2013年09月22日

「saltiness」の日本語訳は「塩味、塩辛さ、辛辣さ」などである。〜サルチネス 古谷実



・世の中のたいがいなモノはよくわからないじゃないですか。
・たとえばアイドルグループなんかは誰が誰かわからないことが多いじゃないですか。
・もう活動20年とかでもいまだに全員の名前がわからないグループとかいっぱいいます。和田弘とマヒナスターズとか。今、ウィキペディアで調べて、和田弘氏がお亡くなりになったことやマヒナってハワイ語で月という意味だということ、ドロドロの内紛があったことなどを知りましたが。

・そいでもって、知らないことに優越感を持つヒトなんてのもいますよね。
・AKBのメンバーを誰もしらないことをジマンするヒト。
・基本、なにごとであれ、「知らない」ことはジマンにならないのですが、ジマンするヒトがいます。知らないことがエライことだといわんばかりに。
・これ、実は少し知っているからこその優越感だったりするんですよね。
・まったく知らなかったらまず興味がないですもんね。だから、知らないことをジマンできない。つまり「興味が無い」ってコトバは本当に興味が無いモノに関しては出ないんですよね。
「アイドル」「秋元康プロデュース」「握手券目当てでCDを買わせる」「恋愛ご法度のわりに相次ぐ不祥事」
・こういう断片的に入ってくる情報から「下劣」「低次元」と「判断」して「知らない」というわけです。
・ああいう下劣なアイドルに興味が無いおれは上品みたいな論法ですね。
・これが「偏見」ができる図式です。無知より少し知ってるほうが偏見が生まれると。

・そして、少し知ってる故に、「みんな同じ」にみえたりもするんですよね。

・自分が詳しい好きなモノ。例えば、コミックスを全部集めてるマンガ家さんだったり、CDを全部持ってるアーティストの作品を「みんな同じ」っていわれるとムカつきますけど、マンガを2〜3作品を読んだだけの作家を「こういうのばかり描いている」なんて判断したりします。

・これは別におかしなことでもなくて、そうやって自身の中で整理し順序立てて記憶しておいたほうがなにかとベンリですし、って、ベンリというか「勉強」するにあたっては必須ですね。じゃないと、記号とか単語とか方程式とか暗記できないじゃないですか。そしてすぐに引き出せないじゃないですか。
・だから、この話はAKBを下劣と判断し「知らない」ということが下劣ということですね。
・思っててもいわないこと。自身内に記録してあるフォルダの中身はあまり人に公開することはないってこと。

・ということで、おれはわりとファンだと思っていますが、古谷実作品ってもしかして「ヒミズ」からけっこう長いこと「みんな同じ」と思われてるんじゃないかなと。

・サルチネスは4巻で終わりました。

・本作はさっぱりするほどのハッピーエンドだったのがこれまでの作品で相当ちがいます。どの作品も、まあ、主人公が死ぬ(原作ははっきりしてなかったっけか)「ヒミズ」以外はハッピーエンドだけど、これからもまあ人生は続くってパターンを踏襲してますが、きちんとハッピーエンドらしい出来事があって終わります。あっさりしてますけどね。
・こういう終わりになった以上、「東京編」は必要だったのかよくわからないけど、幸せを求めて旅に出るという点、あるところに立ち止まり定着するという点では初期の「僕といっしょ」にも通底するところがあります。ただ、その描写はそうとうちがいますけどね。

・ド級に妹思いの兄が奮闘する話。ああ、だから、ちょっと昭和の国民的映画であるところの「男はつらいよ」シリーズにも通じるんだね。
・ド級に妹思いだけど、ド級に天然。なのに抜群の行動力と謎の威圧を持っていて分数の足し算ができないオーバー30なので、「おれがいたんじゃお嫁に行けぬ」の「男はつらいよ」方式で家を出たものの、また連れ返されての展開です。

・なんかね、「好き」と思ったのです。ここがこれまでの作品との最大のちがいです。このハッピーエンドまでの道筋が、すごく一直線だったのです。それがストレートにいいなあと思いました。

「ヒミズ」からの路線でいうなら今回はちょっと変化球がみられましたね。
・今回の最大の特徴はイリーガルがなかったことです。
・たいてい、警察が動くようなデキゴトが望む望まないにかかわらず作品内には起こります。
「サルチネス」でもポリスは登場しますけど、逮捕がどうとか凶行とかそういうことはあまりないです。
・だいたい悪事は「いやなこと」とか「起こってほしくないこと」、すなわち「暴力」の象徴として作品内に登場し、機能します。
・基本的にあらゆる物語は、主人公が作品内で困ったり苦しんだりして、なかなか楽させてもらえませんが、そのわかりやすすぎる象徴としての「悪事」が発生するのですね。
・ただし、古谷作品では「悪事」が主人公のすぐそこで起こっているけど、発覚しなかったり、主人公は知らないままだったりする例もあります。これがまたリアルなところで。(一歩間違ってたら死んでいたって感じの)

・本作では主人公のタケヒコはずっと悩んでるし困ってるしそれを打破しようと行動しているので、実はそういう「悪事」を持ち込んだりして更に困らせる必要があまりないような気がします。どうなっても「困る」ようにできている。
・目的は「妹の幸せ」で、それは見当違いな奮闘なのに、功を奏し、かなってしまう。
・そのあとのふわふわした感じがまた好きですね。ライフワークが終わったあと人間はどうすべきなのかって。
「ヒミズ」、あるいはひょっとして稲中卓球部からずっとかもしれませんが、古谷マンガはずっとキャラクターが年齢を重ねております。それこそ中学生からはじまって、サルチネスだと先ほども書きましたが30歳オーバー。だから、しっくりくる度が高いともいえるのですよね。シンクロしているというか。ま、年齢でいうとおれはちょっと上ですけどね。
・その年齢にあった悩みというか問題が起こるわけですよ。
・今回は兄、主人公自体ではないですが、人生における大きめのクライマックスである「結婚」だの「妊娠」だのが起こったりするのです。
・うーむといまさらながらいろいろと考えたりもするのですね。どうだったかな?とか。

・そしてイリーガルではないタイプの「悪事」はやってきましたね。実にそれが4巻のクライマックスだったのではないかと思ったりします。
・そうか、この手があったかみたいにザクリとおれの胸を刺してきました。
・これまでの拉致してイスに縛って拷問したり、寝ているすきに強姦したりの、いかんともしがたい「シーン」と同様のショッキングなシーンが予想をちょっと離れたカタチでやってきたことに驚きました。
・そしてその描写にも驚きました。いやあ、古谷氏の画力も天井知らずだよなあ。ああいうのをああいう風に描くことに驚く。驚かされる。そして考えさせられる。

・今回、とくに4巻はしみじみとおかしい。笑えるってのも大きいんだよね。おれにとっては古谷実はギャグマンガ家なので。笑えることが重要なのです。
・思えば腹がいたくなるほど稲中から笑わせていただいております。近年でも実はときおりヒットがあります。でも、サルチネスはなかでも群を抜いて「笑率」が高い。
・もちろんギャグのセンスなんかそれぞれだけど、古谷氏は「笑わせる」って気持ちで描いているマンガだよなあとは思います。
・インタビューとかそういうのをあまりみたことない方なのでヒトとナリとかどういうことを考えてらっしゃるのかわかりませんけど、「サルチネス」はいくつか笑わせようとしているところがあるし、それは全部じゃないですけどきちんとおれにヒットしてます。それがうれしい。マンガで笑えるということはとってもとってもありがたいことなのです。
・あとトモ子ちゃんが超タイプ。カワイイよね。
「サルチネス」は全体とみるとなんだかなという部分もあるけど、4巻の感じがとっても好きなんですよ。その「好き」がとっても強く印象に残ったな。

・今回いつもにましてgdgdしてるので(自覚してるんですよ)、さらに余談を続けさせていただきます。

人間仮免中
人間仮免中
posted with amazlet at 13.09.22
卯月 妙子
イースト・プレス


・古谷氏のマンガを読み終えるたびに卯月妙子さんに思いを馳せるのです。
・ヒミズあたりのとき、世界で1番好きなマンガ家で、いつもたくさん単行本を買っては「布教活動」に勤しむということをマンガ内で描いておられたのが未だに記憶に刺さっております。
・いつも古谷作品の最終巻を読むたびに、卯月さん、今回の単行本は配っておられるのだろうか? まだファンなんだろうか?とかね。それから派生して「今、なにをされてるんだろうなあ」とか。
・いろいろと予断を許さない感じの人生の方だし。近況を知ることができた「人間仮免中」ではよもやの事態になっておられましたし。

・おれも卯月さんほどじゃないですけど、古谷実氏は大事なマンガ家です。また楽しい作品をよろしくお願いします。卯月さんも近況報告がないのがコワイので定期的になにか発表してほしいと思います。
posted by すけきょう at 16:44| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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