2017年05月29日

いぬやしき(9)奥 浩哉 (講談社イブニングKC)


ラス前。こうきたかと思った。「GANTZ」と似てはいるけど、こっちのほうがアレだな。

あああ、ネタバレ込みでつづきを読むからだ!



宇宙人の事故に巻き込まれて死んだおっさん。万能のロボットとして生まれ変わる。空も飛べるし瀕死の人も治すことができる。
で、同じタイミングで死んだ高校生は悪事に使う。それと戦う。
その「話」は8巻でだいたいカタがつく。おっさんが勝利、高校生はいなくなる。
さ、問題はその後だよ。いや、もうひとつの問題もあったな。おっさんは家族にロボットであることをカミングアウトする。それもあっさりだけど過不足無くやる。奥さんがひとり家を出ようとするおっさんに「新婚旅行は?」って尋ねるの。そうするとスラスラと答える。そして「お父さんよー」ってなるの。ここいらをあっさり表現するのが良かった。

幸せと平穏な暮らしが戻った。と思ったら、9巻の最後。巨大隕石が地球に3日後にぶつかります。いろいろやったけどダメでした。地球はオシマイですってトランプ大統領がいってるの。
さてどうすると。

amazonのレビューで、なんとなく想像できそうな最期だけど、アイアムアヒーローやGANTZよりだいぶマシだなってあったけど、これはそういうことじゃないと思うんだよな。

よく子供の頃に物語を作ってて、なんていうか話が煮詰まりまくった挙句に「最後地球が爆発したのでみんな死んでしまいました 終」って雑エンディングにするじゃない。
本作実はそれだよな。それをあらゆる技法を投入して世界一「丁寧」にやったらどうなるか?って実験しているんじゃないかと思ったのよ。
そう考えると他所の国が無駄にからんでくるってめんどくさい流れとかあまりないのもよくわかる。でも、隕石のほうが大事なんだからな。あいつらが騒いでてすごく興味深いとしても「それどころじゃねえ」と。
あと、おっさんと高校生が無敵すぎるのよ。Dr.スランプのアラレちゃんばりに。だから彼らを「なんとか」するには地球規模の危機しかないんだよね。そういう意味でもスジは通っている。

で、本作は「もし**だったらどうなるかな?」って中学生男子の妄想をどんどんマンガ化してきましたよね。2chでムカツくやつをその場で殺しまくるとか、ヤクザ団体を全滅させようとか、その逆で病気で苦しんでいる人をどんどん治していこうとか、もっと小さいのでいうと家電量販店のテレビに裏ビデオ流そうとか。
それらをみてきたように描くってのは、「GANTZ」からもありましたけど、奥浩哉氏のハリウッドマンガの真髄ではありますよね。この茨の道を良くも選んだと思いますよ。

だから「オチがよめた」って感想はあまりいいスジではないのよ。

3日後に巨大隕石が地球にぶつかります。街の風景はどうなりますか?ってのを描いているわけだ。

それはただただすばらしい。とくに街の駐車場で若い男女が全裸でセックスしている。それを警官が無表情でただみてるというシーン。かなり「らしい」。たぶん、いちおう通報があったのでみにいったけど、こいつら捕まえてなんになる?って思って思考停止になっている。

ということで口を開けてポカーンとそこで起こっている、「みたかった」「みたことない」世界を眺めてればいいんじゃないかなと。


posted by すけきょう at 07:47| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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