・40年後の東京を舞台とした話。
・40年後でも上京したてでトモダチができるかな?どうかな?ってドキドキしたり、この知り合いはトモダチになってくれるのかなって感じなんだなあと思った。
・現在と地続きの未来で、この作品では3R法というエコを強力に推し進めた末の世界のようになっております。
・緑いっぱいの東京にデカイ建物の屋上にはすべて風力発電の風車がついており、なりひらばしってことで当然40年経ったスカイツリーのてっぺんにもくるくる回る風車がついている。
・消費は悪徳。その思想をもとにムダを一切なくした世界。というか、ムダ使いは逮捕される世界。ゴミ箱にはコインを入れないと使えない世界。あまった食品廃棄やビラ配りはムダ使いなので私服警官に逮捕される世界。
・そういう世界で、上京して大学生をやりつつ、おばあちゃんのやってる電器店も手伝う主人公です。
・気がついたら全部かどうかはわからないですけど岩岡ヒサエ作品はマメに手にとっております。
[ポトチャリポラパ/コミック/2008年3月/「オトノハコ」岩岡ヒサエ(講談社)]
・とくに好きだったのがコーラス部を描いたこの作品。コーラス部に入ったことで変わっていく少女の成長物語でした。
「なりひらばし〜」の主人公は、トモダチに誘われたコーラス部を家の手伝い(飲食業)があるからできないってことわるという寂しい過去もあり、上京してきたことでキャンパスライフを楽しんで「変わろう」と思っていたのにおばあちゃんのお手伝いをさせられるんですよね。
・それでも「出会い」はあるし、彼女自身仕事の手伝いをしたり、大学でできたトモダチとともに徐々に変わっていきます。
・岩岡ヒサエ的な独特の味わいキャラはてんこ盛りで登場しております。
・スナックの跡地に住んでいて、どうみてもそこのママなのに主人公と同級生で現役合格したトモダチとか、強烈な押しの強さの祖母、無口で力持ちで美人な電器店のスタッフとか。
・相変わらずの愛すべきキャラたちです。
・ところでなんで未来?
・40年後、こうなるかどうかはわかりませんが、うんと背伸びをすればみえてきそうなところで、前記したとおり3R法ってのが強力に作用してるユートピアでありディストピアな世界。ここいらはカギと思いますが、今のところ「話」には絡んできてません。彼女らの「生活」にはがっちり絡んでますが。そのなにげないところが上手いんですよ。
・たとえば、有料のゴミ箱。カードをスラッシュしたときだけゴミ箱の投入口が開く。そのタイミングでゴミを捨てるけど、「ついで」にトモダチの分も捨てることができるとかね。
・でも、廃棄前提でたくさん作る飲食業は営業停止になるし、それをチェックする私服警官がいるし、ビラを作ってばら撒こうとしただけで警察に連れて行かれる(主人公がやってしまった)とかね。
・ビラをまくのは違反だから、タブレットの電子広告を手に持って立つってのが「広報活動」。あるいは、店の前を通り過ぎるとメールでクーポンが送られてくるとか。
・スマホは映像が飛び出すね。
・その中で昔も今も芯のところは変わらずにたくましく生きていく商店街の面々ってノリがいいんですかねえ。って、問いかけてどうする? いや、ま、おれはいいなと思うのですが。未来だけどどこかレトロな感じも(もったいないからっていろいろとケチる感じとか)。
・長編にして代表作の「土星マンション」のように大きな話につながっていくんでしょうか。あとがきでゆるいマンガになるとおっしゃっているので、ハードな展開は「星が原あおまんじゅうの森」のほうでやられるのだろうか。
・近作では1番好きです。