ジョナ散歩(2) (KCデラックス) | |
![]() | ケイケイ 講談社 2013-01-11 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
・小太りでオールバックでメガネのおっさんの妖精が現れて、「なんでも望みを1個だけ叶えます」というショート。
・おっさん以外は毎回ちがった方が登場。基本おっさんと望みをいうヒトの2人の会話劇。30代くらいまでの男女。
・おっさんの名前はジョナサンです。さあタイトルのワケがわかりましたね。
・オビに「地に足ついたフェアリーテイル。」とあります。
・ジョナサンはなんのために望みを叶えているかわかりません。なんでも望みを叶えることができます。だけど、常識のある妖精なので非常識なことをいってくる依頼主に対して反論したり諭したりします。
・高台に住んでいる47歳のオトコ。若いときに株で大当たりしてそれでギャンブル依存症になりかかり、家を建てて隠遁生活を選んだ。
・ひとりで日々淡々と暮らすと宇宙人になったみたいだなと思ってる。そしてふと「普通の生活」ってどうだったんだろうなと夢想する。
・とはいえ、今からあくせく働く気にもなれない。
・そんな彼が選んだ望みは何でしょう?
・OLの前に現れます。望みを叶えてあげるといわれて「世界平和」と答えます。なぜなら、私利私欲を述べるとマイナス査定になると思ってるからです。
・ジョナサンは査定なんかしませんよといっても、彼女は就職氷河期に100社以上面接で落とされてすっかりマイナス査定恐怖症になって怯えて暮らしていたのです。
・だから「査定されない人生」をお願いしました。ジョナサンは承諾しました。でも、すんでに気が付きました。査定されない人生というのはみんなに無視される人生ではないだろうか?って。
・じゃあってんで、審査されずに望みが叶う人生って願い直そうとして、サラ金に無審査で金を貸してもらうイメージが浮かび本能的に「ヤバイ!」とおもいます。これも取り消します。
・そんな彼女が選んだ望みは何でしょう?
・そしてそんな彼と彼女がどうなったと思いますか?
・そういう話がいろいろあります。ほかにアパートの住人のオムニバスを描いた「ホルト荘デイズ」がカップリングされてます。
[Amazon.co.jp: ワンダフルライフ?(6) <完> (ワイドKC): ケイケイ: 本]
ワンダフルライフ?(6) <完> (ワイドKC) | |
![]() | ケイケイ 講談社 2013-01-11 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
・同日に最終巻ではありますがアラサーの「喪女」OLのショートギャグも発売されてます。どっちかというとこっちのほうが本線な感じではあります。前作「ジュゲムジュゲム」に近いのはこちらです。
・そんなことをいったら元も子もないようなことをキャラがいいます。そういうギャグ系統。楽屋落ち的であり、女子の内緒話的な。
・今ここでひねり出したコトバでそんなコトバはないしそう有効ではないような気もしますがケイケイさんは「ぶっちゃけ系」かなと思ったりします。
・新井理恵さんの「☓ペケ」ってマンガが「ぶっちゃけ系」の代表かと。ほかには中崎タツヤさんとか。
・マンガではないんですけど、ダウンタウンの松本人志さんがテレビドラマで教師をやったときの「なんかなー」って空気が漂っていたのが顕著な例ではありますよね。
・松本さんはコントでけっこうな演技力をみせますけど、それをコントでやられるゆえに通常のドラマにおいての迫真の演技もコントの延長上ではないのかって変なノリが生じる。この先、「ウッソよね〜」って豹変して笑わせたりするんじゃないか?ってつい思ったりする。そこにへんな緊張が生まれる。上手ければ上手いほど迫真のあるシーンになればなるほどヘンな感じになったりする。
「テレ」でしょうか。台本の上とはいえ、思ってもない柄でもないことをいっててテレる感じ。こういうのをマンガからも感じるときがあるんですよね。
・通常だと、マンガのキャラ自体がなにをいおうと関係ははないんだけど、「作者(自身じゃなくても)」が出すぎているマンガだとなんかそのへんがおかしく感じる。
・マンガ内においてそのマンガの約束をいろいろとひっくり返したりするマンガだと、そのキャラが逆にお約束にのっとって感情をこめて「お芝居」してるのが変にみえてくる。
「おもしろかった」「つまらない」より、そういうなんだかよくわからない未消化な部分や印象のほうがいつまでも記憶に残るんですよね。それはけっこうなマイナス材料になるんだよなあ。だからなのか、松本氏は「演じる」ことをだんだんとしなくなってきてますよね。ドラマに出ないもそうだけど、コントや映画も徐々にフェイドアウト気味のような。
・これが謎といえば謎なんだけど、作者が出すぎているマンガの方がそういう別方向のものを描いてもまったくテレを感じないマンガもあるんですよね。パッと思いつくところでは伊藤理佐さんとか西原理恵子さんとか。
・あ、西原さんはちょっと引きずるかな。
・伊藤理佐さんの場合、シリアス系のマンガは丁寧な描画だから「ちがう」ってのがわかりやすいんだけどね。「おんなの窓」と「おいピータン!!」の差とか。
・話を「ジョナ散歩」に戻して。
・本作はこれまでのケイケイ氏の「代理」である、20代後半から30代のしがないOLとはちがい、様々な年齢で「役柄」のヒトが登場します。ジョナサンはそもそも性別がちがいますしね。つか、妖精に性別とかも謎ですけど。見かけはただのメガネオールバックの小太りのオッサンですから。
・だけど、「ジョナ散歩」で展開されるネタのベースに漂う元も子もないぶっちゃけた感じはケイケイさんのままだよなあと思います。それでいてアラサーOLじゃない考えとコトバだなあと。世の中の酸いも甘いも横目で眺めてきた妖精っぽい妙な雰囲気が漂ってますね。
・この場合は逆に振り幅を小さめにしたところが勝因だったのかなと感心して読みました。
「なんでも願いが叶う」マンガなのに、叶う願いはわりにささやかなものが多いです。最終的にそういう着地点の話が多いです。
・ケイケイさんのほかのマンガでもそうですけど、「大金を手に入れる」ってネタはたいていロクなことになりません。それはケイケイさんの信条なのか統計的にみてそうなのかわかりませんけど。だから、本作でもジョナサンに「金」を普通に願うヒトはいません。
・ジョナサン自身も「おもしろい」「馬鹿らしい」願いを叶えたがっています。単純に、それを叶えるとどうなるかが楽しみみたいなところもあるからですね。
・そう、だから、叶える願いはちょっとしたことで、そのことで案外と叶えられたヒトの人生の変化もちょっとなのが多いです。
・よく「フラグを立てる」「フラグを折る」なんてフレーズを目にされると思いますが、本作は「フラグを曲げる」程度なのですね。
・以下、ポトチャリコミックお得意の流れです。「それでも本作はおもしろい」的な。
・実際、フラグが曲がる瞬間って意外にみることができませんし、それがささいなことだったりすると、あとから振り返ってもわからなかったりすることが多いですけど、「それ」は確かにあるわけです。
・よくみかけるフレーズ「ひょんなことから」っての。その「ひょんなこと」こそがジョナサンなのですよね。
・というか逆なのか。ジョナサンはちょっとだけフラグを曲げたつもりが思わぬ方向に流れるって話もいくつかあって、そういうときは軌道修正したりしてますね。ネタばらしになるから書きませんけど。
・そもそもケイケイさんの芸風が「庶民がささやかな望みをもってチマチマと生きる」的なものが多いからピッタリ合ってるですよね。
・そして、本作でその芸風の新たな切り口や試行錯誤が伺えておもしろいです。
・おれにもジョナサンが現れてたりなあ。彼は願いを叶えた後記憶を消している。
・相変わらずの、シンプルな線でいて、とっても丁寧でキレイな描画も冴え渡っております。なにげにカラーの背景とかは画集にできるクオリティと思います。
・ともあれ。3巻も楽しみに待っております。
「ワンダフルライフ?」の最終巻最後のバレンタインの話は今後の生きる指針をいただいたような気分になりました。こういうオヤジを目指そうと。
・あと「ワンダフルライフ?」6巻にも、「ジョナ散歩」の2巻内の「ホルト荘デイズ」にもジョナサンがゲスト出演されております。けっこうなお気に入りキャラなんでしょうかね。実写ドラマ化したら田口浩正さんがやるんでしょうかね(ちょっとちがうか)。