「こうきたか」と冷静に思いつつもわなわなと震える3巻。
会社で周囲に気を使いすぎたあまりに倒れてしまったナギさんが、安アパートで断捨離スローライフをして自分を取り戻すってほのぼのストーリー。
だったのは2巻の途中までで、どんどんきな臭くなって、3巻ではついに「こう」きてしまったんですよ。
会社で知り合った前の彼氏を吹っ切った。そしてアパートの隣に住む男性に惹かれる。ところが惹かれすぎる。この男性の描き方がなんていうか「えげつない」。容赦ないえげつなさ。
くわしく書いてみようかな。
やさしい男なのよ。困ってるときに的確な言葉をかける。ただ向こうからの好意は100受け止める。それが「誰であっても」。目の前の人には100受け止めて100の愛を返す。だけど、それは誰であってもそうだから浮気とか本気とかそういう概念がない。つまり悪意なく浮気する。それはすなわち悪意なく傷つけるということになる。それでナギさんがボロボロになっていく3巻なんです。もうひとついうとエッチも超うまいと。
そしていわれるあだ名がメンヘラ製造機と。そりゃあつきあう女性はおかしくなるわな。
あんのー、マストドンなんかを眺めてると、聞いちゃいないのに今誰それとつきあっててどうこうってのをみんなつぶさに書いてる。「こういうの」にはまってる人がいるのよね。ああ、モテるんだなあと。
そして、こういうキャラをこういう風に描くってすげえよな。なんかワナワナしちゃった。あ、あれか、押見修造氏、よくまとめサイトで引用されてるヒスる女性みたいの。あれの男性版か。
前半部にナギさんの母親が登場する。母はその彼と真逆。くわしくは読んでのお楽しみですが、こっちもかなりえげつない。で、実は、彼女をおかしくするという点で同じ。ほのぼのスローライフだったモノのの地獄の釜がパカリと開いた3巻です。
そして1巻から登場していた不器用なストーカーに成り下がってる元彼氏がぐぐぐと役に立っていくって展開ではあるけど、元彼氏もたよりないからなあ。どうなるんやろ。
そう、このマンガ、基本的に登場人物全員のダメなところをピシッと描いている。だから、ナギさんを助けてくれる万能の存在がいない。というか、それがお隣の住人かと思ったらそれがラスボスだった感な。
母親との対決も控えてるし。3巻がもっとも鬱巻だといいなあ。正直これが次もつづくとしんどいぞ。
このマンガ、あの男をああいう風に描くことによって、じゃあ「幸せ」ってなに?ってことになるのよ。そりゃあ感覚としてはわかるよ。ただ、理屈で言うと、やさしくて愛してくれてセックスもうまい。でも、その男じゃ消耗する。じゃあ、誰ならナギさんは幸せになれるんだ?って。その答えは4巻以降にあるんだろうか。