WEBで発表されて話題になっていたもの。
酒乱の父親に振り回された半生を描いた自伝コミック。エッセイコミックとか酒飲みエッセイではないわな。
本作で描きたかったのは酒飲みの家族あるあるじゃなくて、私は酒飲みの父親がいたおかげでこういう人生でしたってことだけだよな。そこが潔い。Amazonのレビューに酒飲みの家族に苦しめられている読者に向けてのなにかがあったらよかったですなんてのがあったけど、作者はそういうのはここで描く気がしなかったんだろうなと。それはわかるような気がする。
酒に弱いがあの当時の「男」として無理に飲まされていく内に酒乱となる父。
母親が宗教に狂った挙句に自殺するという1話からしてピーク。そしてまわりのひとは誰もその苦しみを理解してもらえず、あまつさえも父親が酒に「逃げ」ているのは幼い作者たちが原因のようなことまでいう「友達」がいるという。
リアルゆえにこの「地獄」になれていくから徐々に主人公は酒乱の父親を「常態」として飲み込んでいき、話が酒乱の彼氏にシフトしていくのが興味深い。これがなかなかのクズだけど、あれだけ酒飲みを嫌ってたのにつきあい婚約までしたのは酒飲みのクズというあたりのリアルさ。
そして後半は父親の死。
すべてにたいして矛盾ばかりなのだけどよくわかる。父親の死に涙。あれだけムカついてた父の「友達」に感謝など。身内の死ってそういうことなんだよなあと思う。おれはここまでものわかりよくなかったけどなあと。
そう、本作、いろいろと思い出したり思い当たったりすることが多いんだよな。
うちとこも麻雀やってたなあとか、「友達」がクソみたいなことばかりいってたなあとか。それでいて、おれもいつかはこういう感じのオヤジになっていくんだろうかなとか。
いろいろと振り絞って描いておられるその気概は素晴らしいと思うけど、なんだかとっちらかったものになっている。それも含めてリアルではあるんだけどね。
だからこそズシンとくるものがありますし、それは後でくることもありますので、読んでおかれることをオススメしておきます。