区切りとなる11巻。これが作者にも少年漫画にとってもマイルストーンたる1冊となった。100話を迎えたというのももちろんあるけどそれよりもこの巻で少年漫画の代表作のひとつに躍り出たといっていい充実の内容だったからだ。肝は前半のオールマイトの対決ではなくその後にある。通常の学園マンガではありえないくらい感動的な「家庭訪問」、通常の学園マンガくらい楽しい部屋のコーディネイト対決。これらが同居している奇跡。何度読んでも泣けてる。
・本作で1番スゴイと思った画像がコレです。
・作品を知らない方にざっくり話を説明しますと、タイトルの通り、超人育成学校の話です。ケロケロいう女の子が意を決してみんなにカミングアウトしたところです。
・みんなが彼女を呼びかけます。それをドローンみたいな鳥瞰のカメラで撮っているのですが誰がどのセリフをいってるのか一目瞭然だし、それにそれぞれの性格やキャラがきっちり表れています。そこに染み入るような感動を覚えました。
・おれのせいです。おれが悪いです。おれのスペックが低いために、おれはたくさんのキャラが出るマンガは苦手です。
・ただ、いくつかの例外があります。例外の作品はキャラをそれぞれきちんと把握して物語を楽しく読み進めることができます。
・本作もクラス20名弱ですが全員把握しております。っても、きちんと把握したのは最近です。
・この「最近」ってのがミソです。それはどういうことかというと、作者はずーーっとキャラを読者に把握させるための努力を怠ってないってことですから。
・自分が生み出したキャラを「こいつこういうところあるんですよ」ってプレゼンをずっと欠かしてません。そこがしびれますし、おれもまんまと全キャラ好きです。クラスメイトも先生も超人も敵も、他キャラも。
・それが前記のコマに結実してます。
・それぞれの性格や人生を経て彼女の名前を読んでいる。最後の主人公は「ツユちゃんと呼んで」といわれてるけど、女子を下の名前で読むのが恥ずかしいから名字の「蛙吸(あすい)」といいかけて、やっぱりちゃんといおうとした挙句に「あす……ゆちゃん!」となったのです。芸が細かいし、それは意味のある細かさだと思います。
・主人公もクラスのみんなと修羅場をいくつかくぐり抜けて助け助けられしているうちに仲間意識が芽生えてきてるもののこれまでずっといじめられっ子の体質があり、とりわけ女子の免疫がない。だけど、がんばって改善していきたいなという思いからの、途中名前変更なわけですよ。だから最後の「!」も意味があります。
・主人公だけじゃなくてほかのキャラの呼びかけも全員同様に説明ができます。
・それはキャラがおれのなかに浸透しているからです。もっといえば好きだからです。
・超人を育成するための学校というのがミソで、普通の学校であるような行事が特別な意味を持ってくるわけです。たとえば運動会。本作の運動会は超人能力を全開にしてテレビ放送することによって、各企業が雇うべき超人の青田買いをするためのデモンストレーションの場になっているのです。
・遠足はサバイバルです。ここでは敵が乱入して本当のサバイバルになってしまいましたが。
・なるほどこの流れは「キン肉マン」です。世界観がキン肉マンに似ているんですよね。超人がたくさんいる地球。キン肉マンはその頂点を決めるためという名目で延々とプロレスをやっているわけです。
・本文でも書きましたが11巻では家庭訪問があります。これがまたかつてない感動作。ある事件のあとに超人のタマゴである生徒の親に対してヒーローが話をしに伺うわけです。そりゃあ一大イベントですよね。ヨネスケさんが晩御飯食べに行くだけで大騒ぎで、その比じゃないんですから(師匠すんまへん)。スーパーマンが実在するとして彼が実家に話をしに行くわけですよ。
・この夏やってた仮面ライダーのスタンプラリーのスタンプコンプリートプレゼントは抽選で何名かが仮面ライダーが家まできてくれることだったんですよ。そりゃあテンション高くなりますよ。
・前半の死闘はこれまでのベストというくらい血湧き肉躍るものでした。でも、戦いのあともずーーっと涙がで続ける展開ですから。これはちょっとただごとじゃないぞと改めて最初から読み直したりしております。
・そのきらいはアニメにありました。アニメはおれの観測範囲内のネットでの評判をみるかぎりあまり芳しいものではないのですよ。すごく不思議です。おれなんかはアニメのおかげで原作を再認識して惚れ直したくらいなのに。アニメは毎回涙ぐんでました。
・本作内でのNo.1ヒーロー、オールマイト。世界で1番かっこいいヒーローになりましたよ(おれ調べ)。だからずっとドキドキしてるんです。作者が殺すんじゃないかって。11巻は1番やばかったですよ。
・そして、世界1かっこいいヒーローは戦いのあとに宇宙イチかっこいいヒーローになるのです。
・主人公の少年は彼に憧れて超人育成学校に入ります。もう彼と同じくらいおれもオールマイトのファンですよ。ただ少年もまたかっこいいんだよなあ。
・緩急硬軟いろいろと詰め込んだ11巻です。これまでで最高の完成度です。この先どうなるのかわかりませんが、アニメの2期もせめてここまでやってほしいものです。