世の中には「(いかにも)このマンガがすごい!(にランクインしそうな作品)」系なるものが存在するみたいでして。本作もamazonのレビューにそのようなことが書かれていた。さもありなん。
本作は4編の作品からなる短編集でいずれもボーイ・ミーツ・ガール。そしてガールはいずれもくだけたざっくりしたモノイイだと「不思議ちゃん」。なおかついずれもとってもキュート。
愛想のとってもいい笑顔がかわいいバイトの先輩は、心がモヤモヤしたら月面にむけて道路標識を投げて突き刺すことをイメージすると伝授される「月面と眼窩]。
毎回名前のちがうJKとカラオケ店員。そのうちに名前が中央線の駅名と気がつく「水中都市と中央線」
本作の女性は萌える。これが記号としての萌えではなくて武器としての萌えってのがこのマンガの最大の特長かと。
こういう「文学」みたいなマンガにおいて、萌えというのは往々にして、記号としてのそれであることが多い。なぜなら萌えというのはファンタジー要素が高いので文学みたいなリアリティを尊ぶマンガにとっては相性がよくない。相反する立場なんですね。だから逆に「おもしろ」とか「なんちゃって」とか「あえて」の意味での萌えに使われることが多い。
本作はきちんとかわいい。リアルでありつつ萌える女性が出てくる。リアルと萌えをつなぐキーワードがあります。それは「不思議ちゃん」。本作4話の女性はみんな不思議ちゃんで主人公はその不思議なところに翻弄されるという。この「不思議ちゃん」のさじ加減が絶妙。やや「萌え」ですけど、例えば、実写映画化されても3次元の俳優さんが無理なく演じることができるんじゃないかなと思わせるさじ加減。
「…というような子がいて」こういうことですよ。
「…… いやーそんな女の子が実在したらいいねぇ」
「…妄想の話じゃないんだけど」
(おまけ「二足獣」より)
実写映画化だと新進気鋭の監督がそれぞれの話しを手がけるオムニバスにしたいな。そのプロデューサーかどれか1本の監督をやりたいわ。うーむ、おれは「月面と眼窩」か「甘党たちの荒野」かな。