2018年04月13日

ダンジョン飯 6巻 九井 諒子(KADOKAWA ハルタコミックス)



いやおもしろかった。感服したよ。上手い。とにかく上手い。

3つの変遷が上手い。

・キャラ変遷
・目的変遷
・本質変遷

ちょっと込み入ってなおかつネタバレ。別に行を開けたりめんどくさいのでそのままいきますので以降の文章はずっと読んでて6巻も読んだ人向けね。

キャラ変遷。6巻ではまた以前のパーティーが現れた。あー、やっぱちょっとあらすじいるかな。

RPGな世界ね。ダンジョンの下層で妹がドラゴンに食べられた。少数メンバーで助けに行くことにした。でも、パーティー全滅のバラバラでカネも人もないので道中の食事はモンスターを退治して食べることにしようという設定が本作ね。

4人パーティーが前のパーティーといっしょにいるというところから6巻ははじまる。前のキャラが登場する。前のキャラも新たにパーティーを率いて同じ目的だった。ところが、ってことでいろいろあるのが前半。そして、そのパーティーのひとりがあらたに新キャラとして加わる。
ここが上手い。それぞれのキャラは信条や目的によってそれぞれ考え行動している。それは同じ目的のようでもちょっとちがう。同じパーティー内でもちょっとちがう。そのために袂を分かつことになるのだが、ひとり残ったメンバーはまた別の目的のために彼らのパーティーに近づく。これらすべてに意味があるし、スジが通っているし、ストーリー展開において無駄がない。
まわりくどいようにみえて最短距離で新パーティーをきちんと誕生させている。またいいキャラだし。

で、それらの変遷に応じて目的も変わっている。最初の目的は妹を連れ帰ること。それは4巻で成功したかにみえた。でも、邪魔が入り、妹はラスボスに連れ去られてしまう。そして6巻ではそれを連れ帰ればOKじゃないことをかなり衝撃なカタチで知らされることになる。だから、目的を変える。はい、ラスボスを退治すると。
このギャグのような目的の変遷。というか実際作者もマンガ内でギャグにしている。でもそれは至極自然な流れになっている。

物語ということに関してここまでの急ハンドル急ブレーキそして次につながる本質変遷を上手くやっているのはちょっとないので「物語」を作っている人はすごくよく研究されるといいんじゃないかな。

そして本質も変わる。上記の設定のために否応なしにダンジョン内のモンスターをおっかなびっくり食べる「グルメマンガ」というテイだったのが根本から変わっている。
これは昨今のグルメマンガブームの衰退にすごく敏感に反応しているような気がする。もっとも極北であったグルメマンガだから逆に功を奏したのかわからないけど、その分野の戦いからすっと手をひいた感じが鮮やか。それでも食べたりはしてるけどな。
ユーモアを絶対に引かないってのもあるな。4巻以降はシリアスな展開が多いけど、随所にあるギャグは絶対に切らさない。これも本質ではあるね。6巻のすごくおぞましくも衝撃的な見開きのシーンが「すごくかっこいい……」ってのはなかなか書けんぞ。

という絶妙なさじ加減と舵のとり方で、うまい具合に「ダンジョン飯」は4巻以降の変化を見事に成功させたね。それが6巻で確定した。いやおもしろかった。


posted by すけきょう at 22:10| Comment(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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