2018年09月30日

映画大好きポンポさん2 杉谷 庄吾【人間プラモ】(KADOKAWA ジーンピクシブシリーズ)

映画大好きポンポさん2 (ジーンピクシブシリーズ)
Posted with Amakuri at 2018.9.29
杉谷 庄吾【人間プラモ】
KADOKAWA
「2」にはかなり意表をつかれたのです。

pixivにある日電撃的に掲載された「映画大好きポンポさん」。1

[「映画大好きポンポさん」/「人間プラモ」の漫画 [pixiv]]

今もって無料で読むことができる。後に書籍化までした作品は衝撃だった。「これはなんだ」と思いつつも完璧な136ページ。一気呵成に読み終えて、何度も何度も「これはなんだ」と読み返してた。

で、「2」か?と。
そして読み終え思うわけです。これは「2」だなと。

空前絶後の超絶怒涛の映画人。映画を愛し映画に愛されたサンシャイン池崎氏みたいな自己紹介ネタを持つ映画天才少女ポンポさんが映画バカのジーンくんに映画監督を任せて成功させるって1作。スカッとまとめて一気に見終える1。

そして超大作の続編の監督オファーがジーンくんにくるところからはじまる「2」です。
あらゆるところに「2」が仕込んであります。ネタバレに抵触するところがありますが「2」へのオマージュにあふれてます。2倍です。あれが2人だしあれが2倍の4人だしあれが2本だしあれは2回ですよ。
すべてスケールアップの「2」です。それはエイリアンでありターミネーターであり、そして、どうしようもなく「ポンポさん」の「2」になってます。1での様式美すら踏襲しまくっての「2」です。
すばらしいです。1における「新鮮フィー」を賄うにはボリュームという手段を取るのが絶対的なセオリー。あえてそれに抗わない。そこらも含めての「2」なのがまた憎たらしいし食えないのがまたポンポさんの「2」なのです。1であった映画の尺というテクニックの問題を今度は「脚本の書き方」というテクニックに照らし合わせながら最終的にそこに重ねるという。もうなにからなにまで「2」。
で、映画の「続編」愛に満ち満ちた「2」という。

1よりも覚悟と攻撃性が高い「2」だな。文句あるか!という。それこそ、2巻表紙のポンポさんの挑戦ともとれるその表情に伺えますね。

まあ、ここまでやったらそんじょそこらの「3」はできないだろうなあ。え?やるの?映画は続編で成功してるのまだ多いけど3で名作ってちょっとないからなあ。


あーやっぱネタバレ書きたい。書くから買って2回読んでから以降読んで。




本作のあらすじ、超大作の続編はジーンくんがおもしろくないんだよね。それなりにベストを尽くしたけどあまりやってる感じがなくておもしろみのない「2」を作りあげるわけです。で、ジーンくんは「おもしろくない2なんか作っても意味ないじゃないか」と。そして続編製作を降ります。そしておもしろい「2」を撮るというあらすじです。

最初のポイントは、1なんですよね。1、すなわち最初のポンポさんでは、ポンポさんほか、キャラは物語のためにあてはめて作り上げてきた側面が強いです。天才映画少女のポンポさんが才気あふれる監督を1人前に育て上げる物語。途中に出てくる他キャラは「そのために」用意されたものですよね。いわばアテブリのようなものです。
ところが「2」においてはそのキャラたちはもう存在します。だからキャラたちをうまく動かして物語を作り上げなければならないという難しさ。それは難しくもありカンタンでもありますよね。キャラを作り上げるのが物語において最重要事項ではありますが、それらを再び同じ舞台で別の話としてうまく動かすのはなかなかの難しさが出てきます。

超大作の「2」を降りて、監督として実質的な2作目になるのを、1でも活躍したベテラン女優と新人のふたりを主演にするという。しかも監督は2回クビになっ出ていって2回出戻ってくるという。そして新キャラ2人が登場してポンポさんがもう1本の映画を撮る。2作の映画が存在するわけです。しかも、ジーンくんは降りた大作と次の作品で2作、ポンポさんも劇中で2本映画を撮っている。なにからなにまで「2」を意識して作られている。
(書き出すとキリがないけど、1では雨に打たれてた芽の出ないどん底のナタリー(警備員のバイトしてた)が、「2」では超大作をしくじったジーンくんがそれになってたとか)

くわえて1よりもさらなるジーンくんの成長物語となっている。1で撮った映画はポンポさんが脚本を書いたものであるが、2では脚本からジーンくんが手がける。その結果、ベテラン女優が敬語でお願いするほどの脚本を書き上げるわけですよ。勉強熱心だねって褒められてた映画青年は、立派な監督して主演させてくださいとお願いされる立場に成長するわけです。
資金難になったときもポンポさんが資金援助をする状態に。なおかつポンポさんが「腹が立つ」という理由で勝負するために映画を撮るという。

そして最大の成長とはなにか。

ジーンくんはポンポさんから脚本の書き方をレクチャーされる。「舞台」と「感情」を決めてスタートとゴールを決めて撮るのがコツと。そしてジーンくんは作り上げるわけです。監督作品である「舞台」と「感情」とスタートとゴールとなる映画を。それは同時に本編にもつながると。


それは物心ついたときから映画のイロハを叩き込まれて映画製作者としての目線でしかみることのできなかったポンポさんがココロの底から映画を楽しめて好きになる1本を作り上げたということ。

「これが君の見た光か!!」

1番いいシーンです。脚本講座のときもいみじくもおっしゃってましたね。スタートとゴールの話。ゴールとは到達する先に見える光です。
そして光とは「映画」そのものです。映画は暗闇に映し出される光です。

舞台は「映画」、感情は「大好き」。そう!「映画大好きポンポさん」になるんです。ここにきてタイトルに帰結するという憎たらしい憎たらしい完璧な続編として完結する。その素晴らしい映画を自分で作り上げたというジーンくんの成長な。

そりゃあすべてに増量といわざるをえないだろ。文句のない「2」だろ。正解の「2」だろ。こう謎の悔しさみたいな感情が生まれることも含めての「2」。
だってさ!みんなそう思うよ。あとがきにもあったように1できれいにはじまって終わっているのに「2」なんて蛇足でしかないだろ? どらお手並み拝見って色眼鏡で読みはじめるのは仕方がないじゃないか。

ああそれなのにそれなのに。と、さっきから同じようなことばかり書いてるのでもうやめます。



posted by すけきょう at 23:26| Comment(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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