、彼女はストレンジャーであり観光客であり地元民でもあるというスタンス。

小坂 俊史¥ 780


・前作にあたるわけでもないんですが(多作でらっしゃるので)、この作者が登場する紀行エッセイ4コマにおいて、自身が遠野市に引っ越すというアクシデントが発生しております。そして現在もいらっしゃるという。
・ということで、つまりイラストレーターは「作者」が色濃く投影されておりますよ。
・そういうことでのネタ出しはポンポンってことでもないでしょうけど、通常のモノとはちがったところから生まれてそうな気がします。そして、そのネタはちょっとちがった手触りがあるような気がします。
・読んでるこっちとしてはちょっとちがうよなとは思います。
・そもそも本作に大爆笑ってのはないですし。そしてさらにそもそも小坂氏の作風は笑死って感じはないですし。

「中央モノローグ線」「わびれもの」、そして、重野なおき氏との共同著書であるところの「ふたりごと自由帳」にも通じる、小坂氏のもってる情緒といいましょうかロマンというかリリシズムというかそういう「湿っぽい」ところ。そしてそれをストレートに表現することのテレを隠すためにほどこした様々なモノ。それにより、「小坂俊史」になってるなあと思う。そしてそれは他の作品よりかはナマの小坂俊史に近いなと。

・たとえば、主人公は神社や旧跡をめぐるのが趣味で、卯子酉(うぬどり)神社というところにいきます。縁結びの神社で100円で売ってる赤い布に想い人の名前を書いて神社に縛り付けると両思いになれるという。ヤナギダのほうの「遠野物語」にも書いてあるくらいな由緒正しいところで。
・この赤い布、緑の木、白い雪で、クリスマスカラーということで、クリスマス気分を感じるとかね。

・主人公は風情のある川のむこうの国道にあるパチンコのネオンで夜の帳が下りないことにいらだちを覚え、いつになったら終わりなのかわからない冬にビビり、雪かき用のスコップを買うことでまた一歩地元民になれることをよろこんだと思う反面、田舎ではどうしても必要にかられるクルマを買うことで「動き」が遮られることを危惧する(引っ越しや処理に困る)。
・地元民の子供がほぼ標準語なことに軽く落胆し、反面、お祭りに積極的に参加するサマをみて感心する。

・主人公以外のメンバーも似たような感じで、遠野市と自分を対比している場面が多い。

・あと、両者のちがいというか、小坂氏の作品は「わかってほしい」ってキャラが登場し、重野氏は「わかりたい、知りたい」ってキャラが登場しますね。
[「ふたりごと自由帳」小坂俊史&重野なおき(芳文社) |ポトチャリポラパ/コミック/2007年7月]


・このときも書きましたけど、小坂氏の心情を描くモノにはこのテーマがいつもあると思う。そして前記のようにナマな分、本作は強く出ている。
・遠野市を主人公と考えるなら、各キャラがそこのどこに立ってるのか。それらを探りつつも「ワタシはここにいる」とひっそりと主張している彼女らを遠野市は暖かくも冷たくもなくただ「そうかね」と受け入れているような感じがします。

・これはたぶん作者の一生のテーマになっているのではと思います。作者自身あとがきで「僕はまだなぜ自分がこの町に来たかさえもわかってないのです」とあるくらいで。

・本作では登場した各キャラにはきちんとした「オチ」をつけてくれてます。とりあえずではありますが「オチ着く」ところをきちんと描いてくれているんですね。そして最終ページ思わず落涙。
・いや、ま、自分に重ねるってんでもないけど、立っているところ、住んでいるところってのはときおり考えるよなと。

・読前にちょっとゲスな勘ぐりしてた、2011年3月11日の地震のことはあるのか?と思ってましたが、それに関してはなかったです。むしろ変なトーンになるのでなくてよかったのかと思いましたし、ない状態で、今出すのはむしろ意味があることだなとも思いました。

・自分が住んでいるところと同じ雪国シンパシーということで、前作「中央モノローグ線」より好きです。田舎ネタはもちろん、雪国ネタもわかるところが多いですし。

・あと、登場キャラでいうと座敷わらしさんが好きです。彼女は幸せになってほしいところです。

・4コマ史上に残るとかそういうこととちがう場所にある名作とは思います。前作も含めて。

オススメ


小坂 俊史¥ 780



参照
[卯子酉神社]
小さいんだなあ。そいでマンガのほうの描写の正確さにおどろきます。
posted by すけきょう at 17:04| Comment(0) | TrackBack(0) | オススメコミック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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