2009年より「旅の手帖」に連載され(いまも連載中)ている1pかときおり4pのオールカラーマンガです。
かけ湯くんって猫が全国各地の温泉にいってくるルポマンガね。もちろんかけ湯くんは松本氏ではあるね。
オールカラーで美麗なのはもちろん、相変わらずの空気を描こうとする手法、細部に神が宿り感謝し慈しみ味わい尽くすスタイルで読み応えがすごい。
1ページごとに余韻がすごくて、ちょこっと読んでは本を閉じ、また読んでってのを繰り返し、全部読み終えるのに4日ほどかかった。だからコスパは抜群です。
内容も上記のようなパターンに比べて、かけ湯くんの失敗話、困ったお客さん、困った旅館、不思議な出来事などバラエティに富んでいて読んでいて飽きない。
美味しい描写などの、実際にタメになる情報も多い。ということで実に松本英子作品のベスト・オブであるんじゃないか?と。
濃いかったり深かったりよりはもっとベタに温泉に行って風呂や美味しい料理みたいなところではあるんだけど、たとえば、温泉宿から帰るときに、「次」があるかって考えるってのは深いよね。同じ温泉地にいったとしても同じ宿にまた泊まるかというとね。そういう一期一会。
2泊したりすると温泉に入るたびに「いつもの」場所が決まってそこにいるって感じとか。
宮城県・作並温泉の「体が大喜びする湯」って表現もいいですよね。
また松本氏、あ、ちがった。かけ湯くん、歴史に関しては興味がないってスタンスがおもしろくてね。年月を建物や温泉を作り上げてきた文化などに思いを馳せるという意味での「「歴史」はすごく感じ入るものがあるけど、史実の有名人がどうしたこうしたにはあまり興味がない感じな。
温泉を愛するひとが長い年月を受け継いで「今」があるという年輪にありがたみを感じる。松本全作品に通底する姿勢ですよね。大好きだなこれ。
でもって案外と全国にいっておられるけど北陸には縁がないようだし、富山にもいらしてないので、2巻ではよろしくです。
あ、あとかけ湯くん表紙はヌードだね。後半、かけ湯くん、風呂以外は服を着るようになったしな。