2018年03月13日

働かないふたり 13 吉田 覚(新潮社 BUNCH COMICS)


まさか1巻を読んでいるときにはこんな素敵なところに連れて行ってもらえるとは夢にも思わなかったよ。
かつて週刊少年サンデーで「ダメおやじ」というマンガがあった。「BARレモンハート」や「減点パパ」の古谷三敏氏のデビュー作で出世作。
ダメなおやじが家族や会社上司にいびられて半殺しになるギャグマンガ。それがあるとき大会社社長の娘だか社長だかを助けたことで人生が一変する。そしてほのぼのマンガにスイッチするんだよな。
つまりそういう感じ。最初からそういう要素はあったけど、近作はもう完全に「いい話」と「ギャグ」の割合が逆転している。

いちおうはニート兄妹のほがらかニートギャグマンガ。
ギャグがかなり奥に引っ込み、増え続ける各キャラで「いい話」がつづくんだよね。
母親の友達の母の息子をさそってインドへ旅行に行く兄のエピソード。あ、その前の秘密基地つくる話からしてそうだな。
新登場でいきなりいい話になってるユキちゃんの母エピソード。

そして戸川さんの一大決心が今回大きいね。
ニート家のお父さんの部下のOLさん。趣味で創作している。あるときニート兄がそこそこやるってきいたのでいっしょに同人を出さないかと持ちかける。兄は気軽に受けてマンガを提供する。それが珠玉すぎて自分の作品がまだまだという事実を突きつけられ落ち込む。それが前巻までで、今回、会社を辞めてその道を目指すことに決めるんですよ。その話がすばらしい。話もそうだけど、いつもクールで感情を殺して戸川さん、そのタガがはずれる瞬間。その表情がすばらしい。

表情でいうと、ニート兄妹のお隣さんでずっと観察していたけどつい知り合ってお友達になった倉木さん。彼女も本当に「いい顔」になった。そしてそういうことが見て取れるのは絵が素晴らしいからにほかならないわけでな。
夜に目が覚めてまだ午前3時。窓から様子を伺うと兄妹はいつものように遊んでいる。じゃあってんで、遊びにいったら、「お風呂入らない?」とゆず湯をオススメされる。そうその日は冬至だった。そしてすっかり落ち着いて兄妹の家でそのまま寝てしまうという話。なにげない2pのショートコミックだけどいいんだよな。奥底からジーンとする。

クリスマスイブの過ごし方もいいね。外で焼きおにぎりと豚汁を食べるクリスマスイブ。

それでいておまけ(ポスター)がついて500円という良心的にもほどがある価格。

最高なのでゆっくりでいいから揃えてくださいよ。ガッと買って一気に読むってもんじゃないです。


posted by すけきょう at 18:52| Comment(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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