手塚治虫が好きすぎて手塚の足跡をピッタリと追いかける男の話。年1冊ペースで5巻。
5巻は大阪万博の前後。手塚治虫氏がそのキャリアの中でもっともどん底だったころ。
そして一方で追いかけてきた男はジャンプの連載があたってアニメ化も決まりたぶんキャリアにおいてもっとも儲かっている。でも、手塚氏へのあこがれが強すぎて、そのころに描いておられる「暗い」マンガがえらくて、自分のジャンプノリのマンガを「おバカ」と卑下する感じ。
このころ、リアルには知らない。ギリ生まれてないし。おれがモノゴコロつくのは続く6巻での「ブラックジャック」の奇跡的な復活以降なんだよな。
だけど、このときの空気の「萌芽」みたいなものはわかる。やっとわかる時代になった感。正直、西岸良平氏の「三丁目の夕日」はなつかしくもなんともないんだよね。
そしておれの「手塚治虫」像ってのはここまでのキャリア。あとで知ったのもある(手塚治虫全集は大々的に発表されてどこの本屋でもあったしどこでも立ち読みできた時代だから)けど、それらが全部まとまってボーダイな量を描いた天才としてドバーって感じに入り込んでいる。そして藤子不二雄A氏の「まんが道」の神として。
本作の主人公は追いつけば追いつけそうな天才がいつしか神になる姿をおいかけているというどことなく宗教的、どことなく神話的なものすら感じられる。それでいて戦後マンガ史と手塚治虫の生涯も描いているという。生き神様の生涯を追い続けている男。「火の鳥」にそんなのいなかったっけ?
また週刊少年マンガ誌が出揃って、マンガすべての主戦場がそこに移り、以降半世紀近く(今もってことだ)続く血で血を争う戦争もよく描かれているな。マガジンのインテリ路線、ジャンプの専属契約、サンデーの若手の頑張りとか。
あとまあもういいんだけどさ5巻では主人公の奥さんの美人モードはなかったね。