唸る出来栄え。
前作になるのかな。「いちまつ捕物帳」がとてもよかったのでなんだか後半バタバタ店じまいして最終巻にコレの予告が早々にあったとき、「えー」とは思っていたのよ。もっと「いちまつ捕物帳」読んでいたかったなと。
オッサンが主人公。オッサンはいっときはやったロボット愛玩動物のアフターフォローをする部署で働く妻子あるサラリーマン。そんな彼がふと1匹のロボを拾う。そしてはじまる同居生活と。
そう、これは藤子不二雄先生18番の「異物」が一般家庭にくるという同居モノですね。ドラえもんが有名ですね。
細野氏も「グーグーガンモ」というアニメ化までした有名作品をモノにされております。
ところが本作、その図式でいてもっといろいろと練り込んであります。設定の鬼とでもいうべきありとあらゆる情報を練り込んでいて、話に深みと「不透明」さを与えます。
そう、おわかりのとおり普通の同居モノではないです。
まず、この犬ロボが謎だらけです。いっしょに住んではいるけど、敵か味方かもわかりません。というか、最初に素性がわかりますがとんでもないものです。
そして、主人にあたる主人公との仲も険悪です。仲の悪い同居モノってのもありますけどなりゆきで同居するとか、オヤジが主人公ってなるとなかなか珍しいものではあるかなと。
主人公の設定がまたいいんだよな。もう終わった流行りであるロボ犬のメンテって閑職に飛ばされている。でも、かつてのモーレツ社員だったころのノリを忘れずに家族を養わないととってハッスルってアウト・オブ・タイムな役。だから、知性のあるロボ犬との相性が悪いんだよね。それがいい凸凹コンビになっている。
これが娘とロボだとスムーズだけど深みがでなくなるんだよなあと。
こんな状態でかなりロボがえげつないことするんだよね。PC関連ネット関連AI関連のボーダイな知識が流入するのはおわかりだと思うけどそれにもうワンステップワンダーを噛ましててな。
細野氏はもともと高千穂遙氏の「クラッシャージョウ」のコミカライズでデビューで、その後もSF的なものに対する造詣が深いのですが、ここにきて久しぶりの気合の入った本格ハードSFで、これまでのキャリアで培った技術や、掲載誌への配慮などの化学変化により、予想を大きく超えて挑戦的な内容に仕上がってます。その攻めの姿勢には発奮させられましたよ。おれもいろいろとがんばろうと気持ちを新たにしました。
唸る出来栄え。(犬だけに)
あと庵野秀明氏と対談もあり。おまけエッセイマンガもあり。こういうところのフットワークの軽さがスゴイね。