2011年07月17日

「銀の匙 Silver Spoon」1巻 荒川弘

・圧倒的だな。
・けなすつもり、あるいは2発目(3発目)のまぐれはあるのか? そういや中国武術マンガは途中で読むの止めたよなあ、なんて読みはじめると、その圧倒的さにクチをパクパクするしかなくなる。
・いうことがない。「よかった」以外のコトバがない。

・でも、この段階からいろいろいうのがプロのマンガダイバーってもんよ。だれかが「許してください」ってあやまるまでマンガダイバーって使い続けてやるぜ!

・北海道の農業高校の酪農科学科に入学した1年生の目からみた酪農高校マンガ。

・いろいろと規格外の農業高校のすごさ、しかも、北海道のそれはさらに規格外で、普通の中学からわけあって編入してきた主人公は翻弄されつづけているわけです。
・そこをコメディ、シリアス、絶妙のバランスで展開し続けます。コメディ配合が多め。

・ああそうかと。ぼかぁ気がついたんだよ。

吉田 聡


・これが週刊少年サンデーで連載されていたじゃないか。
・学園部活動マンガの大金字塔でありますし、荒川弘氏に相当な影響を吉田聡氏は与えております。とくにギャグ方面のノリやセンス。

・本作が週刊少年サンデーで連載されているということ。おれには無関係とは思えないですね。
・サンデー側はなにをのぞんでいたのかわかりませんが、荒川氏がこれを出してきたということがしびれるなあと。ダークファンタジーでなし、中国任侠アクションでなし、コレなんですよね。「かつて」の王道である学園日常コメディ。
・ま、本人にきくと全然ちがう答えがかえってきそうですけどね。

[銀の匙 Silver Spoon]


・いろいろと上手い点があるんですよね。
・でも、おれが1番と思うところは、キャラの「把握させ」能力です。
・基本主人公にカメラをすえ、彼と彼の目線で話を展開させつつ、次々と新キャラが登場する。考えぬかれた「わかりやすい」キャラ。
・格ゲーのキャラクターデザインによると、シルエットでもだれか判別ができるようにするそうです。
・ここんところのマンガ家はどうにもうこうにもこの「把握させ能力」が弱い。んまあ、リアル志向だったり、大作志向だったりして、どうしても大人数のキャラを登場させたがり、なおかつ、物語を進行させるのに気を取られ「このキャラの設定がこうなのは当然わかってますよね?」という前提でグイグイ話が進んでいく。
・で、そもそもの話もキャラも魅力がさほどない。こんなのばかりよ。

・荒川氏もキャラは多くでてきます。すごく正直、「ハガレン」の場合、もうちょっと省略してもいいんじゃね?ってキャラも多いですが、あまり気になりませんでした。なぜなら、イニシエより伝わる必殺技、「別に無視しても大丈夫」があるからです。

・本作、1巻にかぎっては、主人公以外の顔も名前も覚えてなくてOKです。主人公も名前はあまりカンケイないです。物語をタンノウするには知っておいたほうがおもしろい。でも、なんとなくで大丈夫ですって親切設計。
・なおかつ、ややギャグ方面にシフトするかのようなワキキャラのデフォルメ具合がまたきっちりとキャラを把握させていく。タマコさんを筆頭に。

・あと、上手いのはテーマのさりげない提出。たぶん「イノチを食らう」ってことなんだろうと思うよ。酪農ってのはそれがすべてだからね。ヨソのイノチをちょうだいすることで自分の血肉となり生きる。「食」のシーンが多いのは偶然じゃあねえよな。それもタイトルにつながってくるし。
・そしてそれは「鋼の錬金術師」にもつながってくる。ハガレンでの重要なテーマ「等価交換」ってのはまさにそのことだからな。よくできてるよほんと。前の作品にも思いをめぐらせる。ちょうど完全版が刊行されてるしな。

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・そしてさらに荒川氏のエッセイコミックにあたるこれにもつながる。氏、自身の農業高校時代のマンガにもリンクしていくわけだよ。
・そう、荒川氏本人にも興味がつながっていくんだよな。
・空手の有段者で妊娠出産時にもほとんどハガレンの連載を休んでないという鬼神のごとき彼女は、リアル「銀の匙」を過ごしております。
・おれがすごく謎なのは、その生活のどこに「ハガレン」を書かせるような教養やエンターテインメントが入り込んだのだろう?と思ったんですよね。少なくとも「百姓貴族」には書いてありませんでした。

・で、つまり、作者にはみじんほども関心がないのかしら?と、相変わらず、キャラに色気がありません。具体的にいうとセクシャルな部分での魅力が感じられません。もしかしたら女性は男性キャラに色気を感じ取ることができるのかね?
・だから、荒川氏はラブコメ、もっといえばエロコメは絶対に描くことができないだろうなあ。絶対だよ。万が一あってもおれの琴線に触れることはないな。

・そう、本作「銀の匙」で最大の不満点は女性キャラに魅力が足りない。ヒロインはなんだか記号みたいだ。一応、主人公が惚れてつられて馬術部に入るきっかけになってるのに、おれだったら「あんな女」でスルーできるくらいだ。もうちょっとこうなんていうか、なあ?
・まあ、タマコさんは魅力的だけど、セクシャルという意味じゃないし。
・コレに関してはもうしょうがないです。それをカバーして大きく上回るほど「おもしろい」から。あきらめてます。

・Amazonのレビューにびっくりするほどの安定感とありましたけど、たしかにそのとおりだったなあと。もう看板背負ってる風格あるもんなあ。そりゃあそうか。

・あんまり長くなさそうな気がしました(ガンガンがほっとくわけないから)。そういう意味での「期待」もこめて。

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posted by すけきょう at 11:57| Comment(0) | TrackBack(0) | オススメコミック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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