完結巻。やや打ち切りの様相。でも、すべての謎を押さえきれいに終わっていたところは見事。
終わってから逆算してみると3つの軸があったと思う。それがあらすじも兼ねていると思うので書いてみる。
まず、「難聴」とはなんぞやということ。
次に、難聴のマンガ表現。
そして、すべてのキーポイントとなる佐村河内守。
これらについて追求しつつある程度の答えを提示しているドキュメントコミックの完結巻です。そういうミステリの側面もあるのでネタバレを考慮してこのラインはそこまでにしておきますが、この3つの謎が1本に収束していく(推測も多分に含まれるけどさ)展開はホントミステリの謎解きそのままでとってもエキサイティングでした。
「補聴器」が3巻ではキーになる。耳の悪い人がつけている印象ありますよね補聴器。これ、仕組みとしては単純で小さい音を拾って大きく増幅して耳に届ける。これは難聴の人だと「耳鳴り」も増幅されていくから苦痛でしかないんだって。それでも補聴器は必要。それはなぜか?ということから大筋につながっていく。これは目からウロコではあった。
さらにすばらしいことに3巻では大笑いした。それが佐村河内守氏とのパート。本筋に関するネタバレじゃないから書いておくと、1話が雑誌に掲載されてから佐村河内守氏に呼び出されて作者が向かうと、自分が太って描かれすぎているってクレーム。そうしたら奥さんが「あのときはあれくらい太ってたからしょうがないじゃない」と。「じゃあ今は20キロ痩せたのでその絵でつかってください」って。それを神妙な顔をして撮るシーンとかもうおかしくてしょうがなかったわ。そのあとの担当編集のフォローになってないフォローとか。あと、本当にそうだったんだろうけど、長距離異動のとき、横で寝こけている編集の顔とかしみじみとおかしい。
マジメな展開が多いですが、吉本氏の作品で本人が出てくるときのギャグ展開は実に侮れないんだよな。
トータルでそうとうおもしろかったです。
話題になってまたつづきを読むことができるといいなあ(あまり売れなかったようです)