「戦国妖狐」「惑星のさみだれ」の作者の4冊目の短編集。短編集がすばらしいのはいつものことですが今回のハズレ知らずは恐ろしい。
全5編。帯にもあってホットエントリーになった「虚無をゆく」が半分以上を占めますし、圧巻のひとことですし、ネットで読んだときより感動もましてましたが(読んだときの気分の問題が大きかったのかもしれない)、ほかの4編が素晴らしかった。「虚無をゆく」は1冊の短編集としてしんがりにひかえるすごいトリだってくらいに覚えておいて(そのほうがインパクト強いし)ほかの4編を軽く紹介します。
「竹屋敷姉妹、みやぶられる」が初っ端。これがもっともビビビときましたよ。作者の得意な方向のSF(サイエンス・フィクションも少し不思議も)がないってのがSF(少し不思議)に思えるくらい。でもいい。うわ、最高じゃん!と。
正直、帯に「新たなる金字塔 「虚無をゆく」収録」ってのをみて「うへえ」と思ったんだよな。こういうのばかりなのかしらん?って。それと真逆な感じで。26pのそれぞれの表情が絶品。
えーと、双子の姉妹がみやぶられる話。
正直なところ、これを読んだ瞬間、帯の裏にあった「二本松兄妹と木造峡谷の冒険」を注文したくらいで。
「まつりコネクション」。これはSFな感じで(あ、あと全部SFな感じ)。でも、マクロなSFだよな。小さいものが頭の上に住んでいる話。サングラスアフロ老人がいい味出してたな。
「今更ファンタジー」。これまた水上悟志節とでもいうようなやつ。3つの願いで中学の時に願ったファンタジーの主人公になる妻子持ちの話。妻子にもランプの精がみえて喋ってるのがなんか新鮮だった。「あなた以外には見えないのよ」が定番だったから。
「エニグマバイキング」。これまた水上悟志節。時代妖怪退治短編にグルメ要素アリ。問題などあるわけがないおもしろさ。
ということで途中でわかったのですが、非SFで非壮大なスケールの水上悟志作品である「竹屋敷姉妹、みやぶられる」を絶賛したかったんだねおれは。
でも、全作品通してもまた素晴らしい短編集よ。