2018年02月07日

ギガタウン 漫符図譜 こうの史代(朝日新聞出版)

ギガタウン 漫符図譜
Posted with Amakuri at 2018.2.3
こうの史代
朝日新聞出版

こうのさんは貧乏性なのかね。
本作、マンガ内の記号いろいろありますね。湯気があがってるモワモワしたところ、ぶつかったときの目から火花が出ているところ、頭を打たれたらたんこぶができているとか。それを4コママンガで実践。そしてキャラは世界最古だか日本最古だかいわれてる鳥獣戯画のキャラのカエルやウサギやサルたちの日常4コマで実践する。

ありとあらゆる要素がギュウギュウに詰められている。1ページの情報にめまいがするくらい濃密でいて、内容は、漫符図鑑であり、ほのぼの4コマであり、鳥獣戯画のパロディであり。つまりはそれがこうの史代のマンガでもあると。「ぼぉるぺん古事記」「日の鳥」「この世界の片隅に」などみんなこれではあるんだよな。異様な情報がつまっている。

糸井重里氏がコピーライター塾をやったとき「めぞん一刻」の任意のページを選び、このページを広告にするならどうする?なんてのをみんなで研究されたとき、マンガ1ページには原稿用紙にして30ページ分くらいの情報が平均でつまっているとか。だいぶ前のことであやふやではありますが。

こうのマンガには多分に平均的なマンガよりあらゆる点で濃い。それを逆に証明したのが劇場アニメの「この世界の片隅に」だったとは思うのよね。片渕須直監督は濃い原作を「濃くしやすい要素が多い」と看破されてさらに濃い要素を足したわけですよね。「濃いカルピス」みたいな感じ。(「逆に」でもなかったか)

伊集院光氏が話の流れをぶった切ってもそこに落ちていた「ギャグ」を拾ってオモシロをたさないと気が済まないって自虐的に「ギャグ貧乏性」としていたけど、こうの氏のサービス精神というワクにおさまらない情報やネタの詰め方にはどこかしら鬼気迫るものすら感じられるのよね。貧乏性って表現はあまり合ってないスけどね。

おもしろかったのは、4コママンガのメインを張る主役となるウサギのミミちゃんが、「タドン目」のわりとリアルなウサギの造形でさ、ほかのキャラであるサルは人間に似た顔だし、カエルはすこし戯画化カリカチュアされてるので、喜怒哀楽の感情が伝わりやすいんだけど、これがウサギだけ妙に無表情にみえるところがあったのよね。ところが、ミミちゃん、後半につれどんどんかわいくマンガとしていいキャラになって動いていく。これが不思議なんだよね。マンガとして合理的に整合化されているのかしらね。
ただ、当初のコンセプトとしては、鳥獣戯画のような昔の画法でも、無表情なウサギでも漫符を使うことにより、マンガでキャラが生き生きと喜怒哀楽を表現するってスタンスだったのかなーとか。
だから、マンガとしてよくなっていく過程においてミミちゃんが感情豊かなキャラになっていくのはマンガ家としてのサガとか業とかとか?

「ぼぉるぺん古事記」はコマの概念が薄い絵物語的だったし、「日の鳥」は絵日記形式だったので、4コマではあるけど久しぶりにこうの氏のマンガを読んだという気はする。おもしろかった。


posted by すけきょう at 12:08| Comment(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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