2013年11月25日

漫喫漫玉日記 深夜便 (ビームコミックス)



・桜玉吉氏は「売り直し」みたいのが多くてよくわからないのでいつしか買わなくなっていたのですが(こんなところで余談だけど、だから復刊商売ってよくないと思うよ。おれみたいにどこまでなにまで買ったかわからずに手を出さないってヒト多いだろうし。おれは「じみへん」がとくにそれなんだよなあ)、今回のは新作だと思って買った。
・ファミ通の4コマの新作と「コミックビーム」で復活され、東北の地震を描いた「3・11金曜日」に加えいくつかの普通のコママンガを収録されているのかと思ったら、まさかの全新作の短編コママンガだった。4コママンガの新作集は12月に出る模様。
・掲載雑誌を読んでいないのでよくわからなかったのですが、「3・11金曜日」のあともコンスタントに短編マンガを発表され続けていたのですね。みんな2013年発表の作品という。
・作風は相変わらずの日常雑記。今回は新機軸として全編漫画喫茶に住みこんで描いたものだそうです。
・もともと「枯れ」嗜好みたいのがある作者も50歳をむかえて本格的なそれになっておられるようで、日常の些細なことを等身大の「枯れ」目線で描かれております。
・入院とか大きなデキゴトはないし、ことさらに漫画喫茶を強調されてるわけでもない。それでいて安定のクオリティ。
・これまでのコミックビーム連載のエッセイコミックは、それぞれのシリーズにおいてそれぞれの大まかな目的がありました。
・たとえば前作にあたる「御緩漫玉日記 」では、アシスタントの巨乳女性との過去の情事ってのが柱としてありましたが、その間に身体の病気で入院されて、ココロの病気でリタイヤって感じでそのネタは有耶無耶のままでした。

・今回はそれこそ枠は漫画喫茶で描くというのですが、内容は、これまでの1回分に散りばめられたエピソードの1個1個の「部品」をそのまま載せたものって感じがする。
・うむ、いうたらなんだけどリハビリの過程を見ているような。

・でも、それが悪いというわけでもない。
・人間は年をとる。アタリマエのことを思い知らされるし、いろいろと変わることも思い知らされる。
・もともとアケスケなところがある漫玉日記で「老い」にますますウエイトがかかっております。

失踪日記2 アル中病棟
失踪日記2 アル中病棟
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吾妻ひでお
イースト・プレス


・両作品ともきちんと勝負に打ってでておられるなと。
・いっとき、昭和の有名マンガの復活が流行ったことがあるし、3〜4冊しかなかったけど雑誌まであった。でも、そういう「同窓会」みたいな趣きじゃなくて、きちんと現役として諸作品と闘う姿勢を感じる。そこがすごい。
・それは天下をとろうとか、「このマンガがすごい!」に載ってやろうとかそういうギラギラしたものとはちがうのだけど確実にファイティングポーズをとっておられる。
・そこにすごいしびれてる。素直におれも「がんばろう」と思う。
・まあ、その内容にはけっこうな差を感じるけどね。
・かたやアル中で入院したけど退院して戻る家がある。家族が迎えにこられるラストだったしな。
・かたや娘の1番よかったころの写真をみつつ、思い出の品をオークションに出すのをやめてカネの心配をする独身生活だもんな。
・それでも両作品から勇気をもらった。おれも無意味に前に進もうとは思った。どこが前かもわからないけど。

・そして余談だ。中身を肴のgdgd話なので折りたたむことにする。

・ネタバレも含みますので。

・往年のノリを求めるのはお門違いではあるのですが、本作の大オチがO村氏ってのがすごく嬉しかったなあ。しかも、すげえ往年のママで。

・桜氏はおれの5年くらい先輩です。たしか竹熊健太郎氏と同い年なんですよね。1960年代生まれってけっこう1年2年ちがうとだいぶちがうような印象があります。とくに「オタク」分野での差が如実のような。
・本作では呼んだデリヘルさんが声優学校に通ってる子だったのでメーテルプレイをしたそうです。この銀河鉄道999や宇宙戦艦ヤマトあたりの認識がまずちがうんだよな。本当の「アニメオタク」のスタートがこれですよね。唐沢俊一氏も北海道でヤマトを放映だか再放送させる活動をしていたそうだし。
・あとはゴジラへの思いもけっこうちがう。
・そして結局はそこのところに帰るのだなあと。漫画喫茶で「あしたのジョー」のアニメをみるのが楽しみとかな。
・ノスタルジーな行為ってストレス解消にはいいんだってさ。

「グレー・スケール」という作品。練り消しゴムをもてあそぶシーンで5p。こういう身辺のまわり1m以内のことを描かせると、多分、エッセイコミック界では日本一だと思うし、それは健在だなあ。
・どの作品か忘れたけど、仕事場のエアコンの水漏れがすごいからリボンを吊り下げて水滴を水槽にためる話なんかはすごかった。
・作風や芸風によるものではあるんだけど、文字通りの日常雑記をマンガとして成立させているのは真似できるヒトが少ないし、真似をしても玉砕するヒトが多いだろうなあと。
・しかし、漫画喫茶では爪を切るのも「うるさく」てダメなのか。ちょっとおどろき。

・個人的に漫画喫茶にいったことが1回しかない。そしてそれは個室で区切られてないところ。いろいろなところにソファがあってそこに座ってマンガを読むって初期のスタイル?
・だから本作を読んでいきたくなった。ソフトクリーム食べ放題のところにいきたいわ。

[おっさん向けまとめ2ちゃん : 【漫画】桜玉吉が週刊文春で新連載、ミニエッセイ「日々我人間」]

・週刊文春で連載ですと。すげえなあ。着実に復帰されておられる。

・あと、思い出したわ。本作を買ったのは「3・11金曜日」のつづきを読みたかったからだ。絶対に次の号につづきが載っているのかと思ったら、あの尻切れトンボでいちおうの終わりではあるのね。

「御緩漫玉日記」のトクコさんとの顛末もいつか描かれる気になったら描いてほしいわー。

posted by すけきょう at 15:05| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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