2011年10月15日

「ドリフターズ」2巻 平野耕太(少年画報社)

・本書にあった2文字「狂奔」ね。まさに読むものをそれに駆り立てるマンガです。ああもうほぼ書くことがなくなった。最後の1行じゃんこれ。

・ということで仕切りなおし。

・世界史日本史の「超人」たちがファンタジー臭あふれるモンスターと妖精がいる中世RPG的な異世界に召喚され、「漂流者」と「廃棄物」とチームに分かれて戦うというあらすじです。
・そしてもうしわけないことにおれは歴史がからきしでさあ。織田信長やらジャンヌ・ダルクあたりはさすがに知ってるけど、ほかは「ああ」みたいな。また、ベタな方向より渋目の「非業」な、あるいは、「栄光なき天才たち/森田信吾」な感じの方が多くてな。こっち方面の話はできない。
・とはいえ、それぞれの人物をウィキペディアで調べて「ほー」って感心したりはする。思わずそういうことをするチカラがある。エロ同人で気に入ったキャラの原典にあたりたくなる感じでしょうか。
・2巻では山口多聞氏とか調べたわ。大きな鳥に乗って爆撃する指揮をとっていた。Amazonのレビューで「おれは歴史好きだから大爆笑した」みたいなことが書いてありました。
[山口多聞 - Wikipedia]

・あと、こんなのもある。

[【平野耕太】ドリフターズに出てきそうな歴史上の人物まとめ - NAVER まとめ]

・そりゃあもう歴史好きにはたまらないだろうな。「なんでもあり」(もちろん、そうみせかけていてきちっとルールがある)なんだから。

・ということで、2巻クライマックスでは、本作の物語牽引役である島津豊久氏と炎の魔術を駆使するジャンヌ・ダルクとの対決がはじまってます。

・そして、おれは作者について思うわけです。
・平野耕太氏は早い段階でもう「あがり」な立場にいらっしゃる気がするんですよね。あがりというコトバが適切なのかわかりません。えーと「アウトオブ」な、あるいはニュアンスとして誤解されそうですが「浮いている」とか。
「なにを描いてもOK」な感じをすごく受けます。それはすごく早い段階から。
・たとえば、荒木飛呂彦氏や秋本治氏のように、人気取りレースに参加免除なイメージありますよ。
・そしてそれはどうしてかというと確実な定評があるからと思います。
・ちょっとフレーズとしてどうかと思いますが(こればかりね)、確実な「取れ高」、すなわち金を出すファン層がみこまれるマンガだからと思います。
・それは1行目に書いた「狂奔」。読者を狂わせ奔させる。とくに、奔ですよ。奔放で奔走ですよ。ウキャーと叫びながら、窓から飛び出してかけ出していきたくなるくらいのおもしろさが。

「大師匠さま
えらい事に
なりました

連中完全に
常軌を逸して
います

しかし
その考えに

魅かれます


この作中のセリフがすべてだったりします。
大好きな人たちが大好きなところで思う存分大暴れしてます。
そのセリフを「事実」にするためにヒラコー先生はイノチを削ってるサマがありありとわかるわけです。「魅かれ」るキャラをガシガシ描いていきます。

黒ベタに目だけがギョロリってヒラコー氏18番の「決め」も乱発するくらい「これしかない」ってクライマックス100連発な状態をてんこ盛りにして目の前に差し出してきます。
・各ページ各コマ各セリフにココロが震えます。おれがもっともふるえるのはセリフです。コトバの持つチカラを本作であらためて思い知る。実に思い知る。
・前作「ヘルシング」でのネットでは超有名なあの演説。アレにココロを射たれたヒトは多いでしょう。それはたとえヘルシングを読んでなくても。(参照:[諸君、私は戦争が好きだ]

・長い文章をさらさらと読ませるチカラ。短いセリフに多くを感じ入らせるチカラ。そしてセリフのないところの効果。いちいち引用したい気持ちでいっぱいにさせるほどミゴトです。いちいち朗読したくなるほどミゴトです。
・それは、たぶん、歴史に詳しかったりオタク知識に詳しかったりその歴史人物がスキだったら100倍でも1000倍でもでしょう。
・というか、つまり、それぞれの歴史ファン、有名人ファンを相手にして「これしかない」をやってるわけです。その緊張感や気概はやっぱりハンパじゃねえよな。けっこうなプレッシャーもあるよなあ当然。織田信長はあんなじゃないとか。ジャンヌ・ダルクはもっと巨乳だとか。
・もうあんまりおもしろくて読む手が止まるくらい。最近はおれのそういう感動の容器はすぐにいっぱいになるから勿体無くてすぐに読めないんだよね。冷却期間が必要なんです。寸止めオナニーみたいなもんですね。

・そして思うよ。たまらなく「ソース味」だなって。
・あれっすよ、「孤独のグルメ」で出てきた「男の子はソース味」ってやつよ。
・長い列順番待ちの洋食屋。大盛りじゃ効かないくらいフライが山盛りの「ミックスフライ定食」しかない。そして客はほぼ野郎。男らは黙って列をなして待ち、しかるのちに黙って出てくる揚げたての「それ」にしこたまソースをぶっかけてあとは豚のようにフガフガと食う。そして黙って出ていく。それは毎回まんまと美味くて、まんまとまたこなきゃとココロに誓うことになる。そしてまんまと満腹。

・ノるソるはけっこうあると思う。たとえば、ぶっちゃけ、女性がフガフガいってる図式が想像つかない。
・そしておれは狂奔中。
・3巻は待ち遠しい。でも、まだ2巻を読めばいいかって気にもさせる。そういう「反芻」のチカラもまたハンパない。

・2種類内蔵してるような気がするんですよね。熱量で一気に読ませるBPM160くらいの「一気呵成」のと、じっくりと歴史ネタやセリフの妙などを検分するのと。両方対応。

・しかしどうなる? 実に、ヒラコー先生、未完も多いでなあ。それが心配。おれが死ぬまでに終わって欲しいと思うよ。というか終わるまで死ねないよ。きちんと描いたらすごく長そうよ。

オススメ

平野 耕太¥ 560


posted by すけきょう at 15:15| Comment(0) | TrackBack(0) | オススメコミック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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