カラメルキッチュ遊撃隊 3 (ヤングキングコミックス)
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大石 まさる
少年画報社 (2013-08-30)
少年画報社 (2013-08-30)
・3巻完結。
・なんだろうなあ。すんげーおもしろいのに。「非の打ちどころなし」とは大石まさる氏の諸作品のためにあるのに、近作はなんだかモヤモヤとしたものが残る。
・それは「読後感」でもないんだよね。読後感は最高だよ。
・本作は女子中学生3人組のドタバタ活劇マンガ。
・舞台はなんか悲惨なことがあったあとの地球。すべてが変わってしまい、イホージンという変なものが跳梁跋扈する世界。あーと、なんちゃらインパクトっぽいっすか。
・そんな中でも元気いっぱいに活動する女子中学生。そしてイホージンとの交流や戦いなど。
・3巻中盤からいきなり「世界」への放浪の旅がはじまりあれよあれよと最終回に。
・性急すぎるきらいはあるけどきっちりとけっこういろいろなことがカタがついたと思う。
・ただ、なんだろう(以下上記に)。
・理由としては「濃い」んだろうなあと。
毎度!浦安鉄筋家族 4 (少年チャンピオン・コミックス)
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浜岡 賢次
秋田書店 (2012-04-06)
秋田書店 (2012-04-06)
・チャンピオンの「こち亀」こと「浦安鉄筋家族」シリーズにおいて登場するおデブで食いしん坊キャラのフグオは、カルピスを原液で飲む。
・あちこちにボトルを隠していて、のどが渇いたらグビグビと飲んでいる。
・大石まさる氏のマンガはよくも悪くも「濃い」のだと思う。カルピス原液な濃さ。
たとえば「ガロ」なんかは、つげ(義春)さんのマンガを見るとよくわかるけど、私のようなマニアにはたいへん面白いのですが、それ以外の人にとっては興味がわくものとは言い難いでしょう。芸術性だけでは駄目で、マンガには、大衆性もないといけない。
[大人になったら〜ビッグ作家 究極の短編集 水木しげる&手塚治虫&〜: ポトチャリコミック]
「大衆性」ってニュアンスはどうなのかと思うけど、つまりは、カルピスにおける「水」が重要なんだよなと思う。
・よく金持ちの家のカルピスは水が少なめで濃いなんていいますが、それはイコール「美味しい」とは限らないんですよね。むこうがみえるくらいの透明度のカルピスこそが我が家の味ってこともあるように、それぞれに「美味しい」と思う濃さはちがうと思うのです。
・前記の通り「非の打ちどころなし」なんですよ。「あら」を指摘するヒトへ反論するほうが楽なくらい、あらゆるところがきっちり仕上がっておられるし、これが、「水惑星年代記」シリーズまであった鶴田謙二クローン的なニオイも完全になくなり、初期の「みずいろ」とか「泥棒猫」のころのニュアンスも盛り込まれつつ「水惑星年代記」のような広大な世界を描くという技術は「カラメルキッチュ遊撃隊」で完成形です。
・上記の「濃い」問題に対しても相当腐心されておられる感じで、今回の女子3人トリオのキャラ立ちもなんていうかな「今風」なんですよ。
・だからこその「非の打ちどころなし」なんですよ。
・こういうときに「コダワリ」ってコトバを思うんですよ。「店長コダワリの味」みたいにいいイメージとして取り上げておられますが、実は正反対の意味が本来のものなんですよね。店長がだれの忠告も聞かずに「この味しか無い」って頑なになっていることが「こだわりの味」なわけです。
・そいでそれが万人に美味しいなら無問題なんですが、前記の通り、万人にとっての「ちょうどいい」が大石まさる氏には薄すぎるのかなあと思ったりするのです。結果「濃い」と。
・あるいは全部盛りみたいな世界かもしれません。あらゆるものが盛り込まれて「これでもか」状態になっている。
サルまん サルでも描けるまんが教室 21世紀愛蔵版 上巻 (BIG SPIRITS COMICS)
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相原 コージ 竹熊 健太郎
小学館
小学館
・とくに「カラメルキッチュ〜」の3巻は、漫画史に残る名著であるところの「サルまん」にある、「巨人の星が10週で打ち切られたとしたら最終回はどうなる?」ってネタのひとつにある、「以降の展開を(最終回のページ数で)全部ぶちこむ」、を地で行ったくらいの圧縮率と濃さでモノすげえことになっております。
・1話1話が「珠玉」をさらに磨いたようなみたことないシロモノに。
・そのにじみ出ている濃さが、おれにはたまらないのです。
・別にマンガマニアやマンガエリートやマンガダイバーを気取ってるわけじゃないです(マンガを読んで分析したりなにかを書きたくなるのはマニアじゃなくて病気だから)が、まあ、なれですよね。長年読んでおりますし。おれはこの濃さにはすっかり馴染んでますし、それじゃないと「大石まさる」って気がしないのもあるんですよね(そしてこれがまた大石氏の濃さが改善されないところになっているのではないかと思ったり)。
・ただなああ。これを「おもしろいよ!絶対読んでよね!」ってオススメしても芳しくない返事がくるのもまた長年の経験から予想がつくのです。
・それが口惜しいのですよ。こんなに美味しいのに。
・こういう大スペクタクルや大スケールなマンガは流行ってないというか、「見合った」長さや規模にはなるんですよね。そして選ばれたヒトしかやらないみたいな。
・あるいは一時期やたらとあったからね。ダイナミックプロみたいに最後は神と悪魔の宇宙を分ける戦争になって終わる感じ。あるいはそれらSF的な「大きさ」へのオマージュなのかもしれないけど。
・意外なことに濃いモノって上滑りしやすいんですよね。そのまま表層を流して読んでしまう感じ。学年が上の参考書を読んでも頭に入ってこないのと同じで。神々の神話とかいわれて「はいはい、そういうのな」みたいに処理する感じとか。
・また大石作品の多くが楽しく明るくやさしくて、一見シンプルにみえるのですよね。
・本作は「ジュブナイル」なんて銘打ってるから倍率ドンなんですよ。
・でも、その実、画に話しにキャラに、技法と「遊び」を十「八」分くらいに沁みさせてパンパンに膨らんだものになっているのですよ。一口もかじってない後半のきつねうどんの揚げみたいにおつゆがたっぷり。
・と、ここまで大げさなことを書いてもまだ足りないくらいなのです。
・とくに本作「カラメルキッチュ遊撃隊」はここしばらくの最高傑作です。3巻で終わったのが惜しいような、これでよかったような。あと2冊くらい延ばしてもよかったような。うーむ。こういうモヤモヤもあるけど、最高傑作だよ。
・実はかなり長いことかけてこれを書いてるから3巻だけもう10回以上読んでるけど「最高傑作」ってコトバは全然揺るがないよ。
・あー。
・弱点も描いておこうかな。今作は前記のようにジュブナイルってのもそうだけど、初期の「みずいろ」にあったエロさがなくなったよな。そういうのは必要のないマンガではあるんだけどさ。あれはあったでいいじゃないかと思ったりな。たとえばこうの史代さんの作品に登場する方々の漂う色香とかなあ。ああいうの。
・ま、十八番の「夏」描写はますます冴え渡ってはいるんですけど。
・あと装丁のロゴのPCっぽい滲んだ感じは個人的にキライだし、大石作品に合ってないとは思う。
・そして強くいいたいこと。
「濃い」と腐りにくいんだよ。
・今読んでも10年後に読んでも鮮度は落ちません。
・ほら、ちょっと気になったけど買うまでにいたらなかった本がしばらくしてブックオフで105円になっていたりしてどらどらと眺めると、思った数倍古臭くてしょーもなくて「ああ買わなくてよかった」なんてことは多いじゃないですか(同意される方がいるかわからんけど)。
・だけど、日本の出版事情からして、「今」買わないと手に入らない率が非常に高い。ブックオフで105円になるのを待つのはバクチだし。
・だから「今」買ってください。コスパは最高レベルです。今も先もずっと名作のままです。しかも、今なら普通に買うことができる。スバラシー。
・それがいいたかったのです。おもしろいんだよ。ずっとファンだから贔屓目とは思うけどさあ。