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・19巻で連載300話を突破し、単行本も20巻に到達しました。2003年の連載で来年で10年。
・あらま、すっかり大御所じゃないですか。ベテランじゃないですか。古参じゃないですか。
・1巻からしばらくは心配していたことを思い出す。
・商業第一作品集「こさめちゃん」からのファンであり、いかした短編を描かれる方という認識が強かったので、毎週連載で「ともお」ばかりになるのは「しばり」がきつくて窮屈でもったいないことになるのかと思っていた。
・でも、他の連載もモノにされていたり、なにより「ともお」内でさまざまな変化が見られるようになった。
・団地に住んでいる小学生のともお少年の話です。という、タイトルに沿った、家族や学校や友人との話もあるけど、それとはまったくカンケイのない、ともお自体が背景くらいの、全然ちがう短編のカメオ出演としてともおが登場しているような話も数多くあります。
・たとえば20巻を例にとって話をさせてもらうと。
「勝負とは自分との戦いなのかともお」では、芸術コンクールにトモダチのヨシノブとケリコとともに作品をつくってみるという話。ともおらしく団地らしいほのぼのギャグマンガで、完成したポスターで大笑いしました。
・かと思うと「閉じ込められたぞともお」では、エレベータに閉じ込められたともおとJK2人、メインは「こないだ読んだおもしろい小説」を話すJKらで、ともおはヨコでマンガ読んでるだけです。
・限りなく逸脱してそうで、それは「団地ともお」内にとどまっているような、それでも逸脱してるのか。なんだかよくわからない感じですが、それもこれも含めて「小田扉」の作品ではあります。「団地ともお】ではあります。
・近年の特徴として「泣ける話」が多い。
・小田扉氏の作風として、ちょっとしたスカしがあったように思えるのですが、そこいらは年々弱くなり、ストレートに泣かせにかかってくるものが増えてきたように思えます。これには賛否があると思われます。おれ内にも2つの意見が別れてます。
「盗んだのは人の心かともお」
・上級生がプラモ屋で万引きしてるのを偶然助けてしまったともお。その上級生は万引きと疑われて迷惑してるというウソをともおは信じる。ともおといっしょに遊ぶうちに、自分のことを疑わないともおに心を打たれて上級生はプラモ屋にあやまりにいく。そしてともおはカンケイがないから許してやってくれと。
「団地ともお」のみならず、小田扉作品では終わりがなんだかムニャムニャしてるのが多いんですよね。それは、上記の作品のようにバシッと決めて終わることにテレがあったり、それを避けるためにスカしたりしてたためというのがあると思うのです。
・だけど近作では泣かせのところは素直に決め、1話でキレイにオチがついてる、「いい話」が多くなってます。
・これの賛否ですね。
「ムニャムニャしてる」と表現してますが、これこそが小田扉氏の真骨頂ではあるわけです。
・リアル世の中においてはズバンと決まるような「いい話」はあまりなくてどっちつかずのよかったのか悪かったのかよくわからないまま、終わったのか終わらないのかすら判断できず、なにかひっかかったまま今に至るなんてことはざらにあります。
「ともお」ではそういう感じをうまく描けてる回があります。その「キレの悪さ」にはたまに強烈リアルな余韻を残します。
・20巻でいうと「チョコはビターが好みかともお」とかそうですかね。バレンタインのチョコレートあれこれです。いろいろな思いが錯綜して、よかったヒト、悪かったヒト、ともおみたいによかったのか悪かったのかわからないヒトなど様々な人間模様がムニャムニャしてます。
・これがバシっと決まるオチになると、ムニャムニャの余韻が薄れるような気がするんですよね。前記の「盗んだのは人の心かともお」だとキレイでいい話になり感動もしたのですがムニャムニャは薄いです。あと悲しいですし。
・連載マンガ長寿化のため、ちょっとともおが前よりもものわかりがよくなっているよなとも思う。もともと「いいやつ」ではあったけどもっとガキっぽいところもあったような気がするんだけどね。というよりか、前記のように話の幅が広いから、ともお自体の役割も広くなるわけで、小4らしさ爆発だったり、大人や親を改心させたりすると、いろいろあるので「ともお」像がちょっとブレる感じはありますよね。そこいらも痛し痒し。
・アニメ化もされた「ツヨシしっかりしなさい」。主人公のツヨシは母と姉2人の家族に下働きとして振り回される毎日ってコメディが、こき使われているうちになんでもできるスーパーマンみたいになっていったという設定。それで後半はスーパーマンとして活躍する場面が増える。そういう感じを思い出す。
・主人公がブレる元祖でいうとこれまたアニメ化された「ダメおやじ」もそうかもしれないな。家族全員に半殺しにされるキャラから、金持ちの遺産を引き継いだためにスローライフなオヤジになってしまうという。
・その理屈でいうと「団地ともお」もアニメ化か!というか、本作はアニメ化すべきだろ。10年前から思ってる。しかも小4がみられる時間帯で。そいでスピンオフで「スポーツ大佐」が深夜アニメ化だよ。
・ともあれ20巻。知らぬ間に20巻。この知らぬ間にってのがいいんだよね。作る方は生みの苦しみなんてのもそらもうあるんでしょうが、いち読者として毎巻楽しみに待って読んで「あー楽しかった」のループを20巻で10年間。それはとっても幸せなことと思う。ありがたいことと思う。
・30巻40巻と続くのかはわかりませんけど、小田先生の作品はこれからも楽しみにし続けていたい。
・さすがにもうオススメって感じもないんだけど、なんかのタイミングでハマって毎週単行本を1冊づつ揃えていくなんて環境になられると20巻分(+小田扉作品)は幸せでいられると思いますよ。
・以下個人的な20巻。
「死ぬ気になれるのかともお」
試験で死ぬ気になって勉強する話。これで落涙。小4でお馬鹿でやさしいともおが愛しい。バレンタインの話もそうだけど、ともおはヒトの感情や気持ちの機微を読み取ることに関しては天才だしスゴイ大人(オトナでもダイジンでもいい)だよな。
「最高のトレーナーは誰だともお」
・一方で同じ団地のヨシノブをフィーチャーした回も良かったね。「死ぬ気〜」と今回の2つには小田扉風の「やさしさ」や「愛」の「芯」がみえていていいね。
「段取りは大事だなともお」
・ともおらしさがなさそうである、ちょっとしたネタ回。休みの日、家族一丸で協力しあってイベントを満喫しようという話も、いろいろなイレギュラーが起こってって話。親どもがいい話にして無理やりまとめようとしてるというか自分にいい聞かせてる感じに「人生」を感じる。
・記念日の話、隕石の話、悪の心と天使の心の話、エイプリルフールの話あたりはひねりすぎた例によってアクの強い非ともおの「小田作品」って感じはしたかな。こういうのがないと逆に物足りなくもあるけど。