2011年11月13日

「作家蛙石鏡子の創作ノート」西川魯介(白泉社)

☆当初の予定では「文学の極意は怪談にあり」(佐藤春夫)な方向で怪奇・幻想小説家とその弟子が様々なエロ怪奇な目にあうという話を考えていたのですが、連載を始めてみたらツンデレ師匠とボンクラ弟子のうすらエロいラブコメ的様相を呈するソレになりました(あとがきより)


・それがたまらんのじゃあ。
・ということですっかりニヤリングのイカリングの怒りのアフガンな今日このごろです。
・西川魯介氏は「名前買い」をされてる方で、毎月の発売予定に名前をお見受けすると100%の確率で購入予定にいれております。そしてまんまと毎回おもしろいです。

・と、近作、さらに西川氏は「いいアンバイ」になられており、それは今作でけっこうなピークに達したかなと思われるのです。ま、おれ調べですが。

・おれがこのあと書こうとされてることは「エロのサジ加減」ということなのです。またレイによって童貞根性満点の屁理屈をこねていきますよ。アーユーレディ?

「作家蛙石鏡子の創作ノート」は上記引用のような内容で、少し怪奇な「SK」なノリでありつつも、どんどんとその割合は先生表現によるところの「うすらエロいラブコメ」です。この「うすら」がかなりいいとおもうのですね。

・メガネでクールな眼差しで笑わない、語尾が「〜のだ」の蛙石鏡子(かわずいしきょうこ)先生と、同じくメガネでショタでエロ妄想ばかりふくらませてはいるけど、紳士なので妄想どまりの弟子がメインで、弟子のエロ妄想にあわてふたむきながらもきびしいツッコミをいれる先生という構図で展開していきます。
・随所にマンガパロや綿々とつながる西川ワールドのキャラや舞台リンク、そして、メインだったはずがわりと刺身のツマになっている怪談をあちこちにスパイスと効かせつつ、だいたい弟子のエロ妄想がサービスシーンということで、ぶっちゃけますが、先生は、リアルにエロなことを一切しないという構図になっております。

・先人も現在のヒトも悩むヒトは悩むだろう、エロコメにおいてメインのヒロインがどこまでエロいことをするかってサジ加減。本作では王道ともいえる「一線を守る」でした。そこがまた新鮮。最近はけっこうなタイミングでエロコメだとヒロインはいたしますからね。

・第1話。先生は依頼されたからって官能小説を書きます。弟子に清書をたのみます。弟子はエロくてたまらないので、清書しつつもたびたびトイレにいくハメになりますし、「もしかして先生も書きながら」なんて妄想をします。それがまたたまらないことになります。
・けっこう消耗しつつ、先生に清書をわたしたら、先生は「どうだった?」とおずおずとたずねてきます。「最高でした。すごく使えました」と素直に答えます。先生はあわてます。そして怒って「エロ猿でてけ」と追いだしたあと、弟子がコーフンしてるサマを妄想してコーフンしかかって「いかんいかん」と振り払うのです。
・だいたいこんな感じでたまらないのです。

・以前の作品では、西川先生は相当なものをお描きになっております(でも、純粋「成年コミック」マークはないか)。それらにくらべるとそうとうヌルいと思われます。エロ要素ゼロのラブコメもございますけどね。
・商業出版の単行本はだいたい読んでいるとは思いますし、西川先生におかれましては同人も少しは読んでおります。まあ、ファンを名乗っても訴えられないとはおもうのです。
・で、本作のエロさはすごくいい湯加減だったなとおもうのです。それはけっこうすべての作品の中でも。
・ひとつ危惧してるのは、単純におれが蛙石鏡子先生がツボだって事態です。好みであることはまちがいないんだけど、おもいのほかのお気に入りだったのかもということです。
・ただ、それを加味しても、かつ、それをできるかぎり排除して考えたとしても、「いい作品だなあ」と。たまらない気持ちにはなるのですよ。

・さ、ここから余談コーナーですよ。
・少年漫画誌でデビューして、いろいろあって成年コミックマークがつくマンガをお描きになってる方っていますよね。
・そして、成年コミックマークからはじまって少年誌や青年誌で活躍されてるマンガ家さんもいらっしゃいます。
・こう、なんていうか、それぞれの「いいアンバイ」がみつかるんだなあとおもうのですよ。わかりやすいコトバでいうと「新境地」ってやつでしょうか。
・それはすごくサイワイと思います。

[「あまくちナイト」1巻 富沢順(竹書房): ポトチャリコミック]


新境地の好例。

・それでいうと西川氏はずっと「いいアンバイ」の位置をキープされていてスゴイなあと。そういう作家さんもいますよね。デビューからいい意味で同位置にキープし続けておられる方。多少の幅はありますけど、それが大きく様変わりすることがない。

・どちらがどうということはありませんし、本作も、西川氏の過激なほうの幅を期待されておられる方には物足りなさもあるのかもしれませんが、おれにはいいアンバイだったなと。

・エロ妄想すらない、酔っ払って弟子と添い寝してて目が覚めてから先生があわてるって話なんて、とてもよかったですよ。そこから後半への流れの甘酸っぱい感じはとってもとってもだ。

・と、これがでも「エロくないのか?健全なのか?」というと、十分にエロなんで、女性でも大丈夫とはいえないのがはがゆいのですが、そこいらの食えなさも含めて西川先生のアンバイなんだろうなあと。
・ついていきますついていきます。大事なことなので繰り返し書いてみました。

あとおまけ。これは1回やってみたいなと思った。
[Twitter / @sukekyo: 美味しそう。「蛙石鏡子の創作ノート/西川魯介」より。 ...]



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posted by すけきょう at 14:24| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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