・そうか。斑目に引導を渡したのか。
・長い長い時間をかけて「げんしけん」を読んでいたのは二代目では5巻、通算では14巻のこの1冊を読むためだったのかもしれないなあとしんみりする。
・ざっとあらすじ。
「げんしけん」って大学のおたくサークル。もう卒業したOB斑目(まだらめ)と彼が片思いし続けていたサークルの別な男子の恋人との決着が14巻の目玉でした。つまりは告白すると。
「(恋仲の)ケリをつける」ってコト自体、非常にリア充っぽいことで、そうならずに卒業した「げんしけん」はおたくの生態を描くってことでは、とってもリアルではあったんだけど、そのリアルをキャラでつきつめて、もう「ひとリアル」を盛ろうとするとこういうことになるわけだね。こういう感じ「四年生」とか描いていた木尾士目氏っぽい。感情や気持ちを追い詰める。
・人間関係の、二次元(のそれ)と三次元(のそれ)の間を行き来しているような、「あるある」であり「ないない」な感じのマンガにおいて、一歩踏み出した(踏み込んだ)斑目だったわけです。いろいろなヒトの不自然な後押しもありましたけど(ここいらはすんなり飲み込めなかった)。
・告白してフラれるってことなんですけど、「きちんとフラれる」ことでやっと、本編後半から真の意味で「二代目」がはじまるわけなんですね。そのための重要なイニシエーション(儀式)ってやつです。そして超意外な展開として二代目でも斑目氏がキーパーソンとなるようです。これは読めなかった。当初からの構想だとしたらすげえわ。新メンバーって意味での二代目だし、生まれ変わった、一皮むけた斑目ってことでも二代目。
・巻末描き下ろしの4pに注目。
・フラれたあとの旧げんしけんメンバーの男衆が斑目の部屋で残念会をしております。そいでエロ話をしております。
・下ネタになるとキュっと貝のように気持ちを閉ざしてる斑目ですよ。彼はとっても一途でピュアな面があることをいろいろなヒトに茶化されたり責められてしております。
・同じサークルの女性部員のエロネタに対して、なんていうか乗りきれない感じ。しかし、エロゲーとかそういうのはバリバリできる。この二次と三次が別腹な感じ。
・いわば、「キレイな童貞」ですよね。
・以前、「童貞騎士」ってコトバを使いました。高潔な騎士のような立場で女性を姫と「勝手に」奉った挙句に腫れ物に触れるような扱いをうざがられる。それを思い出しました。
と、ここでいったん折りたたみます。そして18歳未満は読まないでね。
・斑目さんの「キレイな童貞」でひろげます。
・童貞といえばにったじゅん氏ですよ。童貞描いて20年とか。
・最新作「童貞喰いっ!」でも散見されますし、ここしばらくの作品では必ず描かれてるのが「汚まんこ」ネタ。
・すなわち、たくさんいたしすぎて黒ずんだグロい女性器描写。
・そして、臭くて汚いおまんこだけどそれでもする?という「契約」を迫るのです。もちろん、成年コミックだから彼ら(童貞)は躊躇するものの「汚まんこ」にむしゃぶりつくのです。そして蜜壺からあふれる蜜を一滴残らずなめとるのですよ。
・んまあ、「童貞喰いっ!」ではもうひとひねりして、整形で「汚まんこ」をキレイな未使用状態に戻すって展開がありました。リセットするわけですね。
・にったじゅん作品において「まんこの視覚以外の情報」ってのは童貞にとっての最後の未知の領域なわけです。にった作品のみならず、ここの世界でも、もはやネットにおいてそれ以外のことは簡単にわかりますしね。
・そしてそれを知るためにいろいろな意味でのハードルを乗り越えるワケです。それすなわち童貞卒業ということです。そしてそのためにはいろいろと「汚れ」を知ラなければならないのです。その象徴としての「汚まんこ」と。
・これはなんていうか元も子もない「リアル」と思ったのです。実に「ここ」の世界です。
[コミックホットミルク4月号 「春のモロ出し大増ページ!」 - アキバBlog]
[『GIRL(?) NEXT DOOR』 / Aー10]
・まだ単行本化されてないと思うのですが、A-10氏の「GIRL(?) NEXT DOOR」という短編はさらにこのテーマを深く掘り下げて描いております。
・顔見知りの未亡人で住んでいるアパートの大家をだまくらかして押し倒すまでいったのだけど、まんぐり返しで彼女の性器を見た瞬間、あらゆる情報が入り込んでフリーズしてしまう。なまのまんこの破壊力に行動不能になってしまうわけです。
・そしてそれでもその気持を打破するために自らを鼓舞するため「好きだ」と叫ぶという、手塚治虫氏でも描いたことのないデリケートな領域に踏み込んでいるのですよ。「愛」をもって切り裂いて先に進む。
・本当、かつてみたことのないラインだなと。
(そのあとの展開もすごくいいです。ぜひ機会があったらご一読を)
・そこで「げんしけん」に話を戻すのです。
バカやってるよーで
神経細かくて
自虐的なよーで
プライド高くて
開けっぴろげなよーで
秘密主義で……
・斑目の評価なんですけど、こういうのっていわゆる読者でオタクなヒトにはだいたい当てはまりますよね。たいがいの読者は斑目に自分を重ねております。だからこそ彼のヘタレから一歩踏み出したことに感動するわけです。
・かれはいわば二次元から三次元に対しての「一歩踏み出す」って宣言をしたわけです。
・おれらの斑目がおれらにできないことをやってのけた!って。
・ポトチャリコミックでのコトバでいうなら、なまのまんこに対峙する覚悟ができたわけです。まあ、もうちょっとキレイなコトバでいうと三次の人間に向き合う気になったのです。
・にったじゅん氏の作品にもそこが裏のテーマとして最近はあるんじゃないかあと思っていました。
・そして。
・だからこその「次」の展開が始まったわけですよ。げんしけんハーレム化計画。ただ、そこでヘタレてるところもあるからどうなるのかな?ってところですね。
・そう考えると、彼の告白のセリフ。ここでは書かないですが、すごく二次元→三次元です。現実の、三次の「人間」に向き合っております。
・で。
・斑目は踏み出したけど、「二代目」の斑目であるところの矢島さんはまだなんですよね。こっちは女性ですが。
・男の娘なメンバーの「性差」に対してドキドキしてる段階。男性性。エネマグラのネタとか。
・そして性差でいうなら男性性のおれはピンとはこないのです。
・おれが矢島さんをよくわからないように、女性は斑目のキレイな童貞っぷりがよくわからないんだろうかねえ。まあ、マンガのお約束的にモテているのはよくわからないんだけどさ。斑目はいいやつだけど恋心を抱くに値するタマなのかね。
[昔の「おたく」は何でも知ってた 今の「オタク」は何も知らない:哲学ニュースnwk - ポ☆ニュー]
・てめえのニュースサイトのネタを引っ張るのもなんなんですが、斑目のような「キレイな童貞」で昔の「おたく」はマンガ内にはほかにいないんですよね。同世代はみんな「卒業」してますし、次世代はそういうことにあまり頓着してなさそうな雰囲気がありますからね。だから、本編でも斑目を「珍しい人」扱いしてるフシがあります。
・だから、彼はマンガ内じゃ20代だけど、位置的にはもっともっと上の気がするんだよな。タイムスリップしたかのような
・だからって「斑目に似てるおれ、モテる?」と思うと、そこは「あくまでこれマンガだから」になってしまうという複雑で残酷な構造になっているわけですよ。
・あー、しかし、何度読んでもグッとくる。斑目いいよなあ。フラレて全員に祝福されてやがる。全員に愛されてやがる。こんなのってねえよ。いいよなあ。
・あ、ネタバレか。いまさらだよな。いいよな。
・あ、あとA-10さんの単行本のほうよろしくお願いします。