話題の作品です。pixivで無料公開しています(2017/04/10 19:15:58現在)
無料公開なので思いきりネタバレで書こうと思います。
上記リンクより読後、「つづきを読む」よりどうぞ。
読んでこう思いませんでした? なんでこのタイトルが「映画大好きポンポさん」なんだ?って。
このマンガ、実は1番要らない子がポンポさんなんですよ。まあ、「要らない」にもいろいろありますが、シンプルにこの話を進ませるだけなら、ペーターゼン、つまり、おじいちゃんがポンポさん役を全部まかなうことができます。
そしてもっというと、後半に出てくる世界一の俳優、マーティンブラドッグ。彼をペーターゼンと兼任することも可能です。つまり、「断捨離」することが可能です。
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そういうマンガはあります。あらゆる役をこなすことができる名優が若き役者を育てる話。名作です。機会があったらご一読のほどを。ポンポさんとはまったくちがうものなのでパクリではありません念のため。ただ、こういうパターンのほうが定石です。
でも、このマンガ、ポンポさんは絶対に必要というのは読んだ多くのヒトには同意できることだと思います。
そもそもポンポさんが話すことがこのマンガのセルフ解説になっており芯であり肝になってます。
「削るべき要素を残したままのぶよぶよした脂肪だらけの映画は美しくないでしょう?」(56p)
このセリフ。上記のものと反するように見えるかもしれない。ただ、その前に、ミスティアさんところに居候しているナタリーさんがいっしょにトレーニングしているときにバキバキに割れた腹筋をみてスゴイっていったら、これだと客が引くから身体を見せる仕事だと肉をつけると。
そう、脂肪「だらけ」がマズイのであって、脂肪は必要なんです。本作も骨格と肉だけなら上記のような描き方でOKですがね、脂肪は必要です。それこそがポンポさんです。
「そういうのって普通監督か助監督がやるものじゃ?」
「物作り目指してる人間が普通なんてつまらない言葉使ってんじゃないわよ」(66p)
これです。くわえてこれこそが「ポンポさん」の最大の存在理由です。骨太の映画大好きマンガにおいてもっとも「普通じゃない」もの、それこそがポンポさんという存在。そして彼女がいるといないじゃこのマンガはまったくちがうものになっていることは想像に難くないですね。
そう、それこそが「物作り」なんだね。
すべてが映画へと情熱を向けている世界で、映画の申し子ポンポさんがその中心としてキラキラ輝いているマンガが本作なのですね。それこそがワンダーそのものであるという素晴らしさ。そしてタイトルへと帰結していく。マンガ内のすべてがポンポさんにつながっていくんだよね。
表紙、最初の展開、ポンポさんといういかにもな萌マンガ的アイコン。このミスリードを誘う展開から、二転三転していく。それでいていかなる展開になってもポンポさんはポンポさんとして中心にデンと居る。この「普通じゃなさ」。それを読者に受け入れさせるマンガ的な技術。そして情熱。
「制作者はシーンとセリフを取捨選択し出来る限り簡潔に作品を通して伝えたいメッセージを表現すべきよ」(56P)
そして最大に逆説的ですがポンポさんがいるから簡潔になったのよね。すべての重いセリフ、場面転換、シーン、ポンポさんというアイコンが簡潔にしてくれているために、「たったの」136pにこの物語が圧縮された。
こういう「萌え」の使い方はそんなに新しいものではないけど、今、このタイミングでこういう効果的な使い方をしたのは非常にかっこいいし衝撃的。2017年の「新しいマンガ」の可能性の扉が開いた瞬間に立ち会えた気がした。
蛇足ですが。
この完璧な作品で足りないのはエンドロールじゃないかなあと。
最後のページのジーンくんの台詞のあと間髪いれずこの音楽が流れてきましたので。アニメ化のときはぜひ。
ナタリーさんが新人だからまだ毒牙に染まってないのでジーンくんに淡い恋心を抱きかけてましたが、それらを粉砕する映画バカしか出てこないのがまたいいよなあ。そしてナタリーさんもいずれは映画バカになるんだろうなあという。幸せなような不幸なような。