2013年02月23日

あなたを待っている〜地上の記憶〜

地上の記憶 (アクションコミックス)
白山 宣之
双葉社 (2013-01-12)


・白山宣之氏の遺作集です。とはいえ、作品は「少年答」と「10月のプラネタリウム」と本作の3冊。

・書店店頭で「遺作集」と知りアッと驚き、返す刀で買いました。
・氏の作品は全部がそうですが、本作も「遺作集?」と首をかしげるほどの完成度です。
・だいたい、音楽でもマンガでもそうだけど、未発表集や遺作集などは、いいかたが悪いけど「寄せ集め」的なモノは多いです。下書きだけだったり、途中でブチンと切れるように終わっていたり。まさに部品を並べてる感じで。まあ、それこそが遺作集っぽさでもあるんですけど本作には当てはまりません。

[大人になったら〜ビッグ作家 究極の短編集 水木しげる&手塚治虫&〜: ポトチャリコミック]

・最初に釘を刺しておきます。本作は、「お芸術」ではありません。純度が高い「娯楽作」が詰まっております。それが「遺作集」なのが驚きなのです。
・たとえるなら上記リンクのビッグコミックに準拠した大人の鑑賞に耐えうるしっかりがっしりしたものです。

・小津安二郎氏がマンガ家だったら?って視点で徹頭徹尾「っぽい」ものを尊敬を込めて描いた「陽子のいる風景」「ちひろ」で度肝を抜かれる。
・関ヶ原の戦いを物見遊山する地元の農民たちを描いた「Picnic」。
・平田弘史も同じ話を描いてなかったっけ? 怪力女性が殿様に仕えて活躍する「大力伝」。
・南海を舞台の大活劇。インディージョーンズ、トゥームレイダー、アンチャーテッドな「Tropico」。

・すばらしいを通り超えるような完成度。これで1冊、商品としてなんの問題もない。
・寄せ集め?バカいってもらっちゃ困る。もともとこの収録内容の予定だよって感じで。
・1番問題なのはこれが遺作集ということくらいでよ。

・そして遺作集だからこそというとなんだけど、すごいメンバーが寄稿しております。

(敬称略)
安部慎一・泉晴紀・大友克洋・さべあのま・鈴木翁二・高寺彰彦・高野文子・ 谷 弘児・谷口ジロー・平田弘史・ほんまりう・山本おさむ

・で、本書のデザインは大友克洋氏だったり。
・どうだい、圧倒的なメンバーじゃないか。そしてある「カラー」というか共通点を見出さないかい?「漫金超」的というかね。
・80年代初頭のマンガ界もロック界もあったニューウェーブな流れより出てきて、なんていうか現在もがっつり生き残ってる面々ばかり。つまりは実力派揃い。もっとぶっちゃけると大好きな方々ばかり。全員全部ではないにしろコミック持ってるわ。そしてまんまと面白いわ。
・そういう方々に愛されておられた白川氏です。

・各氏の寄稿を読む分には少年のようにさわやかで快活な姿が目に浮かびます。
・そんな心を持ちつつ、超人的な絵の上手さがありますね。
・70年代の劇画から大友克洋氏に代表される精緻な描画をベースにしつつ、各作品でタッチを変えつつも、根底には明るくて楽しい、それこそ少年が「楽しんで」描いておられるような絵がとってもとってもいいのです。
・絵がうまいことはマンガにおいては絶対的な正義ですね。おかげでまったく古びてない。昭和54年の作品も平成13年の作品も、でーんと威風堂々、並んでいる。平成25年に「懐かし補正」抜きに商品として通用するクオリティです。

・白山氏との出会いもそうですが、上記の大好きな面々と出会ったのは書店です。
・本屋で「あ、これはなんだ?」と、平台から、棚から、出会います。
・そして読みます。感動や衝撃を受けて、「マンガってすごい」と、改めて思う。もう40年くらいそんなばかりしているような気がします。
・書店という宝石箱からとびきり大きな宝石をみつけたときはまた格別だし、それだけでジマンしたい気持ちでいっぱいになります。
「どうだ?おれはこんなおもしろい本を見つけ出すことができたぞ」と。
・まあ今は便利ですね。ネットを介して大勢の人にジマンできる。

・そういう気持ちにさせるために本作は今も本棚で静かにあなたを待っているのですよ。
・ぜひ、みつけてください。出会ってください。本作はいつまでも待ってますよ。賞味期限は長いのであなたのペースで出会ってください(出版社的には早いほうがいいんでしょうが)。
・そしてこんなすごいマンガがあったのか。こんなすごいマンガ家がいたのか。こんなすごいマンガレビューサイトがあったのかと思ってください。
posted by すけきょう at 14:52| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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