2011年12月05日

「アゲイン!!」2巻 久保ミツロウ(講談社)

・困っている。このマンガをどうとらえればいいのか。

・すごくおもしろい。
・おもしろくない。

・この2つがおれの中にある。割合でいうと、すごくおもしろい8なんだけど、いや8.5かな。同時に「おもしろくない」ってのが確実にある。
・ならして誤差の範囲内ということで「おもしろい」でいいじゃないとは思うのだけど、どうにも割り切れない「なにか」がある。
・そして最大の問題はその「なにか」が自分でも確実に特定できていないことだ。
・だから、1巻を5回6回と読み、2巻も同様に。さらに1巻から通して3回4回と読んでいる。まだよくわからない。だから、「モテキ」も買おうかと思っているくらい(現在、2巻まで買って、4.5巻のインタビューを読み終えた)。

・主人公高校卒業式。見た目がこわくて金髪という理由で全員にほぼ無視されていた無為な3年間。別に思い残すこともない。ただ入学式でみた女性の応援団団長の雄姿がフラッシュバックし、最後にひと目写真だけでもみておこうと、つぶれてしまった応援団の部室に侵入しようとしてたところを彼氏と待ち合わせしていた女子生徒に目撃される。その女子生徒が逃げるのを追いかけようとして2人階段から落ちて、目が覚めたら入学式当日。また1年生の自分。
・で、その年でつぶれた応援団を自分の手で立て直すことができるんじゃないか?と。なにせ自分は3年間の記憶があるわけだし。

・こういう話。
・リプレイモノですね。リプレイの状態を物語内では「アゲイン」といいます。

・ホメるのはカンタンです。すげえおもしろいから。すみずみまで気がくばられて水も漏らさないFUNがつまってます。
・応援団長、いっしょにリプレイした女子生徒、応援団をつぶそうと画策するチア部部長、その部長からハニートラップとして派遣された同級生など、「きれいどころ」もたくさんいるし、同級生と応援団長はマンガキャラメイクでは掟破りの同じ髪型なのにちがう人物という、相当に画力ほかに自信がないとできないことをサラリと行われてます(セルフツッコミもしてますし)。この「キャラ把握させ能力」にまずしびれますね。

久保 ミツロウ¥ 250


・これみてると3種類の「目」がありますよね。だから、同じ髪型でちがう人物って離れ業が使えるんですよね。こういう描き分けは、描くこと自体より、マンガ内に同居させるのが難しいんだろうなあ。

・おれ内ではけっこうガッチリしてるセオリー「おもしろいマンガ」の条件。
・1は「カワイイ女性キャラを描く」ことで、2は「各キャラを読者に確実に把握させる」です。だいたいこの2点でふるい落とされるマンガはすごく多いです。とくに2ね。
・魅力的なニンゲンを創りだし描くってのはとっても難しいことだと思う。ここしばらくはあらためて思う。ときおりカンタンにひょいひょいとやっておられる方がいますけど、そんなのどのジャンルにも10人といないような気がする。またそういう「天才」ほどはずしたときにものすげえことになるしね。ギネスブックに載るような失敗作が生まれるわけよ。余談。

・前記の通り何度も読んでますが、そのたびに細かいテクや、セリフの妙、デフォルメの妙に唸ります。
・新キャラを登場させる直前に「フリ」があるんですよね。「チラ見せ」するんだよ。そして「新しいキャラが登場しますよ」とアナウンスしたあとドンと。そして早急に「どういうヒトか」を提示してます。シモネタですが適切なコトバなのでしょうがなく書きますが「前戯はバッチリ」なのです。

・1巻冒頭、主人公は夢をみてます。応援する団長の夢。夢特有のうすらぼんやりとした感じで。そして母親に起こされます。2段ベッドの2階に寝ていて母親に素直に起こされるおとなしい主人公。そして死んだおばあちゃんの仏壇に手を合わせる。そしてカガミに映る、それまでのおとなしい行動に似合わない金髪ロングの不気味な容貌。そのギャップにキャラを脳裏に刻みつけられる。
・そして夢で見たぼんやりした応援団団長が入学式でバンと現れるわけよ。

・もうひとつ。
・2巻。
・辞めていったモト団員が登場するシーン。3年の2人。空手部の掛け持ちのやつは、道場へと向かう階段の下からのぞいている主人公らを「見下ろ」し、もう1人のチャラ男っぽいヒトは、コンビニの雑誌コーナーで屈んでマンガを読みながら「見上げ」るわけです。この対比で、性格をくっきりと映しだしております。主人公をはじめ、他キャラも、きちんと2人に対する態度を明確に打ち出して、より性格をきちんと描き出しております。後半にも、空手部先輩が怒鳴った次の瞬間にコンビニ先輩がフォローしたりと、キャラをわかりやすく対比させております。

・最近のすっかり主流になった、シリアス7にギャグやコメを3くらいの割合でテンポをかなりアップしてテンション高めている感じもステキ。
・荒川弘氏はコメやギャグのところに吉田聡氏ゆずりな流れがありますが、久保ミツロウ氏は、おれの知ってる分じゃ、モテキ4.5巻では対談もされている江口寿史氏の影響が多めにありますね。団長がキレるところの「くわっ」って感じとか。
・2巻では、チア部の策略が爆発し、「モトの世界」だと応援団がつぶれるきっかけとなった合同練習がはじまるというクライマックスがあります。そう、クライマックスなのです。

・ここがまずひっかかるところ。
・サクリとネタバレするけど、主人公ののぞみは2巻で叶うわけよ。応援団は存続することになるから。主人公も入ることになるけど。
・描かれてなかったし、主人公が元の世界でもみることのなかった、応援団がつぶれて絶望する応援団長をみなくてすみました。
・つまり、「アゲイン」は成功したわけです。

・じゃあ3巻以降はなによ?

・いや、実は、そこもきちんと提示してあります。それはネタバレしないことにしておきます。
・そういうことホントに漏れがないです。スキをみせたら刺されるなんて怯えながらお描きになってるんじゃないかと思うくらい。
・ただ、いろいろとどうかな?
・ポイントとして、高校生ってのがあるんですよね。3年生の卒業式だった主人公が1年の入学式に戻る。そして、3年生の応援団団長ひとりだった団をアゲインのチカラでつぶさないようにする。
・それは2巻で達成されたんですよ。
・リプレイもの、似たような設定で、タイムスリップモノは、目的ありきのストーリーになるのが決まりです。それこそが旨味のすべてですから。
・もう1度やりなおして、前回、上手くいかなかったことを今度こそは上手くやり遂げるってのが旨味です。

・2巻19話の団員がそろったときの団長の見開きで描いてもいいんじゃないかって、もう撃ちぬいてくるくらいの、必殺の笑顔をみたら、「これ以上」があるのか?と思いましたよ。
・それは1巻3話のなにげないひとコマである、昼休みだれもいない応援団室でひとり無表情で食べている団長の顔との対比になってると思います。おれはこのマンガ2巻までで1番キたのがこのコマです。この応援団長の寂しさが、アゲイン前だったら1年間続いたんでしょうね。それはもしかしたら卒業した後もココロのどこかに潜んでいて。

・で、ポイントとして3年生の団長はこのまま1年間で卒業するんですよね。でも、主人公は3年前から戻ってきたんですよ。じゃあ、残り2年どうする? というか、ほぼこの団長が在籍してる1年間の話にならざるをえないと思うんだよな。なにがどうころんでも主人公が2年になって以降の話がgdgdになるのは決まってるから。
・さらにもっといえば、普通は、3年生、2学期で引退だよな。早いところは1学期か。そう考えたら非常に期間の短い話になるはず。
・ということは「先」も短いはずなんだよな。

・推測だけど、本作は恋愛に向かいそうで向かわない寸止めな感じを意識されてるような気がする。「モテキ」でガイーンときて、なおかつそれで「売れた」から、「そういうところ」を求められてるから描いてるけど、キモは恋愛以前のヒトとのつながりとかだろ。ヒトはヒトを応援し、応援されて生きていくって感じで。
・それをよく表しているのが、2巻にあったエピソード。
・いったんすべてを投げた主人公が家に帰ってコタツでフテ寝していると、これまで関わったメンバーが家に押し寄せてくるわけよ。そして、ヒトとの結びつきは一方的に切ることができないってね。
・主人公は短い間にモーレツな数のヒトと結びついていく。それは強固なものになりそれ故にアゲインも成功するし、団長にしてもそういう感じで切れかけた結びつきを主人公らのはたらきで再び結びつくことになる。それこそがキモだし、2巻巻末での3巻予告をみていたらそれはドンドコ増えていきそうな感じ。

・それはおれの中の「すげえおもしろい」の8.5にはあまりないところなんだよね、あ、もっと正確にいうと8.5にはあるけど、1.5の「おもしろくない」を打ち消す要素にはならないんだろうな多分。つまり1.5は消えない。

・つまり2巻でいったん終わってる。
・ただ3巻以降、この2巻までの「おもしろさ」を上回る可能性はあります。作者のチカラを持ってすれば達成できそうだとも思います。このままいろいろなキャラがまじってからんでいってドタバタしてるのをみてるのは絶対におもしろそうだし、「いいシーン」はいっぱいありそうです。
・ただ、それはおれにとって「どうなのかな?」ってね。

・通常、長く続くとリプレイの設定がうやむやに、そしてそれは先に進めば進むほどgdgdになっていきます。
・ああそうだ、ここまで書いて思い出した。
「代紋TAKE2」だね。
・チンピラだった主人公がタイムスリップして10年前に戻り、今度はうまくやって金の代紋を背負ってやるって野望のマンガ。すごく長く続きました。
・まあ、まさかこれを目指してるワケではないですよね。

・そうわかったんだ。おれはSF野郎だなって。
・もうずいぶんとお見限りでこういうこというのも恥ずかしいことなんだけど、毎日2冊ペースで文庫本をガリガリ読んでいた10代でした。小説もそうだけどマンガもそう。少し不思議のSFでもサイエンス・フィクションのSFでもどっちも大好物でした。川島なお美氏におけるワインくらい。吾妻ひでお氏のマンガにあった「SF」のカタチのアザが身体にあるくらい。
・なかでも時間モノ、リプレイモノってなんだか特別に食いついてるんだよな。なんだろう?と自分でも思うのですが。広瀬正さんの熱狂的なファンだったからか?集英社文庫ででた全集は発売日に買って読み終えていたくらいで。

・そういうところで、些細な「粗探し」してるのかもしれない。SFモノの宿命です。

・たとえば、リプレイモノでよくある自分の素性を隠すってシバリや制約は本作にはナイはず。なのにみょうな強制や拘束がはたらいている。しかしその説得力はみょうに弱い。というか、「そんなバカなこといったら笑われる」程度のえらい弱いものがある。
・そういえば、「まわりの反応が気になる」ってのが本作では顕著ね。
・主人公、3年もムシされていたらけっこうそういうところは図太くなって平気になるような気がするけどなあ。各キャラ、そんな人目って気になるか?って思ったり。

・個人的に気になってるキャラは2人。まず北島先生。本作で唯一名前があって活躍している応援団の顧問の先生。この先生のキャラ造形は非常におもしろい。生徒に強制せず矯正せずおのおのの裁量にまかせているんだよな。それがアゲイン前の問題を引き起こしもしたんだろうけどね。だけど、あの距離感はおもしろい。素直に学生時代に会いたかった先生だなと思う。

・あと、チア部の部長ね。現在、彼女だけが「アゲイン」前よりあきらかに悪くなってる。まあ悪事がうまくいかないってことなんだけどね。それを抜きにしても彼女が思い描いてそして実現してきたアゲイン前とはちがう展開になっている。この先、登場するのかどうかはよくわからないけど彼女も不思議な存在感があるなあと思うし、ああいう悪事をするタイプをああいう風に描く作者がすげえなあと思う。モーレツないきおいでカーラーでギギギギとまつ毛を立たせてる描写とか。
・このチア部の部長は、恋愛至上主義者でいて団長への恨みも思考回路もすべて恋愛にからんでいる。ラブゲームを画策せずにはいられない感じ。そういう方を「悪役」にしているというのがまたポイントのような気もするんだよね。
・穿った見方だろうけど、「モテキ」的なキャラとして配置して、「10代は恋愛も大事だけどそれだけでもないよ」ってメッセージを機能させるための悪役というか。

・んまあ、なんのかんのでいうと値段分の10倍は楽しませていただいてるんだ。もう何回も読み倒してるし。
・この文章もボーダイな時間をかけてかいてるからな。
・それもこれも1.5の「おもしろくない」が要因なのかもしれない。そういうふうに考えるならば、それはもはや「おもしろい」の仲間になるよな。

・なお1月に3巻が出る模様。「答え合わせ」は早急にできるね。あと「モテキ」も3巻4巻読んでおくよ。

久保 ミツロウ¥ 590


久保 ミツロウ¥ 527

posted by すけきょう at 15:00| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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