「100年後にも残る才能」なんて帯にありましたよ。大きく出ましたね。2117年にも本作が売ってるのでしょうか。
SFのさじ加減が絶妙な作品集です。
最近読んだ「好奇心は女子高生を殺す」「大きい犬」「ストレンジ・ファニー・ラブ」などの流れとはまたちがう、かなり現実のそれにウエイトを置いているためにSF的な要素のギャップがまたスゴイ。
「ザ・人間チャレンジ」ではネコが人間になれるかどうか会社で働くことで試される。会社でPCで入力作業を延々やる。
「BAR俺のドッグフード」は飼い犬が家出する。そしてBARを経営していたという話。
どこが現実にウエイトだよ?っておもわれるかもしれないけど、ネコの話はともかく、犬の話はかなり人間関係を深く細かく描いているんだよ。
「孤塔にて」は動物が出てこない。ものすごい高いビルの屋上。トイレしか無く、降り口が見当たらない場所に殺し屋のオトコが降ろされる話。すごい世界観。
だいたいがハッピーエンドってのがまたスゴイね。だいたい執筆された順に並んでいると、どんどん絵がさっぱりしていくんだよ。その絵にも救われているけどかなりどうかしてる話に重いリアリティが内包されている。
そして表題作がクライマックスに用意されていた。
1度だけみたそこにあるわけのない幻のバス。それがくるかもしれないということで毎日もう廃線になってるバス停で待つ少女の話。これは作品集のタイトルになるだけの作品だし、これは100年後にマンガのアンソロジーに収録されていてもいいと思うわ。おれが選者だったらまあもしかしたら。